31 / 46
第28話:ゴブリンクイーン①
しおりを挟む
洞窟は思っていたよりも、深くはなかった。
どうしてそれが分かったのかというと、進んだ先の通路の曲がり角、そこからものすごい殺気が放たれているのを感じ取ることができたからだ。
「……いるな」
「……はい」
戦闘職ではないレミティアですら感じ取ることができる殺気。それはつまり、この巣の主が存在していると考えて間違いないだろう。
ゴブリンナイト、ウォリアー、ハイモンクを従えることができるゴブリンの上位種。
「……これ、新人冒険者が受けちゃダメな依頼だろう」
殺気の主を視界に収めた俺は、思わずそう呟いてしまう。
「あいつは――ゴブリンクイーン!」
『あら? 誰が私の巣を荒らしているのかと思っていたら、女に子供じゃないの』
相手はゴブリン種の中でも最上位に位置するゴブリンクイーン。
しかもこの個体は、人語を介することができるほどに知能が高い。
ゴブリンナイトたちが出て来た時点で新人には手に負えないと思っていたが、クイーンとなればBランク、人語を介すとなればAランクに匹敵する実力を持っているはずだ。
「変な話だけど、俺たちが受けてよかったな、これ」
「……あの、アリウス? 今はそんなことを言っている場合じゃないのでは?」
俺が冷静に状況を見極めていると、レミティアからそんなツッコミを入れられてしまった。
『そっちの子供は面白いわね。どうかしら、私の子供になってみない?』
「あいにくと、俺は人間なんでね。魔獣の子供になろうとは思わないな」
『あら、残念ねぇ。美味しく食べられると思っていたのにねえ!』
――ガラガラ、ドンッ!
クイーンがそう叫ぶと、俺たちの背後からものすごい音が響き、レミティアたちが振り返る。
「そ、そんな!」
「閉じ込められただと!」
「人語を介すとは思っていたが、ここまで用意周到な罠があろうとは!」
レミティア、リディア、バズズさんが言葉を発する中、俺は剣を抜いてクイーンを睨みつける。
「要はお前を倒せばいいだけの話だろう?」
『賢い子だこと。本当に……本当に、残念だわああああっ!!』
ゴブリンクイーンが両手を広げると、その背後からナイト、ウォリアー、ハイモンクがぞろぞろと姿を現した。
「上位種があれほどに!」
「なんて数だ!」
リディアとバズズさんが驚きの声と共に剣を構える。
確かに、上位種が二桁も集まるとなれば、それは小規模のスタンピードだと言えなくはない。
それだけの規模の上位魔獣が、この狭い洞窟に集まっていたのだ。
……ちょっと待てよ? この依頼、ミスティが勧めてくれた依頼だし、もしかして――
『殺しなさい! 私の子供たち!』
『『『『ゴブゴブゴブゴブッ!!』』』』
上位ゴブリンたちが一斉に駆け出してくる。
レミティアは即座に身体強化魔法を発動させてくれた。
「バズズさんとリディアは、レミティアの護衛を頼む!」
「ア、アリウス殿は!?」
「俺がこいつらの相手をする!」
「自殺行為だ、アリウス殿!!」
「いけません、アリウス!!」
レミティアたちの制止を振り切り、俺は上位ゴブリンたちへ一直線に駆け出していく。
剣を横に構え、腰を捻りながら跳躍すると、そのまま回転斬りを放つ。
上位ゴブリンの首が紙切れのように斬り飛ばされていく。
着地と同時に腕をしならせながら剣を振るうと、首よりも太く、筋肉質な胴体をあっさりと両断した。
「……え?」
「なんと、これは!」
「これがアリウスの、全力なの?」
なんだかレミティアたちの声が聞こえた気もしたが、今はそこを気にしている余裕はない。
目の前の魔獣に意識を集中させて、スキルを細かく使用していく。
怪力、快速、怪力、怪力、鋼鉄、快速、快速、怪力。
常時使用も可能だが、そうすると魔力を無駄に消費してしまう。
必要な時に、必要なだけのスキル使用は、お爺ちゃんに叩き込まれたものだった。
『……こ、このガキ! ゴブリンウォーズ!』
上位ゴブリンの数が目に見えて少なくなってくると、クイーンが怒りの声と共に魔法を発動させた。
直後から、上位ゴブリンたちの動きが速くなり、力が強くなり、皮膚が硬くなる。
『これで終わりよ! あははははっ!!』
……余裕を浮かべているが、それで本当に勝てると思っているのか?
