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第一章:勇者召喚、おまけ付き
第18話:好感度の謎 5
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翌日、護衛のためにやって来たイーライに対して明日香からの第一声は彼を困惑させていた。
「……魔力操作の訓練? いきなりなんの話だ?」
昨日行われたジジとのやり取りを説明すると、イーライはしばらく考えた後に小さく頷いた。
「……まあ、ジジさんが許可しているならいいかな」
頭を掻きながらそう口にしたイーライの手を取った明日香は、ブンブンと上下に何度も振りながらお礼を口にした。
「ありがとう! やっぱりイーライはいい人だね!」
「いや、護衛対象のお願いを断るとかできないし、殿下とバーグマン様の頼みでもあるしな」
「え? これも仕事なの?」
「仕事だろう。……なんだ、別に報酬を要求した方がいいのか?」
「し、仕事でお願いします!」
冗談で口にしたイーライだったが、明日香は本気で受け取ってしまいすぐに自分の主張を引っ込めてしまった。
「冗談だよ。それじゃあ俺は後ろに引っ込んでおくから、時間ができたら声を掛けてくれ」
「分かった! 本当にありがとう、イーライ!」
「はいはい」
ジジに軽く頭を下げたイーライは店の奥へと消えていったが、その顔を見たジジは言葉にはせずに優しい笑みを浮かべるに止めていた。
「……ほほほ」
手を握られたのは恥ずかしかったのか、頼られた事への照れ隠しなのか、イーライの顔は真っ赤になっていたのだった。
朝の品出しから昼休憩を挟んでのピーク時間が終わり、明日香はジジの許可を得てイーライに声を掛けた。
「もういいのか?」
「うん! よろしくお願いします、イーライ先生!」
「……茶化すな。魔力操作はふざけてやったら身を滅ぼすからな?」
「……すみませんでした」
ジジからも言われていた身を滅ぼすという言葉をイーライからも言われてしまい、明日香は素直に謝罪を口にすると、すぐに真剣な表情に切り替わった。
「……それじゃあ最初の確認なんだが、明日香は魔法を見た事があるか?」
質問をされてからしばらく考えてみたのだが、明日香はゆっくりと首を横に振った。
「……そういえば、一度も見た事がないかも」
「まあ、王城内で魔法を使う人なんていないからな、そりゃそうか」
そう口にしながら立ち上がると、イーライは道具屋の裏につながるドアを指差して歩き出す。
「外でやるの?」
「あぁ。失敗するつもりはないが、何かあって家具とかに傷を付けたら嫌だからな」
傷を付けられるような魔法を使うつもりなのかと内心でドキドキしていた明日香だが、イーライはそんな魔法を使うつもりは一切なかった。
「魔法と一口で言っても使い方は様々だ。適性でも使える魔法は変わってくるし、同じ魔法でも使い方によっては別の使われ方をする場合もある」
「同じ魔法でも?」
「あぁ。まずは一つの魔法を見てもらうとしようか――ブルーシャボン」
イーライは説明しながら右の手のひらを空に向けると、その少し上に青色に染まった丸く大きなシャボン玉が顕現した。
「……え? これが、魔法なの?」
「これが魔法だ」
「……シャボン玉の魔法?」
明日香の想像では火の玉を出したり、風を起こしたり、土がひとりでに耕されたり、日本ではあり得ないような現象の事を思い浮かべていた。
「……石鹸があれば作れるよね?」
「まあな。だが、このシャボン玉はれっきとした魔法だ。使い方はそうだなぁ……魔力を必要以上に注いで強度を増して相手にぶつけたり、シャボン玉の中を水でいっぱいにして顔にはめて溺れさせたり、とかだな」
「なんか怖いんだけど! 溺れるとか絶対に嫌だ!」
自分で自分の体を抱きしめながらそう口にすると、イーライは呆れた様子で説明を続ける。
「使い方の例だって。火属性を持つ料理人だったら火力の調整に使ったりするしな」
「あー……それなら想像しやすいかな」
「使い方をイメージしながら魔法を使うと操作しやすいってメリットもあるから、想像しやすい方がいいだろうな。とはいえ、まずは魔力操作についてだな」
広げていた右手を閉じるのと同時にブルーシャボンが割れて消える。次いで歩き出したイーライは――おもむろに明日香の両手を握った。
「イ、イイイイ、イーライ!?」
「なんだ?」
「な、なな、なんで手を握るの!?」
「その方が魔力を送りやすいからな。まずは魔力の流れを感じるところから始めるんだよ」
「……あ、そっか。そういう事ね」
「……お前、どういう事だと思っていたんだ?」
独り相撲で慌てたり顔を赤くしたり、恥ずかしくなった明日香は下を向いて空笑いを漏らす。
