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第一章:勇者召喚、おまけ付き
第40話:ガゼリア山脈の魔獣 4
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カフカの森の手前まで来た明日香たちは、先に出発していた冒険者の第一陣と合流していた。
この第一陣はガゼリア山脈まで向かうCランク以上の冒険者で構成されているのだが、予想以上にカフカの森へ魔獣が下りてきており苦戦を強いられていた。
「うおぉっ!? で、でけぇ馬だなぁ!」
「聞きたい事がある! 第一陣の面々で騎士団を見かけた者はいるか!」
「騎士団だぁっ!? あいつらはさっさと行っちまって、俺たちは誰も見てねえよ!」
第一陣を率いているAランク冒険者が荒い口調で言い放つと、飛び掛かって来た狼の魔獣にウォーハンマーを叩きつけて頭蓋を粉砕する。
「てめぇはいったい何なんだ? 彼女とデートでもしに来たのかぁ?」
「イーライ、右奥からさっきの魔獣が群れを成して突っ込んで来るわ!」
「聞いただろう! 迎撃の準備を始めろ!」
「あぁん? てめぇ、何を言って――」
「ソードウルフだ! 十匹以上いるぞ!」
「……はあ?」
索敵も十分にできておらず、冒険者たちは出会い頭での戦闘を余儀なくされている。
事実、ソードウルフの群れに気づいたのも視界に入ってきたからで、その存在を事前に知っていたわけではなかった。
それにもかかわらず目の前の女性が到着早々に群れの存在を言い当ててしまい、Aランク冒険者は唖然としてしまう。
「さらに後方には別の魔獣……ポイズンフロッグがゆっくりと近づいて来ていて、左奥からはキラーマンティスの群れが来ているわ!」
「……おいおい、マジかよ!」
「命の危険があるこの場で嘘なんてつかないわよ!」
驚愕するAランク冒険者だったが、すぐに周囲の状況判断を行い指示を飛ばす。
「てめぇら! ソードウルフだけじゃねぇぞ! 第二陣が来るまで踏ん張れよ!」
「「「「おおおおぉぉっ!」」」」
明日香はまさか自分の伝えた事が信じられて、さらに即座に指示として飛ばされる事になるとは思っておらず、目の前の光景を何度も瞬きを繰り返しながら眺めていた。
「……よかったんですか?」
「あん? 何を言ってるんだ、嬢ちゃんは。事実なら問題ねぇだろうが」
「だけど――」
「き、来たぞおおぉぉっ!」
「こっちも来た!」
「迎え撃つわよ!」
明日香が狼狽えている間にも指摘した方角から声があがる。
それを見たAランク冒険者はニヤリと笑いこう言い放った。
「な? 問題ねぇだろう?」
「……あ、はい。そうですね」
「俺たちは騎士団の関係者だ。このまま進むが、こっちは問題ないな?」
「できれば魔獣の情報がもう少しだけ欲しい」
「だったら……正面から突っ込んで来る魔獣がいます。でも、こちらは私たちの進行方向になるよ、イーライ?」
緊急事態という事もあり、明日香は気持ちを強く持って至近距離からイーライを見た。
胸が早鐘を打つものの平静を保てている……と、明日香は思っている。
「なら、そっちは俺が受け持とう」
「えっと、他にも左右の後方、少し距離はあるけど近づいてくる魔獣の群れがあるわ」
「んなら、そっちがお前たちの方へ行かないよう、俺たちが対処してやるよ」
「助かる。それじゃあ行くぞ、アスカ!」
「う、うん! ありがとうございます!」
イーライがレイのお腹を足で蹴ると、いななきをあげて一気に駆け出す。
「嬢ちゃんも頑張れよ!」
「は、はいいいいぃぃっ!」
Aランク冒険者の言葉を背中に受けながら、明日香はなんとか返事をした。
