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第一章:勇者召喚、おまけ付き
第14話:好感度の謎 1
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明日香が仕事を始めてから七日が経過した。
それは同時に明日香が居を王城からジジの道具屋へ移す日になったという事だ。
「ぅ……うぅぅ……ヤ、ヤマト様~」
「ほ、本当に出て行かれるのですね、アスカ様~」
与えられていた部屋の前では見送りに来てくれたアルとリヒトが号泣しており、明日香は苦笑いを浮かべる事しかできず、隣に立つイーライは真面目な顔をしているが内心では大きなため息をついていた。
「で、では、私はもう行きますね?」
「もう行かれるのですか!」
「そりゃ行きますよ!」
「せめてもう一時間……いや、半日!」
「長すぎるわ! 一時間から半日って差があり過ぎますよ!」
なんとか時間を稼ごうとしているのが見え見えのため、明日香はさっさと歩き出してしまう。
続いてイーライも歩き出そうとしたのだが、その両肩をアルとリヒトがガシッと掴んできた。
「イーライ!」
「絶対にアスカ様を守り抜くのですよ!」
「わ、分かっています。分かっていますから、離していただけませんか? アスカ様が行ってしまいますので」
最初はアルだけではなくリヒトにも緊張していたイーライだったが、明日香の護衛を受けた事で関わる機会が増えていた。
そのせいもあり、今では二人の人となりを知る事ができてだいぶ対応が軽くなっている。
とはいえ相手は一国の第一王子とその補佐官だ。無礼にならない程度の態度には抑えていた。
「イーライ! 早く行きましょう!」
「アスカ様も呼んでいますし、これで失礼いたします」
二人に頭を下げたイーライは少し駆け足で明日香の隣に並ぶと、そのまま曲がり角を進んで姿が見えなくなった。
「……怪しいと思わないか、リヒト?」
「……私もそう思います、アル様」
残された二人は無駄に妄想を膨らませては、追い掛けたい衝動をなんとか抑えていた。
門を潜って城下に出ると、イーライは慣れた様子で明日香の荷物を取り上げた。
「いつもごめんね? 今日のは特に重いでしょ?」
「これくらい問題ない」
最初の頃は遠慮していた明日香だったが、女性に荷物を持たせるのは性に合わないと全く折れる気配を見せなかったイーライに負けて荷物持ちをお願いしている。
そこまで大量の荷物を持ち運んでいるわけではないのだが、今日に限って言えばリヒトが準備してくれた衣服をそのまま頂いて持ってきているので結構な重さになっているはずだ。
それでも問題ないと言えるのは、イーライが騎士として日々鍛錬に励んでいるからだろう。
「そういえば、聞いた事なかったけど騎士団ではどんな訓練をしているの?」
「走り込みと素振り、後は模擬戦が大半だな。物足りなければ筋トレを少々追加するかな」
「……く、訓練で物足りないとかあるんだね」
「俺からすると、ほとんどの同僚が格上だからな。訓練しないと置いていかれるんだよ」
そう口にするイーライの表情には苦々しいものがあった。
「イーライって若いもんね。……あれ? 前に話した時には中堅くらいって言ってなかった? なんだか計算が合わない気がするんだけど?」
「なんの計算だ? まあ、俺は騎士になったのが十五歳で最年少記録とか言われていたから、中堅だが若い方だけどな」
「おぉー! 若手のホープなんだ!」
「だから中堅だって言っているだろ? ただ若いだけで、実力が伴わないんじゃあホープとは言わないだろう。ってか、そろそろ着くぞ」
話をしながらの道中はとても早く感じられ、イーライには毎回そろそろだと教えられている。
今ではそれも面白いのだと思えるようになってきた明日香だが、住み込みで働くという事はこの時間がなくなるという事で、考えると少しだけ寂しい気持ちになってしまった。
「……この会話も、今日で最後なんだね」
「それはまあ、住み込みだからな。王城からの護衛はなくなるだろう」
「そうだけど! ……そんな単純な話じゃないんだよー!」
少しだけ怒ったような表情を作ってみた明日香だったが、イーライは特に気にする様子もなく言葉を続けた。
「まあ、アスカの護衛はこれからも続けるから、普通に話し掛けてきたらいいんじゃないか?」
「あーあ。これからはジジさんがいるからいいけど、イーライとももっと……って、え?」
