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第二章:新たなる力、メガネ付き
第32話:神原岳人 8
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すると、ガゼルの肉体から美しい金色の光が溢れ出し、薄暗いマゼリアの森の中にあって不思議と安堵できる空間が出来上がる。
突如として現れた光にイーライたちが何事だと視線を向けたのだが、それは岳人も同じだった。
特に岳人は金色の光に対して抗えない嫌悪感を抱いており、何を差し置いてでも光の元を絶たなければならないと感じていた。
『なんだ……なんだ、これはああああぁぁっ!』
「……はは、マジかよ。こいつは――力が漲ってきやがる!」
聖女の祝福は成功していた。
ガゼルの肉体が活性化を始め、ステータスにも大きな変化をもたらしている。
それだけではなく、体についていた大小様々な傷が徐々に癒え始めており、ガゼルは慣れない直剣ながらどれだけ戦えるようになったのかを試すのが楽しみで仕方なかった。
「俺が足止めをする! ナツキのお嬢さんはイーライたちに魔法を頼むぜ!」
「は、はい!」
夏希を殺そうと突っ込んできた岳人に対して、再びガゼルが相対する。
しかし、今までと同じようにガゼルが押されるということはなく、むしろ慣れない直剣を手にした彼が岳人を押し込むという光景が目の前に現れていた。
「アスカ! いったい何が起きたんだ!」
そこへ駆けつけたイーライが驚いた様子で声を掛けてきた。
「夏希ちゃんの新しい魔法よ。基本ステータスを大きく底上げできる……えっと、バフ魔法だってガゼルさんは言っていたわ」
「バフ魔法? だが、あれは一つのステータスを上げるくらいのものじゃないのか? 複数のバフを掛けているのか?」
「ち、違います。聖女の祝福は、全てのステータスを底上げする魔法なんです」
イーライの疑問に夏希が恐る恐る答えた。
夏希も一度聖女の祝福を発動したからか、最初こそどういう魔法なのかわからなかったが、今では自然とどういうものなのかというのを頭の中で理解できていた。
「それはすごい魔法だな」
「そうですな。それをガゼル殿が証明してくれている」
「ナツキ様。その魔法は私たちにも掛けることは可能なのですか?」
「ちょっと待ってください、バーグマン様!」
アルとダルトが驚きの声をあげる中で、リヒトが夏希に問い掛ける。
すると、夏希は鞄い入れていたマジックポーションを一気に飲み干すと、自分の魔力量と相談しながらゆっくりと口を開いた。
「……はい、大丈夫です!」
力強く答えた夏希が魔法に意識を集中させると、大きく息を吸い込んでから一度呼吸を止め、聖女の祝福を発動させた。
「聖女の祝福!」
ガゼルからも溢れ出した金色の光が、イーライ、アル、ダルト、リヒトの体からも溢れ出す。
それは恐ろしい魔獣に身を落とした岳人を前にして、とても神秘的なものに明日香は感じていた。
「……すごい!」
「……これならばいけますぞ、殿下!」
「……えぇ。我々もガゼル様に加勢いたしましょう!」
飛び出していくアルとダルト。そしてリヒトもマジックポーションを一気に飲み干して多くの魔法を展開させていく。
その中でイーライは何度も右手を握って開いてを繰り返したあと、視線を明日香へ向けた。
「……ガクトを倒す。それでいいな?」
「……うん。私にとっては、イーライたちの方が大事だもの」
「わかった。……ナツキもいいんだな?」
「……はい!」
「……お前たちは絶対に、俺たちが守る。だから安心して見ていてくれ!」
決意の言葉を残したイーライも二人の下を飛び出していき、岳人へ剣を振るっていく。
『くっ! こいつら、何をしやがった! 夏希いいいいぃぃいいぃぃっ!!』
イーライたちの動きが明らかに良くなり、力押しが通じなくなった岳人は怒声を響かせる。
昔の夏希であればビクッと体を震わせて、冷静に思考することはできなかっただろう。
しかし、今の夏希の周りには多くの信頼できる仲間がいる。
明日香がいて、イーライがいて、アルやリヒトやダルトがいる。
そして、片思いの相手であるガゼルがいてくれる。
夏希は恐怖に打ち勝ち、真正面から睨みを利かせる岳人を睨み返した。
「……わ、私はもう、あなたに負けない!」
『な、なんだとぅ? てめぇ、ふざけやがってええええぇぇっ!』
「ふざけてなんていません! 私はもう、あなたに負けない。私には、信頼できる仲間がいるから!」
『ぐうっ! ……ちくしょうが、面倒くせぇ! こうなったらこの辺一帯を、焼け野原にしてやるぜええええぇぇええぇぇっ!!』
そう口にした岳人の体内に膨大な魔力が凝縮されていく。
そのせいもあってか動きが鈍くなり、イーライたちの剣が岳人の体を何度も捉える。
傷を負い、血が噴き出したとしても、岳人は行動を変えることをしない。