「……頑張れの意味、分かってるんだろうなぁ?」
平静を保てていると思っていた明日香だが、Aランク冒険者から見れば恥ずかしがっている事がバレバレだった。
自分たちが助けられた以上、二人には幸せになって欲しいと勝手に思いながら、Aランク冒険者も魔獣の群れへ突っ込んでいくのだった。
イーライは片手で手綱を持ち、逆の手で剣を抜く。
「アスカ! 俺にしっかり掴まっていろよ!」
「わ、分かった!」
揺れるレイの上では恥ずかしさなど吹き飛んでおり、振り落とされないようイーライにしがみついている。
馬上、しかも護衛対象がしがみついている状態では戦い辛いだろうイーライだが、全く苦にする事なく魔獣を仕留めていく。
「ファイアアロー!」
視界に入ったと思えば炎の矢を飛ばして仕留め、抜けて飛び掛かって来た魔獣には剣を振るい両断していく。
レイも速度を一切落とす事なく、速度を維持して突き進んでいく。
イーライとレイ、一人と一匹の信頼関係は絶大であり、彼が止まれという指示を出さない限りは走り続ける事だろう。
Aランク冒険者に宣言した通り、イーライは正面から迫っていた魔獣の群れをたった一人で殲滅してしまい、そのままガゼリア山脈へ向かっていく。
「イーライ!」
「どうした、舌を噛むぞ?」
「正面から、大きい魔獣が、来るよ!」
しかし、小型の魔獣が先行していただけで、さらに後方からは中型の魔獣がゆっくりと迫ってきていた。
その存在に気づいた明日香が声をあげ、イーライは剣の柄を握り直す。
「名前は……アイアン、ゴーレム?」
「アイアンゴーレムか。なら、そのまま突っ込むぞ!」
「え? ええええぇぇっ!?」
一度立ち止まるのかと思っていた明日香は、まさかさらに加速して突き進む選択をしたイーライに驚愕すると共に、しがみつく腕に力を込めた。
「……見えたぞ」
あまりの揺れに目を閉じていた明日香だったが、イーライの言葉に右目だけを開けて横目に正面を見る。
そこには2メートルを超える鉄色の体を持った二足歩行の魔獣、アイアンゴーレムが待ち構えていた。
「……ちょっと、イーライ! あれはさすがに無理だよね!」
「いいや、いける!」
『グルウウウウゥゥッ!』
「ひいっ!?」
まるで地鳴りのような咆哮をあげたアイアンゴーレムが両腕を振り上げると、レイが間合いに入った瞬間に振り下ろす。
ブオンとものすごい音が響き渡ると共に、地面を揺さぶり轟音が鳴り響く。
直撃していれば肉は潰れ、骨は砕け、全てがぐちゃぐちゃとなり飛び散っていただろう。
だが、レイはアイアンゴーレムの威圧を苦も無く走り続けると、振り下ろしを睨みつけながら駆け抜け、腕を潜り抜けて懐に踏み込んでいく。
レイの動きに合わせてイーライも動いた。
大きく右腕を振り上げると、剣身に風の刃を纏わせて一気に振り抜いた。
「シルフブレイド!」
切れ味を極限まで引き上げた魔法剣、シルフブレイドによる一閃は高硬度のアイアンゴーレムの胸部を両断した。
アイアンゴーレムは切り口から徐々にずり落ちていき、地面を揺さぶりながらガラガラと音を立てバラバラになって崩れ落ちた。
「終わったぞ」
「……え? ほ、本当に?」
イーライの言葉を受けて、明日香はゆっくりと両目を開けていく。
そこには先ほどまで動いていたアイアンゴーレムの成れの果てが転がっていた。
「……バラバラ?」
「ゴーレムは体内に核を持っているからな。そこを切ってしまえば、ただの無機物だな」
周囲に魔獣の気配がない事を確認したイーライは、剣を鞘に納めながら口にした。
「今は緊急事態だ。このまま向かうぞ」
「あ、うん。それじゃあ行きま……しょう……」
「ん? なんだ?」