「……はぁ。それじゃあ魔力を流すぞ、いいか?」
「う、うん!」
なんとか気を取り直した明日香は顔を上げて握られている両手に視線を向ける。
明日香の準備が整ったと見たイーライは自らの魔力を流し込んでいく。
「……何か感じるか?」
「……なんだろう、右手から温かい何かが流れ込んできている気がする」
「それだ。俺が流し込んでいるのは、火属性の魔力だからな」
「火属性……それじゃあ、私は火属性に適性があるって事?」
「いいや、まずは魔力を感じやすくするために温かさを乗せたんだ。徐々に体の方も温かくなってきたんじゃないか?」
「ちょっと待ってね。…………あ、うん、温かくなってきた」
体を流れていく魔力を感じ取り、明日香は神経をそちらへ集中させていく。
「魔力は体の中を循環している。今は魔力の流れを作るために俺が流し込んでいるが、最終的には自分で体の中を循環させる必要がある」
「私にできるかな?」
「問題ない。そろそろ左手にも魔力が通ってきたんじゃないか?」
「えっと……うん、左手の方も温かくなってきた。でも、これって?」
右手に感じた魔力はイーライから流し込まれているものだった。だが左手に感じた魔力は自分の腕から外に出て行くように感じられて驚いている。
「しっかりと感じられているみたいだな。今は魔力の流れを俺とアスカを通して循環されるようにしているからこっちに戻ってきたんだ」
「だから出て行っちゃったんだね」
「この流れを覚えた状態で、こっちに流れてくる魔力の流れを自分の中だけに止めるんだ」
「そうなんだ」
そこで二人して黙り込んでしまい明日香が視線を両手からイーライに向けると、なぜか呆れた方な顔をされてしまう。
「……どうしたの?」
「それを今、ここでやって欲しいんだが?」
「…………ええええぇぇっ!? い、今やるの!」
「そりゃそうだろう! そうじゃないとやっている意味がないからな!」
「どうやって!」
「流れる魔力を自分の中だけで循環させるイメージを作るんだよ! さっき言っただろう、イメージが大事だって!」
「言っていたけど魔力操作に必要とか思わないから! ちょっと待ってよ、イメージでしょ……イメージ……イメージ…………ううぅぅぅぅ~ん……」
目を閉じ変な声で唸っている明日香を見守っているイーライは、見られていない事を確認して少しだけ顔を赤くしていた。
明日香が手を取られて恥ずかしくなったのと同じで、イーライも自ら手を取る事を非常に恥ずかしく思っていたのだ。
「……魔力操作の訓練? いきなりなんの話だ?」
昨日行われたジジとのやり取りを説明すると、イーライはしばらく考えた後に小さく頷いた。
「……まあ、ジジさんが許可しているならいいかな」
頭を掻きながらそう口にしたイーライの手を取った明日香は、ブンブンと上下に何度も振りながらお礼を口にした。
「ありがとう! やっぱりイーライはいい人だね!」
「いや、護衛対象のお願いを断るとかできないし、殿下とバーグマン様の頼みでもあるしな」
「え? これも仕事なの?」
「仕事だろう。……なんだ、別に報酬を要求した方がいいのか?」
「し、仕事でお願いします!」
冗談で口にしたイーライだったが、明日香は本気で受け取ってしまいすぐに自分の主張を引っ込めてしまった。
「冗談だよ。それじゃあ俺は後ろに引っ込んでおくから、時間ができたら声を掛けてくれ」
「分かった! 本当にありがとう、イーライ!」
「はいはい」
ジジに軽く頭を下げたイーライは店の奥へと消えていったが、その顔を見たジジは言葉にはせずに優しい笑みを浮かべるに止めていた。
「……ほほほ」
手を握られたのは恥ずかしかったのか、頼られた事への照れ隠しなのか、イーライの顔は真っ赤になっていたのだった。
朝の品出しから昼休憩を挟んでのピーク時間が終わり、明日香はジジの許可を得てイーライに声を掛けた。
「もういいのか?」
「うん! よろしくお願いします、イーライ先生!」
「……茶化すな。魔力操作はふざけてやったら身を滅ぼすからな?」
「……すみませんでした」
ジジからも言われていた身を滅ぼすという言葉をイーライからも言われてしまい、明日香は素直に謝罪を口にすると、すぐに真剣な表情に切り替わった。
「……それじゃあ最初の確認なんだが、明日香は魔法を見た事があるか?」
質問をされてからしばらく考えてみたのだが、明日香はゆっくりと首を横に振った。
「……そういえば、一度も見た事がないかも」
「まあ、王城内で魔法を使う人なんていないからな、そりゃそうか」
そう口にしながら立ち上がると、イーライは道具屋の裏につながるドアを指差して歩き出す。
「外でやるの?」
「あぁ。失敗するつもりはないが、何かあって家具とかに傷を付けたら嫌だからな」
