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第一章:勇者召喚、おまけ付き

第8話:異世界での生活 3

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「よーし! それじゃあ気を取り直して城下を見て回りましょう!」
「はいはい」

 気安い態度に変わったイーライを見て笑みを浮かべた明日香は、楽しそうに城下を見て回る。
 見ていく中で気になったのが、騎士や衛兵ではない中にも武装している者が多くいた事だ。

「武装している人たちは自警団みたいなものかしら?」
「自警団? 違う、冒険者だ」
「……冒険者?」
「あぁ。騎士や衛兵は王命を受けて領地や都市を守るために動くが、冒険者は自由意志で活動する者たちだ。個人の依頼なんかも受けるから、簡単に言えば何でも屋みたいなものだな」

 冒険者を管理している冒険者ギルドが個人と冒険者の間に入って依頼を斡旋しており、冒険者の実力に合わせた依頼を紹介したりしている。

(うーん、フリーランスみたいなものかしら?)

 説明を聞きながらそんな事を考えていた明日香は、ちょっとした質問を口にした。

「この世界にある職業について教えてくれる? 将来的には自分で働いてお金を稼ぎたいのよ」
「……働くのか?」
「うん。……あれ? 言ってなかったっけ?」

 呆れたように呟いたイーライだったが、彼は明日香の質問にしっかりと答えてくれた。
 とはいえ、基本的には日本と同じようなもので飲食業や販売業、観光業はないが海の側の都市であれば海運業もあると教えてくれた。
 ただし、明日香は一般的な会社員で事務業務を行っていた事もあり、過去にバイトの経験もなかったのでどちらにしても初めての経験をするだろうと予想していた。

「事務業務とかはないんですか?」
「事務業務? ……そういう仕事をしていたなら、それこそ王城で殿下やバーグマン様の補佐をやっていた方がいいんじゃないか?」
「いや、それはダメ! 二人に助けられてばかりじゃダメなの!」
「どうしてだ? そっちの方が仕事も得られるし、将来的にも安定するだろう?」
「そうなんだけどねぇ……自由に働きたいってのが私のやってみたい事でもあったんだ。だから色々と聞いていたんだけど、聞いた中だと冒険者が近い感じが――」
「冒険者は止めた方がいいぞ」

 気になっていたフリーランス的な冒険者だが、イーライが言葉を遮りながら止めに入った。

「……どうして?」
「何でも屋とは言ったが、武装しているのは見ていて分かるだろ?」
「……うん」
「依頼の中には危険を伴うものが多くあるって事だ」

 依頼の多くは魔獣の討伐を伴うものがほとんどだ。他にも依頼はあるが大半が都市外に出る必要があり、どちらにしても魔獣と相対する可能性が高くなる。都市内でできる依頼もあるが、それだけでは稼ぎも低く生活するには全く足りないのだとイーライは口にした。

「……そうなんですか?」
「そうだ。薬草採取などの簡単な依頼もあるが、結局はこれも都市外に出る事になる。依頼を受けるために別の冒険者へ護衛依頼をするとなれば本末転倒だからな」
「……冒険者って、難しいんですね」
「どんな仕事にも簡単なものなんてないが、冒険者は一際難しいな。誰でもなれるから最後の手段にするのはありだが、最初の選択肢にするのはオススメしないな」

 選ぶならもっとましな仕事があるはずだと言われ、明日香は渋々頷く事にした。

「……あまり納得していないような顔だな。死にたいのなら俺は止めないが、忠告はしたぞ?」
「死にたくありません! 冒険者は諦めます!」

 心の内を見透かされた明日香はドキリとしたが、死という言葉を耳にすると素直に従った。

「……分かってくれたならいいさ。まだ城下を見て回るのか?」
「まだ見てないところも多いしね。そうだ! イーライがオススメする場所とかない?」
「俺のオススメ? ……まあ、オススメってわけじゃないが立ち寄りたい場所がある」
「それじゃあ、そこに行きましょう!」
「いいのか? 単に買い物をするだけなんだが?」

 どうせなら自分の用事を済ませたいと考えて口をついてしまった発言だが、明日香は気にする事なくそこへ向かおうと笑顔を浮かべた。

「構わないわ! それに、どういったものが売られているのかも気になるしね!」
「……まあ、そういう事ならいいか。こっちだ、ついて来てくれ」

 こうして明日香はイーライの案内で歩き出す。
 最初は大通りを進んでいたのだが、一度筋道に入ると何度も曲がりながら進んでいく。
 案内人がいなければ絶対に辿り着けない場所だなと思っていると、前を歩いていたイーライが木造の建物の前で立ち止まった。

「……ここなの?」
「あぁ。ジジの道具屋だ」
「それ、お店の名前?」
「店主の名前がジジと言うんだ。外で話をするのもなんだし、中に入ろう」

 大通りの建物は全て石造りだったのに対して、ジジの道具屋は木造である。
 入口前にある小さな階段に足を乗せるとギシギシと音を立てているが、明日香はなぜか親しみを覚えていた。

(そういえば、実家の階段もこんな感じだったっけ)

 田舎にある木造住宅の実家を思い出しながらイーライが開けてくれた扉を抜けると、木材独特の香りが鼻を抜けていくのが分かった。
 店内には奥にカウンターがあり、その間の商品棚には見た事のない色合いの液体が入った瓶が所狭しに並んでいる。
 これがいったい何なのか質問しようとした時、カウンターの奥から一人の老人が姿を現した。
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