78 / 105
第二章:新たなる力、メガネ付き
第20話:ラクシアの森 2
しおりを挟む
南門を抜けるとすでに多くの冒険者がラクシアの森へ向かっていた。
しかし、その中にランクの高い冒険者は少ない。ほとんどがカフカの森の調査へ向かっているからだ。
そして、数少ない高ランク冒険者も街道にまで溢れ出している魔獣に手を取られてラクシアの森まで到達できずにいた。
「くそっ! 邪魔だ!」
「イーライ、まだまだ来るよ!」
「早くラクシアの森に入らないといけないのに!」
急ぎたい気持ちと、そうさせてくれない魔獣の数が、イーライの苛立ちを駆り立てる。
『ゲギャギャ!』
「危ない、イーライ!」
転がる魔獣の死体の下から、息を潜めていた別の魔獣が飛び出してくる。
「しま――」
――ひゅっ!
『ギャビャッ!?』
魔獣の爪がレイを捉えようとした刹那、鋭く飛来した一本の矢が魔獣の眉間を打ち抜いた。
何が起きたのか理解できず、矢が飛んできた方向へ視線を向ける。
「何をやっているのかな、イーライ君!」
「やっほー! 朝ぶりだねー!」
「こっちは任せてさっさと行きなさい!」
男性一人と女性二人の冒険者がイーライの名前を呼びながら声を掛けてきた。
「……イーライ、あの人たちは?」
「冒険者の先輩だ。昨日の夜、俺と同じ班で行動していたんだが……」
「あぁーっ! イーライ君、女の子と二人乗りとは、怪しからんぞ!」
「本当だー! ひゅーひゅー!」
「あんたたち、うるさいわよ! イーライ、ちゃんと守りなさいよ! 男ならね!」
そう言いながら明日香たちを追い越していくと、前に固まっていた多くの魔獣を薙ぎ払っていく。
「……つ、強いね」
「……あぁ。あの三人もジャズズと同じでAランク冒険者なんだ」
「エ、Aランク!? でも、みんなカフカの森に行ったって……あっ、そっか。イーライが戻ってきているんだから、一緒に班を組んでいた人も戻ってきているんだよね」
「休まずに駆けつけてくれるんだから、やっぱり冒険者ってすごいな」
そう口にしながら、イーライの手綱を握る手に力が込められた。
「……行くぞ、アスカ!」
「うん! 三人の助けを無駄にしちゃダメだよ!」
そして、三人の活躍によって開かれた道を駆け抜けていくと、二人はようやくラクシアの森の入り口まで到着した。
「た、助けてください!」
「い、嫌だ、死にたくないよ!」
『グルオオアアアアッ!』
「はあっ!」
ラクシアの森に取り残されていたランクの低い冒険者が飛び出してくると、それを追い掛けて魔獣が森から出てきた。
すれ違いざまに剣を振り抜いたイーライが魔獣の首を刎ねると、逃げてきた冒険者は腰を抜かして地面に座り込む。
「……た、助かった、のか?」
「……うぅぅ、よかったよおおぉぉぉぉっ!」
お互いに抱き合って泣き出してしまった二人だが、イーライは気にすることなく声を掛ける。
「おい、そっちの二人!」
「「は、はい!」」
「森の中でSランク冒険者のガゼルさんを見なかったか!」
マゼリアでも有名なガゼルの名前を出した途端、二人の表情がハッとした。
「み、見ました!」
「も、森の奥で、見たことのない魔獣と、戦っていました!」
「見たことのない魔獣だと?」
魔獣の活性化と関係しているのかと歯噛みするイーライ。
明日香も何が起きているのかと疑問を浮かべていく。
「真っ黒な魔獣で、見ただけで怖くなって……」
「私たち、逃げてきちゃったんです……」
「……二人が無事でよかった。ね、イーライ」
自分たちが逃げてきたという事実に落ち込んでしまった二人を見て、明日香は優しい声音で声を掛けた。
「……あぁ、そうだな。お前たちはその情報を持って、必ずマゼリアに戻るんだ! すぐ近くにAランク冒険者も来ているから、そいつらに伝えてもいい。いいか、絶対に生きて情報を届けろ!」
「「わ、わかりました!」」
ここまでの道のりにいた魔獣はある程度片付けている。
彼らが無事にマゼリアに戻ってくれることを信じて、明日香たちは振り返ることなくレイを走らせる。
そして、二人はようやくラクシアの森に足を踏み入れた。
しかし、その中にランクの高い冒険者は少ない。ほとんどがカフカの森の調査へ向かっているからだ。
そして、数少ない高ランク冒険者も街道にまで溢れ出している魔獣に手を取られてラクシアの森まで到達できずにいた。
「くそっ! 邪魔だ!」
「イーライ、まだまだ来るよ!」
「早くラクシアの森に入らないといけないのに!」
急ぎたい気持ちと、そうさせてくれない魔獣の数が、イーライの苛立ちを駆り立てる。
『ゲギャギャ!』
「危ない、イーライ!」
転がる魔獣の死体の下から、息を潜めていた別の魔獣が飛び出してくる。
「しま――」
――ひゅっ!