傷を付けられるような魔法を使うつもりなのかと内心でドキドキしていた明日香だが、イーライはそんな魔法を使うつもりは一切なかった。
「魔法と一口で言っても使い方は様々だ。適性でも使える魔法は変わってくるし、同じ魔法でも使い方によっては別の使われ方をする場合もある」
「同じ魔法でも?」
「あぁ。まずは一つの魔法を見てもらうとしようか――ブルーシャボン」
イーライは説明しながら右の手のひらを空に向けると、その少し上に青色に染まった丸く大きなシャボン玉が顕現した。
「……え? これが、魔法なの?」
「これが魔法だ」
「……シャボン玉の魔法?」
明日香の想像では火の玉を出したり、風を起こしたり、土がひとりでに耕されたり、日本ではあり得ないような現象の事を思い浮かべていた。
「……石鹸があれば作れるよね?」
「まあな。だが、このシャボン玉はれっきとした魔法だ。使い方はそうだなぁ……魔力を必要以上に注いで強度を増して相手にぶつけたり、シャボン玉の中を水でいっぱいにして顔にはめて溺れさせたり、とかだな」
「なんか怖いんだけど! 溺れるとか絶対に嫌だ!」
自分で自分の体を抱きしめながらそう口にすると、イーライは呆れた様子で説明を続ける。
「使い方の例だって。火属性を持つ料理人だったら火力の調整に使ったりするしな」
「あー……それなら想像しやすいかな」
「使い方をイメージしながら魔法を使うと操作しやすいってメリットもあるから、想像しやすい方がいいだろうな。とはいえ、まずは魔力操作についてだな」
広げていた右手を閉じるのと同時にブルーシャボンが割れて消える。次いで歩き出したイーライは――おもむろに明日香の両手を握った。
「イ、イイイイ、イーライ!?」
「なんだ?」
「な、なな、なんで手を握るの!?」
「その方が魔力を送りやすいからな。まずは魔力の流れを感じるところから始めるんだよ」
「……あ、そっか。そういう事ね」
「……お前、どういう事だと思っていたんだ?」
独り相撲で慌てたり顔を赤くしたり、恥ずかしくなった明日香は下を向いて空笑いを漏らす。
「……はぁ。それじゃあ魔力を流すぞ、いいか?」
「う、うん!」
なんとか気を取り直した明日香は顔を上げて握られている両手に視線を向ける。
明日香の準備が整ったと見たイーライは自らの魔力を流し込んでいく。
「……何か感じるか?」
「……なんだろう、右手から温かい何かが流れ込んできている気がする」
「それだ。俺が流し込んでいるのは、火属性の魔力だからな」
「火属性……それじゃあ、私は火属性に適性があるって事?」
「いいや、まずは魔力を感じやすくするために温かさを乗せたんだ。徐々に体の方も温かくなってきたんじゃないか?」
「ちょっと待ってね。…………あ、うん、温かくなってきた」
体を流れていく魔力を感じ取り、明日香は神経をそちらへ集中させていく。
「魔力は体の中を循環している。今は魔力の流れを作るために俺が流し込んでいるが、最終的には自分で体の中を循環させる必要がある」
「私にできるかな?」
「問題ない。そろそろ左手にも魔力が通ってきたんじゃないか?」
「えっと……うん、左手の方も温かくなってきた。でも、これって?」
右手に感じた魔力はイーライから流し込まれているものだった。だが左手に感じた魔力は自分の腕から外に出て行くように感じられて驚いている。
「しっかりと感じられているみたいだな。今は魔力の流れを俺とアスカを通して循環されるようにしているからこっちに戻ってきたんだ」
「だから出て行っちゃったんだね」
「この流れを覚えた状態で、こっちに流れてくる魔力の流れを自分の中だけに止めるんだ」
「そうなんだ」
そこで二人して黙り込んでしまい明日香が視線を両手からイーライに向けると、なぜか呆れた方な顔をされてしまう。
「……どうしたの?」
「それを今、ここでやって欲しいんだが?」
「…………ええええぇぇっ!? い、今やるの!」
「そりゃそうだろう! そうじゃないとやっている意味がないからな!」
「どうやって!」
「流れる魔力を自分の中だけで循環させるイメージを作るんだよ! さっき言っただろう、イメージが大事だって!」
「言っていたけど魔力操作に必要とか思わないから! ちょっと待ってよ、イメージでしょ……イメージ……イメージ…………ううぅぅぅぅ~ん……」
目を閉じ変な声で唸っている明日香を見守っているイーライは、見られていない事を確認して少しだけ顔を赤くしていた。
明日香が手を取られて恥ずかしくなったのと同じで、イーライも自ら手を取る事を非常に恥ずかしく思っていたのだ。
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