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第二章:新たなる力、メガネ付き
第25話:神原岳人 1
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激しい戦闘の末、明日香たちは冬華と凜音を元の姿に戻すことができた。
そして、戦闘音を聞いた冒険者たちだけではなく、カフカの森から引き返してきた騎士たちと合流することができた。
「ヤマト殿!」
「あっ! 団長さん!」
騎士団を率いていたのは騎士団長のダルト・ホークだった。
騎士だけでも二〇名の数がおり、冒険者と合わせると総勢五〇名もの戦力がラクシアの森に集結した。
「カフカの森はどうでしたか?」
「魔獣の活性化は確認できたが、特別な個体は発見できなかった。だが……がはははは! またしても我らはヤマト殿に助けられたようですな!」
明日香たちの足元で今もなお気を失っている二人を見て、ダルトは大きな声で笑った。
「私だけじゃ無理でした。イーライにガゼルさん、それに夏希ちゃんがいてくれたからです」
「ふむ、そうか。カミヤ殿は城を出て正解だったかもしれんなぁ、がはははは!」
「も、申し訳ありません」
申し訳なさそうにそう口にした夏希だったが、ダルトは意地悪を言ったわけではない。本気でそう思っていたからこそ口にしたのだ。
「何を謝ることがありますか! 人にはそれぞれ、合う場所というものがございます。カミヤ殿の場合は、城ではなくヤマト殿の側だったというだけの話だ」
「……はい、そうですね」
表情を和らげた夏希は、明日香に視線を向けると自然な笑みを浮かべる。
その表情に明日香も嬉しくなり、ニコリと笑いながら軽く抱きしめた。
「それで……もう一人、カミハラ殿はどうしたのですかな?」
二人と行動を共にしているだろう岳人だけが見当たらなかったことでダルトが確認を求めると、そちらにはイーライが答えた。
「ガクトだけはいまだ発見できておりません。私たちもこれから捜索に移るところでした」
「そうか。だが、ヤマト殿とカミヤ殿が危険ではないか? ポーションは傷を癒せても体力を回復させるものではない。それに、精神面の疲労は休む以外では癒せないだろう」
ダルトの言葉は夏希に向けて放たれたものだった。
彼女はこの中で岳人たちと行動を共にしており、冬華と凜音が魔獣化したという現実を受け止め切れているのか、という心配を抱いていたのだ。
しかし、夏希はダルトの意図を理解しており、それでなおこの場に残りたいと口にした。
「私にも不安はあります。でも、三人に何があったのか、何が起きたのかを知りたいという気持ちの方が強いんです」
「……命を落とす可能性もあるのだぞ?」
「おいおい。俺様がついているんだ、絶対に死なせねぇよ」
二人の会話に割って入ったのは、ガゼルだった。
「そなたは……そうか、Sランク冒険者のガゼル殿だな」
「おっ! 俺のことを知っているのか?」
「強者については誰であれ知っておるよ。だが、そなたほどの人物が護衛をしてくれているなら問題はないだろう。ヤマト殿にはイーライがついておるしな」
年の割に似合っている快活な笑みを浮かべ、明日香と夏希の同行が決まった。
「それで、イーライよ。どのようにしてカミハラ殿を見つける予定なのだ? 人海戦術で探すくらいしか思いつかないのだが?」
ダルトは明日香のメガネが魔導具だということは知っているが、何ができるのかは詳しく知らされていない。
そこでイーライが明日香のメガネを頼りに二人を見つけたこと、それと同じことを岳人捜索でも行おうとしていることを伝えた。
「なんと、そんなものがあるのだな! それであれば、我らはヤマト殿の視界の外側を調べるという形を取れば、意外と早く見つけられる――」
『――イイイイイイイイアアアアァァアアァァッ!!』
ダルトが安堵の息を吐こうとした時、恐怖を煽られる謎の咆哮がラクシアの森を包み込んだ。
「何事だ!」
「わ、わかりません!」
「な、なんだ? 体が、勝手に、震えて!」
この場に集まっている者の大半が実力者である。
しかし、そんな彼らをもってしても咆哮にやられて体が自然と震え出していた。
「強敵が潜んでいるぞ! 恐怖を覚えた者は引け! 実力が足りないと思った者もだ!」
ダルトは緊迫した声で指示を出したが、騎士たちの動きは鈍く、冒険者たちも同じだった。
それを見て大半の戦力が引くことになるだろうと歯噛みする。
だが、状況は彼らを簡単に引かせることはなかった。
――ドンッ!