「な、なんでもないわ! 早く行きましょう!」
「あ、あぁ」
なかなか慣れない距離感に、ガゼリア山脈に早く着いて欲しい願う明日香なのだった。
この第一陣はガゼリア山脈まで向かうCランク以上の冒険者で構成されているのだが、予想以上にカフカの森へ魔獣が下りてきており苦戦を強いられていた。
「うおぉっ!? で、でけぇ馬だなぁ!」
「聞きたい事がある! 第一陣の面々で騎士団を見かけた者はいるか!」
「騎士団だぁっ!? あいつらはさっさと行っちまって、俺たちは誰も見てねえよ!」
第一陣を率いているAランク冒険者が荒い口調で言い放つと、飛び掛かって来た狼の魔獣にウォーハンマーを叩きつけて頭蓋を粉砕する。
「てめぇはいったい何なんだ? 彼女とデートでもしに来たのかぁ?」
「イーライ、右奥からさっきの魔獣が群れを成して突っ込んで来るわ!」
「聞いただろう! 迎撃の準備を始めろ!」
「あぁん? てめぇ、何を言って――」
「ソードウルフだ! 十匹以上いるぞ!」
「……はあ?」
索敵も十分にできておらず、冒険者たちは出会い頭での戦闘を余儀なくされている。
事実、ソードウルフの群れに気づいたのも視界に入ってきたからで、その存在を事前に知っていたわけではなかった。
それにもかかわらず目の前の女性が到着早々に群れの存在を言い当ててしまい、Aランク冒険者は唖然としてしまう。
「さらに後方には別の魔獣……ポイズンフロッグがゆっくりと近づいて来ていて、左奥からはキラーマンティスの群れが来ているわ!」
「……おいおい、マジかよ!」
「命の危険があるこの場で嘘なんてつかないわよ!」
驚愕するAランク冒険者だったが、すぐに周囲の状況判断を行い指示を飛ばす。
「てめぇら! ソードウルフだけじゃねぇぞ! 第二陣が来るまで踏ん張れよ!」
「「「「おおおおぉぉっ!」」」」
明日香はまさか自分の伝えた事が信じられて、さらに即座に指示として飛ばされる事になるとは思っておらず、目の前の光景を何度も瞬きを繰り返しながら眺めていた。
「……よかったんですか?」
「あん? 何を言ってるんだ、嬢ちゃんは。事実なら問題ねぇだろうが」
「だけど――」
「き、来たぞおおぉぉっ!」
「こっちも来た!」
「迎え撃つわよ!」
明日香が狼狽えている間にも指摘した方角から声があがる。
それを見たAランク冒険者はニヤリと笑いこう言い放った。
「な? 問題ねぇだろう?」
「……あ、はい。そうですね」
「俺たちは騎士団の関係者だ。このまま進むが、こっちは問題ないな?」
「できれば魔獣の情報がもう少しだけ欲しい」
「だったら……正面から突っ込んで来る魔獣がいます。でも、こちらは私たちの進行方向になるよ、イーライ?」
緊急事態という事もあり、明日香は気持ちを強く持って至近距離からイーライを見た。
胸が早鐘を打つものの平静を保てている……と、明日香は思っている。
「なら、そっちは俺が受け持とう」
「えっと、他にも左右の後方、少し距離はあるけど近づいてくる魔獣の群れがあるわ」
「んなら、そっちがお前たちの方へ行かないよう、俺たちが対処してやるよ」
「助かる。それじゃあ行くぞ、アスカ!」
「う、うん! ありがとうございます!」
イーライがレイのお腹を足で蹴ると、いななきをあげて一気に駆け出す。
「嬢ちゃんも頑張れよ!」
「は、はいいいいぃぃっ!」
Aランク冒険者の言葉を背中に受けながら、明日香はなんとか返事をした。
「……頑張れの意味、分かってるんだろうなぁ?」
平静を保てていると思っていた明日香だが、Aランク冒険者から見れば恥ずかしがっている事がバレバレだった。
自分たちが助けられた以上、二人には幸せになって欲しいと勝手に思いながら、Aランク冒険者も魔獣の群れへ突っ込んでいくのだった。