勝手にイーライの護衛兼案内人の仕事は終わりだと思い込んでいた明日香は、彼の言葉に驚き言葉が続かなくなってしまった。
「聞いていないのか? 住み込みで働くとは言っても、まだまだ知らない事の方が多いだろう」
「そ、そうだけど、そこはジジさんに聞けばいいんじゃないの?」
「そうだが、護衛は何かあった時に守れないとダメだろう。言っちゃあ悪いが、ジジさんが悪漢からアスカの事を守れるとは思えないからな」
「……え? そんな危険なところに行くつもりないけど?」
「とにかく! 俺はアスカの護衛を続けるんだよ! ……殿下とバーグマン様からの命令だ、察してくれ」
「……あー……うん、分かった」
非常に過保護であり、見送りでまさかの号泣していた二人を思い出した明日香は事情を察して遠い目を王城の方へと向ける。
「……まあ、やりたくないわけじゃあないしな」
「え? 何か言った?」
「いや、なんでもない。ほら、さっさと行くぞ!」
「ちょっと、待ってよ! イーライってば!」
少しずつだが、イーライも明日香に対する気持ちが高まってきている。それでも彼は一個人ではなく騎士として仕事をこなすためにこの場におり、自分の気持ちをひた隠しにしていた。
そのせいもあってか、明日香の目に映る好感度の数値も依然と変わらず25のままだったので彼女もイーライの気持ちには気づけていなかった。
「おはようございます、ジジさん!」
「おぉ、おはよう。アスカさん、イーライ」
木製のドアを自分で開けた明日香が大きな声で挨拶をすると、ジジも笑顔で返してくれる。
イーライは軽く会釈をするだけだが、これが普段通りなのでジジも文句を言わなかった。
「もう! イーライも元気よく挨拶したらいいじゃないのよ!」
「俺は店員じゃないんだから別にいいじゃないか」
「でも、手伝ってくれるじゃない?」
「それはどうしようもない時だけだ。ジジさん、俺はアスカの荷物を運びたいんだけど、どの部屋に運べばいいですか?」
「あぁ、そうですね。ご案内いたします」
イーライが荷物を持ち上げながら声を掛けると、ジジもすぐに応えて歩き出す。
カウンターを抜けて奥へ向かうと、そこには二階へ上がる階段がある。
そこから二階へ進んでいくと右にジジの部屋があり、向かい側に明日香の部屋があった。
それは同時に明日香が居を王城からジジの道具屋へ移す日になったという事だ。
「ぅ……うぅぅ……ヤ、ヤマト様~」
「ほ、本当に出て行かれるのですね、アスカ様~」
与えられていた部屋の前では見送りに来てくれたアルとリヒトが号泣しており、明日香は苦笑いを浮かべる事しかできず、隣に立つイーライは真面目な顔をしているが内心では大きなため息をついていた。
「で、では、私はもう行きますね?」
「もう行かれるのですか!」
「そりゃ行きますよ!」
「せめてもう一時間……いや、半日!」
「長すぎるわ! 一時間から半日って差があり過ぎますよ!」
なんとか時間を稼ごうとしているのが見え見えのため、明日香はさっさと歩き出してしまう。
続いてイーライも歩き出そうとしたのだが、その両肩をアルとリヒトがガシッと掴んできた。
「イーライ!」
「絶対にアスカ様を守り抜くのですよ!」
「わ、分かっています。分かっていますから、離していただけませんか? アスカ様が行ってしまいますので」
最初はアルだけではなくリヒトにも緊張していたイーライだったが、明日香の護衛を受けた事で関わる機会が増えていた。
そのせいもあり、今では二人の人となりを知る事ができてだいぶ対応が軽くなっている。
とはいえ相手は一国の第一王子とその補佐官だ。無礼にならない程度の態度には抑えていた。
「イーライ! 早く行きましょう!」
「アスカ様も呼んでいますし、これで失礼いたします」
二人に頭を下げたイーライは少し駆け足で明日香の隣に並ぶと、そのまま曲がり角を進んで姿が見えなくなった。
「……怪しいと思わないか、リヒト?」
「……私もそう思います、アル様」
残された二人は無駄に妄想を膨らませては、追い掛けたい衝動をなんとか抑えていた。
門を潜って城下に出ると、イーライは慣れた様子で明日香の荷物を取り上げた。
「いつもごめんね? 今日のは特に重いでしょ?」
「これくらい問題ない」
最初の頃は遠慮していた明日香だったが、女性に荷物を持たせるのは性に合わないと全く折れる気配を見せなかったイーライに負けて荷物持ちをお願いしている。