騎士や冒険者が固まっていた場所の中央、そこへ上空からものすごい質量の何かが落下して巨大な砂煙を巻き上げた。
そして、戦闘音を聞いた冒険者たちだけではなく、カフカの森から引き返してきた騎士たちと合流することができた。
「ヤマト殿!」
「あっ! 団長さん!」
騎士団を率いていたのは騎士団長のダルト・ホークだった。
騎士だけでも二〇名の数がおり、冒険者と合わせると総勢五〇名もの戦力がラクシアの森に集結した。
「カフカの森はどうでしたか?」
「魔獣の活性化は確認できたが、特別な個体は発見できなかった。だが……がはははは! またしても我らはヤマト殿に助けられたようですな!」
明日香たちの足元で今もなお気を失っている二人を見て、ダルトは大きな声で笑った。
「私だけじゃ無理でした。イーライにガゼルさん、それに夏希ちゃんがいてくれたからです」
「ふむ、そうか。カミヤ殿は城を出て正解だったかもしれんなぁ、がはははは!」
「も、申し訳ありません」
申し訳なさそうにそう口にした夏希だったが、ダルトは意地悪を言ったわけではない。本気でそう思っていたからこそ口にしたのだ。
「何を謝ることがありますか! 人にはそれぞれ、合う場所というものがございます。カミヤ殿の場合は、城ではなくヤマト殿の側だったというだけの話だ」
「……はい、そうですね」
表情を和らげた夏希は、明日香に視線を向けると自然な笑みを浮かべる。
その表情に明日香も嬉しくなり、ニコリと笑いながら軽く抱きしめた。
「それで……もう一人、カミハラ殿はどうしたのですかな?」
二人と行動を共にしているだろう岳人だけが見当たらなかったことでダルトが確認を求めると、そちらにはイーライが答えた。
「ガクトだけはいまだ発見できておりません。私たちもこれから捜索に移るところでした」
「そうか。だが、ヤマト殿とカミヤ殿が危険ではないか? ポーションは傷を癒せても体力を回復させるものではない。それに、精神面の疲労は休む以外では癒せないだろう」
ダルトの言葉は夏希に向けて放たれたものだった。
彼女はこの中で岳人たちと行動を共にしており、冬華と凜音が魔獣化したという現実を受け止め切れているのか、という心配を抱いていたのだ。
しかし、夏希はダルトの意図を理解しており、それでなおこの場に残りたいと口にした。
「私にも不安はあります。でも、三人に何があったのか、何が起きたのかを知りたいという気持ちの方が強いんです」
「……命を落とす可能性もあるのだぞ?」
「おいおい。俺様がついているんだ、絶対に死なせねぇよ」
二人の会話に割って入ったのは、ガゼルだった。
「そなたは……そうか、Sランク冒険者のガゼル殿だな」
「おっ! 俺のことを知っているのか?」
「強者については誰であれ知っておるよ。だが、そなたほどの人物が護衛をしてくれているなら問題はないだろう。ヤマト殿にはイーライがついておるしな」
年の割に似合っている快活な笑みを浮かべ、明日香と夏希の同行が決まった。
「それで、イーライよ。どのようにしてカミハラ殿を見つける予定なのだ? 人海戦術で探すくらいしか思いつかないのだが?」
ダルトは明日香のメガネが魔導具だということは知っているが、何ができるのかは詳しく知らされていない。
そこでイーライが明日香のメガネを頼りに二人を見つけたこと、それと同じことを岳人捜索でも行おうとしていることを伝えた。
「なんと、そんなものがあるのだな! それであれば、我らはヤマト殿の視界の外側を調べるという形を取れば、意外と早く見つけられる――」
『――イイイイイイイイアアアアァァアアァァッ!!』
ダルトが安堵の息を吐こうとした時、恐怖を煽られる謎の咆哮がラクシアの森を包み込んだ。
「何事だ!」
「わ、わかりません!」
「な、なんだ? 体が、勝手に、震えて!」
この場に集まっている者の大半が実力者である。
しかし、そんな彼らをもってしても咆哮にやられて体が自然と震え出していた。
「強敵が潜んでいるぞ! 恐怖を覚えた者は引け! 実力が足りないと思った者もだ!」
ダルトは緊迫した声で指示を出したが、騎士たちの動きは鈍く、冒険者たちも同じだった。
それを見て大半の戦力が引くことになるだろうと歯噛みする。
だが、状況は彼らを簡単に引かせることはなかった。
――ドンッ!
騎士や冒険者が固まっていた場所の中央、そこへ上空からものすごい質量の何かが落下して巨大な砂煙を巻き上げた。
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