イーライは片手で手綱を持ち、逆の手で剣を抜く。
「アスカ! 俺にしっかり掴まっていろよ!」
「わ、分かった!」
揺れるレイの上では恥ずかしさなど吹き飛んでおり、振り落とされないようイーライにしがみついている。
馬上、しかも護衛対象がしがみついている状態では戦い辛いだろうイーライだが、全く苦にする事なく魔獣を仕留めていく。
「ファイアアロー!」
視界に入ったと思えば炎の矢を飛ばして仕留め、抜けて飛び掛かって来た魔獣には剣を振るい両断していく。
レイも速度を一切落とす事なく、速度を維持して突き進んでいく。
イーライとレイ、一人と一匹の信頼関係は絶大であり、彼が止まれという指示を出さない限りは走り続ける事だろう。
Aランク冒険者に宣言した通り、イーライは正面から迫っていた魔獣の群れをたった一人で殲滅してしまい、そのままガゼリア山脈へ向かっていく。
「イーライ!」
「どうした、舌を噛むぞ?」
「正面から、大きい魔獣が、来るよ!」
しかし、小型の魔獣が先行していただけで、さらに後方からは中型の魔獣がゆっくりと迫ってきていた。
その存在に気づいた明日香が声をあげ、イーライは剣の柄を握り直す。
「名前は……アイアン、ゴーレム?」
「アイアンゴーレムか。なら、そのまま突っ込むぞ!」
「え? ええええぇぇっ!?」
一度立ち止まるのかと思っていた明日香は、まさかさらに加速して突き進む選択をしたイーライに驚愕すると共に、しがみつく腕に力を込めた。
「……見えたぞ」
あまりの揺れに目を閉じていた明日香だったが、イーライの言葉に右目だけを開けて横目に正面を見る。
そこには2メートルを超える鉄色の体を持った二足歩行の魔獣、アイアンゴーレムが待ち構えていた。
「……ちょっと、イーライ! あれはさすがに無理だよね!」
「いいや、いける!」
『グルウウウウゥゥッ!』
「ひいっ!?」
まるで地鳴りのような咆哮をあげたアイアンゴーレムが両腕を振り上げると、レイが間合いに入った瞬間に振り下ろす。
ブオンとものすごい音が響き渡ると共に、地面を揺さぶり轟音が鳴り響く。
直撃していれば肉は潰れ、骨は砕け、全てがぐちゃぐちゃとなり飛び散っていただろう。
だが、レイはアイアンゴーレムの威圧を苦も無く走り続けると、振り下ろしを睨みつけながら駆け抜け、腕を潜り抜けて懐に踏み込んでいく。
レイの動きに合わせてイーライも動いた。
大きく右腕を振り上げると、剣身に風の刃を纏わせて一気に振り抜いた。
「シルフブレイド!」
切れ味を極限まで引き上げた魔法剣、シルフブレイドによる一閃は高硬度のアイアンゴーレムの胸部を両断した。
アイアンゴーレムは切り口から徐々にずり落ちていき、地面を揺さぶりながらガラガラと音を立てバラバラになって崩れ落ちた。
「終わったぞ」
「……え? ほ、本当に?」
イーライの言葉を受けて、明日香はゆっくりと両目を開けていく。
そこには先ほどまで動いていたアイアンゴーレムの成れの果てが転がっていた。
「……バラバラ?」
「ゴーレムは体内に核を持っているからな。そこを切ってしまえば、ただの無機物だな」
周囲に魔獣の気配がない事を確認したイーライは、剣を鞘に納めながら口にした。
「今は緊急事態だ。このまま向かうぞ」
「あ、うん。それじゃあ行きま……しょう……」
「ん? なんだ?」
「な、なんでもないわ! 早く行きましょう!」
「あ、あぁ」
なかなか慣れない距離感に、ガゼリア山脈に早く着いて欲しい願う明日香なのだった。
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