【注意! 岳人:魔力暴走】
戦いの行方を見守っていた明日香の視界に、突如として注意を促す岳人の行動が表示された。
突如として現れた光にイーライたちが何事だと視線を向けたのだが、それは岳人も同じだった。
特に岳人は金色の光に対して抗えない嫌悪感を抱いており、何を差し置いてでも光の元を絶たなければならないと感じていた。
『なんだ……なんだ、これはああああぁぁっ!』
「……はは、マジかよ。こいつは――力が漲ってきやがる!」
聖女の祝福は成功していた。
ガゼルの肉体が活性化を始め、ステータスにも大きな変化をもたらしている。
それだけではなく、体についていた大小様々な傷が徐々に癒え始めており、ガゼルは慣れない直剣ながらどれだけ戦えるようになったのかを試すのが楽しみで仕方なかった。
「俺が足止めをする! ナツキのお嬢さんはイーライたちに魔法を頼むぜ!」
「は、はい!」
夏希を殺そうと突っ込んできた岳人に対して、再びガゼルが相対する。
しかし、今までと同じようにガゼルが押されるということはなく、むしろ慣れない直剣を手にした彼が岳人を押し込むという光景が目の前に現れていた。
「アスカ! いったい何が起きたんだ!」
そこへ駆けつけたイーライが驚いた様子で声を掛けてきた。
「夏希ちゃんの新しい魔法よ。基本ステータスを大きく底上げできる……えっと、バフ魔法だってガゼルさんは言っていたわ」
「バフ魔法? だが、あれは一つのステータスを上げるくらいのものじゃないのか? 複数のバフを掛けているのか?」
「ち、違います。聖女の祝福は、全てのステータスを底上げする魔法なんです」
イーライの疑問に夏希が恐る恐る答えた。
夏希も一度聖女の祝福を発動したからか、最初こそどういう魔法なのかわからなかったが、今では自然とどういうものなのかというのを頭の中で理解できていた。
「それはすごい魔法だな」
「そうですな。それをガゼル殿が証明してくれている」
「ナツキ様。その魔法は私たちにも掛けることは可能なのですか?」
「ちょっと待ってください、バーグマン様!」
アルとダルトが驚きの声をあげる中で、リヒトが夏希に問い掛ける。
すると、夏希は鞄い入れていたマジックポーションを一気に飲み干すと、自分の魔力量と相談しながらゆっくりと口を開いた。
「……はい、大丈夫です!」
力強く答えた夏希が魔法に意識を集中させると、大きく息を吸い込んでから一度呼吸を止め、聖女の祝福を発動させた。
「聖女の祝福!」
ガゼルからも溢れ出した金色の光が、イーライ、アル、ダルト、リヒトの体からも溢れ出す。
それは恐ろしい魔獣に身を落とした岳人を前にして、とても神秘的なものに明日香は感じていた。
「……すごい!」
「……これならばいけますぞ、殿下!」
「……えぇ。我々もガゼル様に加勢いたしましょう!」
飛び出していくアルとダルト。そしてリヒトもマジックポーションを一気に飲み干して多くの魔法を展開させていく。
その中でイーライは何度も右手を握って開いてを繰り返したあと、視線を明日香へ向けた。
「……ガクトを倒す。それでいいな?」
「……うん。私にとっては、イーライたちの方が大事だもの」
「わかった。……ナツキもいいんだな?」
「……はい!」
「……お前たちは絶対に、俺たちが守る。だから安心して見ていてくれ!」
決意の言葉を残したイーライも二人の下を飛び出していき、岳人へ剣を振るっていく。
『くっ! こいつら、何をしやがった! 夏希いいいいぃぃいいぃぃっ!!』
イーライたちの動きが明らかに良くなり、力押しが通じなくなった岳人は怒声を響かせる。
昔の夏希であればビクッと体を震わせて、冷静に思考することはできなかっただろう。
しかし、今の夏希の周りには多くの信頼できる仲間がいる。
明日香がいて、イーライがいて、アルやリヒトやダルトがいる。
そして、片思いの相手であるガゼルがいてくれる。
夏希は恐怖に打ち勝ち、真正面から睨みを利かせる岳人を睨み返した。
「……わ、私はもう、あなたに負けない!」
『な、なんだとぅ? てめぇ、ふざけやがってええええぇぇっ!』
「ふざけてなんていません! 私はもう、あなたに負けない。私には、信頼できる仲間がいるから!」
『ぐうっ! ……ちくしょうが、面倒くせぇ! こうなったらこの辺一帯を、焼け野原にしてやるぜええええぇぇええぇぇっ!!』
そう口にした岳人の体内に膨大な魔力が凝縮されていく。
そのせいもあってか動きが鈍くなり、イーライたちの剣が岳人の体を何度も捉える。
傷を負い、血が噴き出したとしても、岳人は行動を変えることをしない。
【注意! 岳人:魔力暴走】
戦いの行方を見守っていた明日香の視界に、突如として注意を促す岳人の行動が表示された。
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