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第二章:新たなる力、メガネ付き
第27話:神原岳人 3
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『ダアアアアルウウウウトオオオオオオオオォォオオォォォォッ!!』
「そうだ、私と勝負しろ! 今度こそ、叩き直してくれるわ!」
『ゴロジデヤルゾオオオオォォッ!!』
それを見上げて放たれた怨嗟の咆哮がラクシアの森に広がっていく。
周囲の木々が震える空気に触れて葉を散らしてしまう。
「残念ながら、一対一じゃねぇんだよ!」
咆哮をあげる岳人目掛けて放たれたのは、気配を消して背後に回り込んでいたガゼル渾身の横薙ぎ。
空気を巻き込み、剣身が通り過ぎたあとには空気の渦が出来上がる。
ゴウッ! という音を置き去りにした大剣は、岳人の首を間違いなく捉えた。
『――ゲヒャ!』
「ちいっ! これも通らないのかよ!」
鈍い感触がガゼルの両腕に響いた。
直後には大きく飛び退き舌打ちをする。
すると岳人の背後、先ほどまでガゼルが立っていた地面が吹き飛び小さなクレーターを作ってしまう。
振り下ろされた尻尾による一撃が、必殺の威力を持っていたのだ。
「こんな化け物、どうやって元に戻すってんだよ!」
「元に戻すだと? どういうことだ!」
「なんだ、あんたは知らないのか? あっちの二人も、魔獣化してたんだぜ?」
警戒を解くことはせず、ダルトは横目で冬華と凜音に視線を向ける。
いまだ目を覚まさず、明日香と夏希に守られている二人。
「……彼女らも、カミハラ殿と同じだったと?」
「あぁ。それをアスカのお嬢さんの指示で助けたんだよ」
「……なんと、それは誠か?」
「俺も信じられない話だと思うが、これがマジなんだよなぁ」
「――アースドーム!」
二人がやり取りをしている間、イーライは土魔法のアースドームを発動させて岳人を槌の檻に閉じ込めた。
「ですが、二人はガクトほどの実力は持っていませんでした! 奴の強さは、異常です!」
木の上から飛び降りてきたイーライがそう口にすると、先ほど作ったばかりの土の檻が一撃で粉砕されてしまう。
『……ナンダァ、テメェハアアアアァァッ! ジャマヲ、スルナアアアアァァッ!!』
「地面が爆発します! 避けてください!」
「「「――!!」」」
土の檻から出てきた岳人の怒声とほぼ同時に響き渡った明日香の声。
三人はほとんど同時に飛び退くと、先ほどと同じように地面が地面が吹き飛んだ。
しかし、今回は尻尾による一撃ではない。岳人の魔法が地面を爆ぜさせた。
「ま、魔法か!」
「おいおい、魔法も使えるのかよ!」
「カミハラ殿が魔法だと!?」
「ダルト騎士団長! 狙われています!」
三方向に飛び退いた三人のうち、岳人が狙ったのはダルトの方だった。
四肢で地面を踏みしめると、力の限り踏みしめて前に出る。
突風を巻き起こし一足飛びでダルトを自らの間合いに捉えた。
『ゲヒャヒャ! シネ、ザコガ』
「アースアーマー!」
鋭利に伸びた剛爪が鋭く突き出される。
必中のタイミングで放たれた必殺の一撃。
回避不可能と判断したダルトは、必中必殺の一撃を耐え抜くという選択肢を選んだ。
「ぬおおおおおおおおぉぉおおぉぉっ!」
『ゲゲ、ダアアアアルウウウウトオオオオォォッ!!』
必殺の一撃は命中している。しかし、その全てが土の鎧によって受け止められ、砕かれると同時に新しい鎧が形成されていく。
最強の矛と最硬の盾がぶつかり合い、削り取っていく。
「イーライ!」
「わかっている!」
ダルトを助けるため、イーライはすでに駆け出していた。
アースドラゴンの攻撃を弾き返した時と同様に、剣に魔力を纏わせていく。
岳人の視線がダルトに注がれている隙を突き、渾身の袈裟斬りが彼の背中を捉えた。
『グルゲゲガアアアアァァアアァァッ!?』
深く切り裂かれた背中の傷からは、真っ赤な血しぶきが噴き出した。
ぐらりと体が揺らいだのと同時に攻撃が止まり、ダルトは即座に距離を取る。
「これで決めてやる!」
「ダメ! イーライ!」
「――!?」
追撃を狙おうとしたイーライだったが、明日香の声と同時に突如として背筋に寒気が走ると、体が自然と反応して大きく飛び退いた。
――ドドンッ!
