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第29話:ゴブリンクイーン②
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『な、なんだと!?』
俺が変わることなく上位ゴブリンを両断したことで、クイーンが驚きの声をあげた。
「私たちはアリウス殿の実力を過小評価していたようですね」
「わ、私はそのようなつもりはなかったのですが……その通りになってしまいましたね」
「……すごい……すご過ぎます、アリウス!」
剛剣を使って皮膚の硬くなった上位ゴブリンを倒していくが、これは正直なところ、魔力の燃費が悪すぎる。
だが、ここでゴブリンウォーズが通用するとクイーンに思われてしまえば、そのまま力押しで来られる可能性が高くなる。
それだけは絶対に避けなければならない。
「まだ後ろでふんぞり返っているのか? それはそれで、こいつらを根絶やしにさせてもらうけどな!」
軽く挑発をしながら、余裕があるように見せつつ、上位ゴブリンを両断していく。
ゴブリンから見た俺はおそらく、大悪党に見えていることだろう。
『……ふざ、けるなよ、人間風情がああああっ!!』
激高したクイーンが、ようやく重い腰を上げた。
立ち上がったクイーンは三メートルに迫る身長を誇っている。
それだけならただでかいだけなのだが、クイーンの周囲には無数の魔法陣がすでに展開されていた。
「それはいきなり過ぎじゃないか!?」
『消し飛ばしてやろう! ファイアボルト!』
展開された魔法陣が全て俺の方を向き、そこから炎雷が迸る。
「快速!」
瞬間的な使用では回避できないと判断した俺は、快速スキルを常時使用に切り替え、縦横無尽に動き回る。
ファイアボルトが着弾したところでは炎が弾け飛び、周囲は火の海と化していた。
『貴様だけは絶対に許さんぞ! いけ、子供たち!』
『『『『ゴブゴブゴブゴブッ!』』』』
ファイアボルトへの対応に加えて、上位ゴブリンがこちらめがけて殺到してきた。
「私が出る! この場はリディアに任せるぞ!」
「はい!」
「フルブースト!」
直後、バズズさんが上位ゴブリンの背後へ奇襲を仕掛けてくれた。
「上位ゴブリンは私が相手をする! アリウス殿はクイーンを頼む!」
「はい!」
簡単なやり取りだったが、とても頼りになる言葉だった。
防御魔法があるレミティアにはリディアが付いているので問題はない。
上位ゴブリンもお爺ちゃんと共に戦っていたというバズズさんになら任せられるはずだ。
それなら俺は、みんなの期待に応えなければならないな!
「さあ、クイーン! 俺と一対一で勝負を決しようぜ!」
『生意気な! 貴様だけは地獄の苦しみを与えながら殺してやるぞ!』
俺は剣を握る手に力を込める。
怪力、快速、鋼鉄と戦闘に使えそうなスキルを常時使用へと切り替える。
時間を掛ければ掛けるほど、体力が削られてしまうのはこちらだろう。
ならば、やるべきことは短期決戦。
『ファイアストーム!』
直後、俺を囲むようにして炎の竜巻が顕現した。
『貴様の仲間が蹂躙されていく間、そこに閉じ込めてやるわ! ズタズタになった仲間の横で、貴様を殺してやるわ!』
魔法を破るには、さらに強い魔法をぶつけるか、単純に魔法を回避する方法がある。
「これは回避できないか。魔法の威力には自信がないしな」
となると、俺にはどうすることもできない……というわけではなかった。
「俺にはもう一つ、戦闘で役に立つスキルがあるんだよ!」
そのスキルはすでに一度、洞窟内で使用している。
とはいえ、レミティアたちにも気づかれないように、密かに使っていたスキルだ。
「飛行!」
ファイアストームは分厚い炎の竜巻を形成しているが、厚みを持たせることを重視しているのか、高さはそこまでない。
洞窟の天井まで竜巻が形成されていれば、正直なところ俺にはどうすることもできなかっただろう。
そこへクイーンの甘さなのか、それとも天井まで跳び上がることができないと判断したのか。
どちらにしても、俺はその判断の甘さに助けられることになった。
『うふふ。あとはあいつの仲間をズタズタに――』
「はああああああああっ!!」
『う、上ですって!?』
クイーンの驚愕の声が響く中、俺は頭上から剣を上段に構えて急降下していく。
「剛剣!」
落下速度、体重、全てを乗せた剛剣による一撃が、クイーンの脳天を捉えた。
――ザンッ!
『……そ、そんな……ありえ……ない…………』
剛剣による一撃は、クイーンを縦に一刀両断しており、その肉体はズルリと左右に分たれ、そのまま地面に転がった。
俺が変わることなく上位ゴブリンを両断したことで、クイーンが驚きの声をあげた。
「私たちはアリウス殿の実力を過小評価していたようですね」
「わ、私はそのようなつもりはなかったのですが……その通りになってしまいましたね」
「……すごい……すご過ぎます、アリウス!」
剛剣を使って皮膚の硬くなった上位ゴブリンを倒していくが、これは正直なところ、魔力の燃費が悪すぎる。
だが、ここでゴブリンウォーズが通用するとクイーンに思われてしまえば、そのまま力押しで来られる可能性が高くなる。
それだけは絶対に避けなければならない。
「まだ後ろでふんぞり返っているのか? それはそれで、こいつらを根絶やしにさせてもらうけどな!」
軽く挑発をしながら、余裕があるように見せつつ、上位ゴブリンを両断していく。
ゴブリンから見た俺はおそらく、大悪党に見えていることだろう。
『……ふざ、けるなよ、人間風情がああああっ!!』
激高したクイーンが、ようやく重い腰を上げた。
立ち上がったクイーンは三メートルに迫る身長を誇っている。
それだけならただでかいだけなのだが、クイーンの周囲には無数の魔法陣がすでに展開されていた。
「それはいきなり過ぎじゃないか!?」
『消し飛ばしてやろう! ファイアボルト!』
展開された魔法陣が全て俺の方を向き、そこから炎雷が迸る。
「快速!」
瞬間的な使用では回避できないと判断した俺は、快速スキルを常時使用に切り替え、縦横無尽に動き回る。
ファイアボルトが着弾したところでは炎が弾け飛び、周囲は火の海と化していた。
『貴様だけは絶対に許さんぞ! いけ、子供たち!』
『『『『ゴブゴブゴブゴブッ!』』』』
ファイアボルトへの対応に加えて、上位ゴブリンがこちらめがけて殺到してきた。
「私が出る! この場はリディアに任せるぞ!」
「はい!」
「フルブースト!」
直後、バズズさんが上位ゴブリンの背後へ奇襲を仕掛けてくれた。
「上位ゴブリンは私が相手をする! アリウス殿はクイーンを頼む!」
「はい!」
簡単なやり取りだったが、とても頼りになる言葉だった。
防御魔法があるレミティアにはリディアが付いているので問題はない。
上位ゴブリンもお爺ちゃんと共に戦っていたというバズズさんになら任せられるはずだ。
それなら俺は、みんなの期待に応えなければならないな!
「さあ、クイーン! 俺と一対一で勝負を決しようぜ!」
『生意気な! 貴様だけは地獄の苦しみを与えながら殺してやるぞ!』
俺は剣を握る手に力を込める。
怪力、快速、鋼鉄と戦闘に使えそうなスキルを常時使用へと切り替える。
時間を掛ければ掛けるほど、体力が削られてしまうのはこちらだろう。
ならば、やるべきことは短期決戦。
『ファイアストーム!』
直後、俺を囲むようにして炎の竜巻が顕現した。
『貴様の仲間が蹂躙されていく間、そこに閉じ込めてやるわ! ズタズタになった仲間の横で、貴様を殺してやるわ!』
魔法を破るには、さらに強い魔法をぶつけるか、単純に魔法を回避する方法がある。
「これは回避できないか。魔法の威力には自信がないしな」
となると、俺にはどうすることもできない……というわけではなかった。
「俺にはもう一つ、戦闘で役に立つスキルがあるんだよ!」
そのスキルはすでに一度、洞窟内で使用している。
とはいえ、レミティアたちにも気づかれないように、密かに使っていたスキルだ。
「飛行!」
ファイアストームは分厚い炎の竜巻を形成しているが、厚みを持たせることを重視しているのか、高さはそこまでない。
洞窟の天井まで竜巻が形成されていれば、正直なところ俺にはどうすることもできなかっただろう。
そこへクイーンの甘さなのか、それとも天井まで跳び上がることができないと判断したのか。
どちらにしても、俺はその判断の甘さに助けられることになった。
『うふふ。あとはあいつの仲間をズタズタに――』
「はああああああああっ!!」
『う、上ですって!?』
クイーンの驚愕の声が響く中、俺は頭上から剣を上段に構えて急降下していく。
「剛剣!」
落下速度、体重、全てを乗せた剛剣による一撃が、クイーンの脳天を捉えた。
――ザンッ!
『……そ、そんな……ありえ……ない…………』
剛剣による一撃は、クイーンを縦に一刀両断しており、その肉体はズルリと左右に分たれ、そのまま地面に転がった。
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