そこまで大量の荷物を持ち運んでいるわけではないのだが、今日に限って言えばリヒトが準備してくれた衣服をそのまま頂いて持ってきているので結構な重さになっているはずだ。
それでも問題ないと言えるのは、イーライが騎士として日々鍛錬に励んでいるからだろう。
「そういえば、聞いた事なかったけど騎士団ではどんな訓練をしているの?」
「走り込みと素振り、後は模擬戦が大半だな。物足りなければ筋トレを少々追加するかな」
「……く、訓練で物足りないとかあるんだね」
「俺からすると、ほとんどの同僚が格上だからな。訓練しないと置いていかれるんだよ」
そう口にするイーライの表情には苦々しいものがあった。
「イーライって若いもんね。……あれ? 前に話した時には中堅くらいって言ってなかった? なんだか計算が合わない気がするんだけど?」
「なんの計算だ? まあ、俺は騎士になったのが十五歳で最年少記録とか言われていたから、中堅だが若い方だけどな」
「おぉー! 若手のホープなんだ!」
「だから中堅だって言っているだろ? ただ若いだけで、実力が伴わないんじゃあホープとは言わないだろう。ってか、そろそろ着くぞ」
話をしながらの道中はとても早く感じられ、イーライには毎回そろそろだと教えられている。
今ではそれも面白いのだと思えるようになってきた明日香だが、住み込みで働くという事はこの時間がなくなるという事で、考えると少しだけ寂しい気持ちになってしまった。
「……この会話も、今日で最後なんだね」
「それはまあ、住み込みだからな。王城からの護衛はなくなるだろう」
「そうだけど! ……そんな単純な話じゃないんだよー!」
少しだけ怒ったような表情を作ってみた明日香だったが、イーライは特に気にする様子もなく言葉を続けた。
「まあ、アスカの護衛はこれからも続けるから、普通に話し掛けてきたらいいんじゃないか?」
「あーあ。これからはジジさんがいるからいいけど、イーライとももっと……って、え?」
勝手にイーライの護衛兼案内人の仕事は終わりだと思い込んでいた明日香は、彼の言葉に驚き言葉が続かなくなってしまった。
「聞いていないのか? 住み込みで働くとは言っても、まだまだ知らない事の方が多いだろう」
「そ、そうだけど、そこはジジさんに聞けばいいんじゃないの?」
「そうだが、護衛は何かあった時に守れないとダメだろう。言っちゃあ悪いが、ジジさんが悪漢からアスカの事を守れるとは思えないからな」
「……え? そんな危険なところに行くつもりないけど?」
「とにかく! 俺はアスカの護衛を続けるんだよ! ……殿下とバーグマン様からの命令だ、察してくれ」
「……あー……うん、分かった」
非常に過保護であり、見送りでまさかの号泣していた二人を思い出した明日香は事情を察して遠い目を王城の方へと向ける。
「……まあ、やりたくないわけじゃあないしな」
「え? 何か言った?」
「いや、なんでもない。ほら、さっさと行くぞ!」
「ちょっと、待ってよ! イーライってば!」
少しずつだが、イーライも明日香に対する気持ちが高まってきている。それでも彼は一個人ではなく騎士として仕事をこなすためにこの場におり、自分の気持ちをひた隠しにしていた。
そのせいもあってか、明日香の目に映る好感度の数値も依然と変わらず25のままだったので彼女もイーライの気持ちには気づけていなかった。
「おはようございます、ジジさん!」
「おぉ、おはよう。アスカさん、イーライ」
木製のドアを自分で開けた明日香が大きな声で挨拶をすると、ジジも笑顔で返してくれる。
イーライは軽く会釈をするだけだが、これが普段通りなのでジジも文句を言わなかった。
「もう! イーライも元気よく挨拶したらいいじゃないのよ!」
「俺は店員じゃないんだから別にいいじゃないか」
「でも、手伝ってくれるじゃない?」
「それはどうしようもない時だけだ。ジジさん、俺はアスカの荷物を運びたいんだけど、どの部屋に運べばいいですか?」
「あぁ、そうですね。ご案内いたします」
イーライが荷物を持ち上げながら声を掛けると、ジジもすぐに応えて歩き出す。
カウンターを抜けて奥へ向かうと、そこには二階へ上がる階段がある。
そこから二階へ進んでいくと右にジジの部屋があり、向かい側に明日香の部屋があった。
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