「舐められたものだな!」
俺はグッと剣を握りしめると、柔剣ではなく剛剣を発動させた。
「うおおおおっ!!」
相手の動きが速くなったとしても、力が強くなったとしても、皮膚が硬くなったとしても、剛剣一閃で変わることなく両断して見せた。
どうしてそれが分かったのかというと、進んだ先の通路の曲がり角、そこからものすごい殺気が放たれているのを感じ取ることができたからだ。
「……いるな」
「……はい」
戦闘職ではないレミティアですら感じ取ることができる殺気。それはつまり、この巣の主が存在していると考えて間違いないだろう。
ゴブリンナイト、ウォリアー、ハイモンクを従えることができるゴブリンの上位種。
「……これ、新人冒険者が受けちゃダメな依頼だろう」
殺気の主を視界に収めた俺は、思わずそう呟いてしまう。
「あいつは――ゴブリンクイーン!」
『あら? 誰が私の巣を荒らしているのかと思っていたら、女に子供じゃないの』
相手はゴブリン種の中でも最上位に位置するゴブリンクイーン。
しかもこの個体は、人語を介することができるほどに知能が高い。
ゴブリンナイトたちが出て来た時点で新人には手に負えないと思っていたが、クイーンとなればBランク、人語を介すとなればAランクに匹敵する実力を持っているはずだ。
「変な話だけど、俺たちが受けてよかったな、これ」
「……あの、アリウス? 今はそんなことを言っている場合じゃないのでは?」
俺が冷静に状況を見極めていると、レミティアからそんなツッコミを入れられてしまった。
『そっちの子供は面白いわね。どうかしら、私の子供になってみない?』
「あいにくと、俺は人間なんでね。魔獣の子供になろうとは思わないな」
『あら、残念ねぇ。美味しく食べられると思っていたのにねえ!』
――ガラガラ、ドンッ!
クイーンがそう叫ぶと、俺たちの背後からものすごい音が響き、レミティアたちが振り返る。
「そ、そんな!」
「閉じ込められただと!」
「人語を介すとは思っていたが、ここまで用意周到な罠があろうとは!」
レミティア、リディア、バズズさんが言葉を発する中、俺は剣を抜いてクイーンを睨みつける。
「要はお前を倒せばいいだけの話だろう?」
『賢い子だこと。本当に……本当に、残念だわああああっ!!』
ゴブリンクイーンが両手を広げると、その背後からナイト、ウォリアー、ハイモンクがぞろぞろと姿を現した。
「上位種があれほどに!」
「なんて数だ!」
リディアとバズズさんが驚きの声と共に剣を構える。
確かに、上位種が二桁も集まるとなれば、それは小規模のスタンピードだと言えなくはない。
それだけの規模の上位魔獣が、この狭い洞窟に集まっていたのだ。
……ちょっと待てよ? この依頼、ミスティが勧めてくれた依頼だし、もしかして――
『殺しなさい! 私の子供たち!』
『『『『ゴブゴブゴブゴブッ!!』』』』
上位ゴブリンたちが一斉に駆け出してくる。
レミティアは即座に身体強化魔法を発動させてくれた。
「バズズさんとリディアは、レミティアの護衛を頼む!」
「ア、アリウス殿は!?」
「俺がこいつらの相手をする!」
「自殺行為だ、アリウス殿!!」
「いけません、アリウス!!」
レミティアたちの制止を振り切り、俺は上位ゴブリンたちへ一直線に駆け出していく。
剣を横に構え、腰を捻りながら跳躍すると、そのまま回転斬りを放つ。
上位ゴブリンの首が紙切れのように斬り飛ばされていく。
着地と同時に腕をしならせながら剣を振るうと、首よりも太く、筋肉質な胴体をあっさりと両断した。
「……え?」
「なんと、これは!」
「これがアリウスの、全力なの?」
なんだかレミティアたちの声が聞こえた気もしたが、今はそこを気にしている余裕はない。
目の前の魔獣に意識を集中させて、スキルを細かく使用していく。
怪力、快速、怪力、怪力、鋼鉄、快速、快速、怪力。
常時使用も可能だが、そうすると魔力を無駄に消費してしまう。
必要な時に、必要なだけのスキル使用は、お爺ちゃんに叩き込まれたものだった。
『……こ、このガキ! ゴブリンウォーズ!』
上位ゴブリンの数が目に見えて少なくなってくると、クイーンが怒りの声と共に魔法を発動させた。
直後から、上位ゴブリンたちの動きが速くなり、力が強くなり、皮膚が硬くなる。
『これで終わりよ! あははははっ!!』
……余裕を浮かべているが、それで本当に勝てると思っているのか?
「舐められたものだな!」
俺はグッと剣を握りしめると、柔剣ではなく剛剣を発動させた。
「うおおおおっ!!」
相手の動きが速くなったとしても、力が強くなったとしても、皮膚が硬くなったとしても、剛剣一閃で変わることなく両断して見せた。
136
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
僕らが転生した理由 〜異世界転生した先は赤い地球〜神々に弄ばれた人間の物語
空 朱春
ファンタジー
僕(大夢)はこの日本で生まれ育った。
そしてこの日本で家族を失い、僕自身も失った。
「世の中の大半は凡人だ」
稀に凡人以下の人間がいる。それはいじめられている人間、つまり「僕のこと」だ。
妹一緒に両親の墓参りに行くと、雷に撃たれて死んだ。そして異世界転生をした。
ところが、ただ転生したわけではなかった。魂と肉体は別物。
肉体の持ち主(エーデル)と記憶を頼りに生きていくが、暴かれる嘘や真実たち。そして謎の赤い地球。
異世界での生活にも慣れ、初めての友達もできた。家族仲良くそれなりに楽しい第二の人生を過ごしていた。やっと「普通」になり、目標をにも色が付いた。
だか、どの世界も現実はそう甘くはない。
学校という地獄に行くことになってしまったのだから…
そして出会った人物は本当に人間なのだろうか?
これからエーデルの物語は始まる……
(異世界転生、チートのリアルな感情を描くハイファンタジー物語)
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
最弱職と村を追い出されましたが、突然勇者の能力が上書きされたのでスローライフを始めます
渡琉兎
ファンタジー
十五歳になりその者の能力指標となる職業ランクを確認した少年、スウェイン。
彼の職業ランクは最底辺のN、その中でもさらに最弱職と言われる荷物持ちだったことで、村人からも、友人からも、そして家族からも見放されてしまい、職業が判明してから三日後――村から追い出されてしまった。
職業ランクNは、ここラクスラインでは奴隷にも似た扱いを受けてしまうこともあり、何処かで一人のんびり暮らしたいと思っていたのだが、空腹に負けて森の中で倒れてしまう。
そんな時――突然の頭痛からスウェインの知り得ないスキルの情報や見たことのない映像が頭の中に流れ込んでくる。
目覚めたスウェインが自分の職業を確認すると――何故か最高の職業ランクXRの勇者になっていた!
勇者になってもスローライフを願うスウェインの、自由気ままな生活がスタートした!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる