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第二章:新たなる力、メガネ付き
第17話:森の異変 3
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その日の夜、明日香は部屋で一人ベッドに寝転がりながら森で起きている以上について考えていた。
岳人たちがいなくなり、そしてタイミングを合わせたかのように魔獣の活性化が確認された。
単なる偶然にしてはタイミングが良すぎることもあり、明日香は彼らが今回の騒動に関わっているのではないかと思えてならない。
「でも、どうやって関わっているかなんだよねぇ」
そこまで口にして、昨日のアルとの会話を思い出す。
アルは岳人たちの逃亡に誰かが手を貸しているのではないかと考えていた。
その誰かがわかれば、何か手掛かりが掴めるのではないか。
「……いやいや、どうやって見つけるのよ。私にあるのは、このメガネくらいだしなぁ」
魔導具になっている明日香のメガネは、自分への好感度を数値化して見ることができる。
さらに鑑定機能もついているのだが、明日香には使いどころがまだあまりわかっていない。
現状、明日香の場合は素材採取での確認作業、そして自分へ悪感情を抱いている相手を避けるくらいにしか使えていない。
メガネをもっと有効活用することができれば、アルたちの力になれるのではないかとも心のどこかで考えてしまう。
「アル様に相談しておけばよかったかなぁ。もしくは、イーライに」
昨日の今日で後悔をし、明日はイーライもいない。
「……だああぁぁぁぁ。やってしまったなぁ~」
今さら後悔しても遅く、明日香はなんとか意識を切り替えようと別のことを考え始めた。
「それにしても、ガゼルさんって本当にすごい人なんだなぁ」
Sランク冒険者で、元騎士のイーライを圧倒できる人物。
それだけでもすごいのだが、その人となりも素晴らしいとなれば夏希が惚れてしまうのもわからなくはない。
年上好きという部分も大きいものの、これまでも多くの女性から言い寄られていたはずだ。
「……あれ? そうなると、実はガゼルさんって遊び人なんじゃあ?」
勝手にそんなことを考えていると、明日香は無性に夏希のことが心配になってきてしまう。
そして、明日は自分も一緒にラクシアの森へ向かうべきはないのかと思い始めた。
「……ダ、ダメよ、明日香! 仕事もあるんだし、何より夏希ちゃんの恋路を邪魔しちゃダメ!」
自分に言い聞かせながら、頭を左右に振って枕で顔を覆い隠してしまう。
「……そういえば、私ってイーライとデートとかしたことないなぁ」
突然に自分の恋愛を心配するようになり、そこの思考が一番深いものになってしまう。
イーライも冒険者として活動を始め、実力を認められて忙しくしている。
デートができないのも仕方がないと、そして自分も調合師として頑張らなければならない時期なのだと理解しているからこそ、今もずっと我慢しているのだ。
しかし、近くで初々しい恋路を目の当たりにしてしまうと、自分はどうだろうと考えてしまうのは仕方がないことかもしれない。
「……今度、イーライを誘ってみようかしら」
特別な日にする必要はない。
ただ、城下町を一緒に歩き、散歩を楽しむ程度でも構わなかった。
ほんの少しでもいいから、恋人気分を堪能したかったのだ。
「……私、こんな女だったかしら?」
日本にいた頃は恋人などできた試しがなく、ただ真面目な女、つまらない女と言われ続けてきた。
同僚としては役に立つが、異性としては全く見てもらえなかった人生に、いつしか恋をすることを諦めていた。
「……こっちの世界って、日本のブスが美形なのかしら」
自分が可愛いとはこれっぽっちも思っていない。むしろ、夏希の方が愛嬌もあって可愛らしく、誰からも愛されるだろうと本気で思っている。
好感度という数値だけで話をすればイーライだけではなく、アルやリヒトも高い数値を叩き出している。
この数値が男女の好き嫌いではないと思っているものの、どうしても意識してしまうのだ。
「……ううん。どれだけ好感度が高くても、私が好きな人はイーライだもんね」
そこまで考えて、ようやく気がついた。
「……あれ? どうしてイーライのことを考えていたのかしら?」
メガネでできることがないかを考えていると、気づけば恋愛についての思考に切り替わっていた。
自分でもどうしてそうなったのか理解できず、色々なことを考え過ぎて疲れてしまったのだろうと無理やり納得させる。
「……寝よう。それで、明日は仕事を頑張るんだ」
そう口にしたものの、最後のイーライへの気持ちが頭の中から離れずにしばらく興奮が冷めない明日香なのだった。
岳人たちがいなくなり、そしてタイミングを合わせたかのように魔獣の活性化が確認された。
単なる偶然にしてはタイミングが良すぎることもあり、明日香は彼らが今回の騒動に関わっているのではないかと思えてならない。
「でも、どうやって関わっているかなんだよねぇ」
そこまで口にして、昨日のアルとの会話を思い出す。
アルは岳人たちの逃亡に誰かが手を貸しているのではないかと考えていた。
その誰かがわかれば、何か手掛かりが掴めるのではないか。
「……いやいや、どうやって見つけるのよ。私にあるのは、このメガネくらいだしなぁ」
魔導具になっている明日香のメガネは、自分への好感度を数値化して見ることができる。
さらに鑑定機能もついているのだが、明日香には使いどころがまだあまりわかっていない。
現状、明日香の場合は素材採取での確認作業、そして自分へ悪感情を抱いている相手を避けるくらいにしか使えていない。
メガネをもっと有効活用することができれば、アルたちの力になれるのではないかとも心のどこかで考えてしまう。
「アル様に相談しておけばよかったかなぁ。もしくは、イーライに」
昨日の今日で後悔をし、明日はイーライもいない。
「……だああぁぁぁぁ。やってしまったなぁ~」
今さら後悔しても遅く、明日香はなんとか意識を切り替えようと別のことを考え始めた。
「それにしても、ガゼルさんって本当にすごい人なんだなぁ」
Sランク冒険者で、元騎士のイーライを圧倒できる人物。
それだけでもすごいのだが、その人となりも素晴らしいとなれば夏希が惚れてしまうのもわからなくはない。
年上好きという部分も大きいものの、これまでも多くの女性から言い寄られていたはずだ。
「……あれ? そうなると、実はガゼルさんって遊び人なんじゃあ?」
勝手にそんなことを考えていると、明日香は無性に夏希のことが心配になってきてしまう。
そして、明日は自分も一緒にラクシアの森へ向かうべきはないのかと思い始めた。
「……ダ、ダメよ、明日香! 仕事もあるんだし、何より夏希ちゃんの恋路を邪魔しちゃダメ!」
自分に言い聞かせながら、頭を左右に振って枕で顔を覆い隠してしまう。
「……そういえば、私ってイーライとデートとかしたことないなぁ」
突然に自分の恋愛を心配するようになり、そこの思考が一番深いものになってしまう。
イーライも冒険者として活動を始め、実力を認められて忙しくしている。
デートができないのも仕方がないと、そして自分も調合師として頑張らなければならない時期なのだと理解しているからこそ、今もずっと我慢しているのだ。
しかし、近くで初々しい恋路を目の当たりにしてしまうと、自分はどうだろうと考えてしまうのは仕方がないことかもしれない。
「……今度、イーライを誘ってみようかしら」
特別な日にする必要はない。
ただ、城下町を一緒に歩き、散歩を楽しむ程度でも構わなかった。
ほんの少しでもいいから、恋人気分を堪能したかったのだ。
「……私、こんな女だったかしら?」
日本にいた頃は恋人などできた試しがなく、ただ真面目な女、つまらない女と言われ続けてきた。
同僚としては役に立つが、異性としては全く見てもらえなかった人生に、いつしか恋をすることを諦めていた。
「……こっちの世界って、日本のブスが美形なのかしら」
自分が可愛いとはこれっぽっちも思っていない。むしろ、夏希の方が愛嬌もあって可愛らしく、誰からも愛されるだろうと本気で思っている。
好感度という数値だけで話をすればイーライだけではなく、アルやリヒトも高い数値を叩き出している。
この数値が男女の好き嫌いではないと思っているものの、どうしても意識してしまうのだ。
「……ううん。どれだけ好感度が高くても、私が好きな人はイーライだもんね」
そこまで考えて、ようやく気がついた。
「……あれ? どうしてイーライのことを考えていたのかしら?」
メガネでできることがないかを考えていると、気づけば恋愛についての思考に切り替わっていた。
自分でもどうしてそうなったのか理解できず、色々なことを考え過ぎて疲れてしまったのだろうと無理やり納得させる。
「……寝よう。それで、明日は仕事を頑張るんだ」
そう口にしたものの、最後のイーライへの気持ちが頭の中から離れずにしばらく興奮が冷めない明日香なのだった。
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