『ギャビャッ!?』
魔獣の爪がレイを捉えようとした刹那、鋭く飛来した一本の矢が魔獣の眉間を打ち抜いた。
何が起きたのか理解できず、矢が飛んできた方向へ視線を向ける。
「何をやっているのかな、イーライ君!」
「やっほー! 朝ぶりだねー!」
「こっちは任せてさっさと行きなさい!」
男性一人と女性二人の冒険者がイーライの名前を呼びながら声を掛けてきた。
「……イーライ、あの人たちは?」
「冒険者の先輩だ。昨日の夜、俺と同じ班で行動していたんだが……」
「あぁーっ! イーライ君、女の子と二人乗りとは、怪しからんぞ!」
「本当だー! ひゅーひゅー!」
「あんたたち、うるさいわよ! イーライ、ちゃんと守りなさいよ! 男ならね!」
そう言いながら明日香たちを追い越していくと、前に固まっていた多くの魔獣を薙ぎ払っていく。
「……つ、強いね」
「……あぁ。あの三人もジャズズと同じでAランク冒険者なんだ」
「エ、Aランク!? でも、みんなカフカの森に行ったって……あっ、そっか。イーライが戻ってきているんだから、一緒に班を組んでいた人も戻ってきているんだよね」
「休まずに駆けつけてくれるんだから、やっぱり冒険者ってすごいな」
そう口にしながら、イーライの手綱を握る手に力が込められた。
「……行くぞ、アスカ!」
「うん! 三人の助けを無駄にしちゃダメだよ!」
そして、三人の活躍によって開かれた道を駆け抜けていくと、二人はようやくラクシアの森の入り口まで到着した。
「た、助けてください!」
「い、嫌だ、死にたくないよ!」
『グルオオアアアアッ!』
「はあっ!」
ラクシアの森に取り残されていたランクの低い冒険者が飛び出してくると、それを追い掛けて魔獣が森から出てきた。
すれ違いざまに剣を振り抜いたイーライが魔獣の首を刎ねると、逃げてきた冒険者は腰を抜かして地面に座り込む。
「……た、助かった、のか?」
「……うぅぅ、よかったよおおぉぉぉぉっ!」
お互いに抱き合って泣き出してしまった二人だが、イーライは気にすることなく声を掛ける。
「おい、そっちの二人!」
「「は、はい!」」
「森の中でSランク冒険者のガゼルさんを見なかったか!」
マゼリアでも有名なガゼルの名前を出した途端、二人の表情がハッとした。
「み、見ました!」
「も、森の奥で、見たことのない魔獣と、戦っていました!」
「見たことのない魔獣だと?」
魔獣の活性化と関係しているのかと歯噛みするイーライ。
明日香も何が起きているのかと疑問を浮かべていく。
「真っ黒な魔獣で、見ただけで怖くなって……」
「私たち、逃げてきちゃったんです……」
「……二人が無事でよかった。ね、イーライ」
自分たちが逃げてきたという事実に落ち込んでしまった二人を見て、明日香は優しい声音で声を掛けた。
「……あぁ、そうだな。お前たちはその情報を持って、必ずマゼリアに戻るんだ! すぐ近くにAランク冒険者も来ているから、そいつらに伝えてもいい。いいか、絶対に生きて情報を届けろ!」
「「わ、わかりました!」」
ここまでの道のりにいた魔獣はある程度片付けている。
彼らが無事にマゼリアに戻ってくれることを信じて、明日香たちは振り返ることなくレイを走らせる。
そして、二人はようやくラクシアの森に足を踏み入れた。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる