上 下
44 / 46

第40話:ギルドからの報告

しおりを挟む
 襲撃があった日は話し合いのあと、すぐに休みことにした。
 さすがに全員が疲労困憊であり、必要なことだけの確認を行った感じだ。
 そして翌日となり、俺たちは予定外の呼び出しを受けることになった。

「……ギルマスからの呼び出し?」
「はい。大変お手数ですが、冒険者ギルドまで足を運んでいただけますでしょうか?」

 宿の職員が俺の部屋を訪ねてきたので、俺は一階の受付へ移動した。
 するとそこにはミスティが待っていたのだ。
 昨日だけでゴブリンクイーンと襲撃者との激闘を繰り広げている。
 正直、今日は丸一日を掛けて休むつもりだったんだが……だけど、ミスティが直接呼びに来たくらいだ、おそらく急用なのだろう。

「分かった。準備ができ次第向かうよ。俺だけでいいのか?」
「はい。……その、ガゼルヴィード領に関係があるかもしれないことなので」
「……ガゼルヴィード領?」

 俺はすでにガゼルヴィードの人間ではないし、ガゼルヴィード領を出てからのことは何も知らないんだが……あの親父、いったい何をやらかしたんだ?

「……それじゃあ、俺だけで向かいます」
「申し訳ございません。よろしくお願いいたします」

 頭を下げてそう口にしたミスティを見送った俺は、すぐに自分の部屋へ戻っていく。

「どうされたのですか?」

 部屋に戻ると、同室のバズズさんから声を掛けられた。

「ギルマスからの呼び出しです。ガゼルヴィード領に関係することらしいんですけど、なんのことで呼び出されたのかは行ってから聞いてみます」
「そうですか。私たちも行った方が?」
「聞かれて困ることはないと思うんですが、とりあえずは俺だけで行ってみます」

 俺がそう答えると、バズズさんはすぐに頷いてくれる。

「かしこまりました。それでは、そのことは私からレミティア様とリディアに伝えておきます」
「助かります。それじゃあ、いってきますね」
「お気をつけて、アリウス殿」

 バズズさんに見送られながら部屋を出た俺は、そのまま宿をあとにして冒険者ギルドへ向かう。
 途中の屋台で朝食を購入し、道の端を歩きながら食事を済ませる。
 昨日あれだけ動いたあとだ、食事はしっかりと取っておきたい。
 そんなことを考えながら食事を終えると、すぐに冒険者ギルドへ到着した。

「お待ちしておりました、アリウス様」
「うわあっ!? ……えっと、ミスティ? まさか、ずっと入口で待っていたのか?」
「いいえ。アリウス様の気配がしたので、待っておりました」

 気配って、街中でも気配に気を配っているのかよ、ミスティは。

「マスターの部屋へご案内いたします」
「あ、ありがとうございます」

 少しの時間も惜しいのか、ミスティはすぐに俺を二階へと促し、そのままギルマスの部屋に通された。

「昨日の今日でごめんなさいね、アリウス君」
「いいえ、俺は大丈夫です。それで、ガゼルヴィード領についてって聞いたんですけど?」

 急用だろうと思っていた俺は、すぐに本題に入ろうと声を掛けた。

「えぇ。昨日の報告にあったゴブリンクイーン、そしてキングがいるかもしれない、という話なのだけれど……そのゴブリンクイーンとキングが、ガゼルヴィード領からこっちに流れてきた魔獣の可能性が浮上してきたの」

 ……え? マジかよ、それは?

「ど、どういうことですか?」
「まずはこれを見てほしいの」

 そう言ってギルマスがテーブルに広げたのは、ラクスウェイン領を中心に描かれた地図だ。
 ラクスウェイン領にある都市だけではなく、他領にも名前が知られている土地の名称が記されており、隣接する領地についても簡単にだが書かれていた。

「ここがラグザリアで、アリウス君たちがゴブリンクイーンと対峙した洞窟がこの辺りよ。なんとなく分かるかしら?」
「分かります。だけど、この場所のゴブリンクイーンがどうしてガゼルヴィード領から流れて来たって断定できるんですか?」

 俺にとってはすでに、ガゼルヴィード領は関係のない場所だが、ゴブリンクイーンが流れてきたということは、まだ俺がナリゴサ村にいた頃かもしれない。
 そうだとすれば、俺がかかわっている可能性もゼロではないので、どうして断定に至ったのか、それが知りたかった。

「今回のゴブリンの巣の壊滅の依頼なのだけど、洞窟の近くにある村から出された依頼だったの。だけれど、その村というのは少し前にできたばかりの村なのよ」
「そうなんですか?」
「えぇ。そして、その村ができた経緯というのが――ガゼルヴィード領から逃げてきた、元ガゼルヴィード領民が造った村なのよ」

 ……おいおい、マジかよ。

「ということは、ガゼルヴィード領から逃げてきた領民を追い掛けてきたゴブリンが洞窟に住み着いて、そこでクイーンやキングまで成長したってことですか?」
「あくまで推測なのだけどね。アリウス君たちが帰ったあと、私なりに村から依頼された過去の依頼を洗い出してみたのだけど、一番最初の依頼がゴブリン討伐だったのよ」

 なるほど。これはギルマスがガゼルヴィード領がかかわっていると疑いたくもなる内容だ。
 そして、それが事実だとすれば、ラグザリアから……いいや、ラクスウェイン領から、ガゼルヴィード領へ抗議することもできるだろう。

「……あっ!」

 そこで俺は思い出してしまった。
 ナリゴサ村にいた頃で、ゴブリンに関する、忘れてしまっていたことを。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

処理中です...