直後、地響きを起こすほどの連撃が、先ほどまでイーライが立っていた場所に降り注いだ。
大量の砂煙が巻き上がり、衝撃によって周囲の大木が根こそぎ倒れてしまっている。
「……危なかった」
「イーライ! まだだよ!」
「んなっ!?」
『ゴオオロオオオオオオオオォォスッ!!』
傷をつけたイーライを殺すため、岳人が砂煙の中から飛び出してきた。
「そうだ、私と勝負しろ! 今度こそ、叩き直してくれるわ!」
『ゴロジデヤルゾオオオオォォッ!!』
それを見上げて放たれた怨嗟の咆哮がラクシアの森に広がっていく。
周囲の木々が震える空気に触れて葉を散らしてしまう。
「残念ながら、一対一じゃねぇんだよ!」
咆哮をあげる岳人目掛けて放たれたのは、気配を消して背後に回り込んでいたガゼル渾身の横薙ぎ。
空気を巻き込み、剣身が通り過ぎたあとには空気の渦が出来上がる。
ゴウッ! という音を置き去りにした大剣は、岳人の首を間違いなく捉えた。
『――ゲヒャ!』
「ちいっ! これも通らないのかよ!」
鈍い感触がガゼルの両腕に響いた。
直後には大きく飛び退き舌打ちをする。
すると岳人の背後、先ほどまでガゼルが立っていた地面が吹き飛び小さなクレーターを作ってしまう。
振り下ろされた尻尾による一撃が、必殺の威力を持っていたのだ。
「こんな化け物、どうやって元に戻すってんだよ!」
「元に戻すだと? どういうことだ!」
「なんだ、あんたは知らないのか? あっちの二人も、魔獣化してたんだぜ?」
警戒を解くことはせず、ダルトは横目で冬華と凜音に視線を向ける。
いまだ目を覚まさず、明日香と夏希に守られている二人。
「……彼女らも、カミハラ殿と同じだったと?」
「あぁ。それをアスカのお嬢さんの指示で助けたんだよ」
「……なんと、それは誠か?」
「俺も信じられない話だと思うが、これがマジなんだよなぁ」
「――アースドーム!」
二人がやり取りをしている間、イーライは土魔法のアースドームを発動させて岳人を槌の檻に閉じ込めた。
「ですが、二人はガクトほどの実力は持っていませんでした! 奴の強さは、異常です!」
木の上から飛び降りてきたイーライがそう口にすると、先ほど作ったばかりの土の檻が一撃で粉砕されてしまう。
『……ナンダァ、テメェハアアアアァァッ! ジャマヲ、スルナアアアアァァッ!!』
「地面が爆発します! 避けてください!」
「「「――!!」」」
土の檻から出てきた岳人の怒声とほぼ同時に響き渡った明日香の声。
三人はほとんど同時に飛び退くと、先ほどと同じように地面が地面が吹き飛んだ。
しかし、今回は尻尾による一撃ではない。岳人の魔法が地面を爆ぜさせた。
「ま、魔法か!」
「おいおい、魔法も使えるのかよ!」
「カミハラ殿が魔法だと!?」
「ダルト騎士団長! 狙われています!」
三方向に飛び退いた三人のうち、岳人が狙ったのはダルトの方だった。
四肢で地面を踏みしめると、力の限り踏みしめて前に出る。
突風を巻き起こし一足飛びでダルトを自らの間合いに捉えた。
『ゲヒャヒャ! シネ、ザコガ』
「アースアーマー!」
鋭利に伸びた剛爪が鋭く突き出される。
必中のタイミングで放たれた必殺の一撃。
回避不可能と判断したダルトは、必中必殺の一撃を耐え抜くという選択肢を選んだ。
「ぬおおおおおおおおぉぉおおぉぉっ!」
『ゲゲ、ダアアアアルウウウウトオオオオォォッ!!』
必殺の一撃は命中している。しかし、その全てが土の鎧によって受け止められ、砕かれると同時に新しい鎧が形成されていく。
最強の矛と最硬の盾がぶつかり合い、削り取っていく。
「イーライ!」
「わかっている!」
ダルトを助けるため、イーライはすでに駆け出していた。
アースドラゴンの攻撃を弾き返した時と同様に、剣に魔力を纏わせていく。
岳人の視線がダルトに注がれている隙を突き、渾身の袈裟斬りが彼の背中を捉えた。
『グルゲゲガアアアアァァアアァァッ!?』
深く切り裂かれた背中の傷からは、真っ赤な血しぶきが噴き出した。
ぐらりと体が揺らいだのと同時に攻撃が止まり、ダルトは即座に距離を取る。
「これで決めてやる!」
「ダメ! イーライ!」
「――!?」
追撃を狙おうとしたイーライだったが、明日香の声と同時に突如として背筋に寒気が走ると、体が自然と反応して大きく飛び退いた。
――ドドンッ!
直後、地響きを起こすほどの連撃が、先ほどまでイーライが立っていた場所に降り注いだ。
大量の砂煙が巻き上がり、衝撃によって周囲の大木が根こそぎ倒れてしまっている。
「……危なかった」
「イーライ! まだだよ!」
「んなっ!?」
『ゴオオロオオオオオオオオォォスッ!!』
傷をつけたイーライを殺すため、岳人が砂煙の中から飛び出してきた。
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