29 / 46
第26話:三匹の上位種
しおりを挟む
「ゴブリンナイト、ウォリアー、ハイモンクだって?」
こいつらは群れを率いることの多い上位種だが、こいつらを従えている、さらに上の上位種がいるってことだ。
「レミティア様、身体強化魔法をお願いできますかな?」
「わ、分かったわ!」
俺が警戒を強めていると、後方からバズズさんとレミティアの声が聞こえてきた。
「フルブースト!」
レミティアがそう口にすると、俺たちの体に美しい純白の光が降り注いだ。
「これは……?」
「レミティア様の聖魔法、フルブーストです、アリウス殿!」
「私も前に出ます。レミティア様は防御魔法で自衛をお願いいたします」
「分かりました。皆さん、お気をつけて」
フルブーストによって身体強化されたとして、二人でゴブリンの上位種を三匹、一斉に相手取ることは難しい。
そのことに気づいていたのだろう、バズズさんも前に出てきた。
「レミティアの護衛は大丈夫なんですか?」
「問題ありませんぞ。レミティア様の防御魔法は一級品ですからな。とはいえ……」
そこで言葉を切ったバズズさんは、背中の大剣を抜き放つと、剣先をゴブリンウォリアーへ向けた。
「長い間で一人にするつもりはありません。ウォリアーは私が相手をいたしましょう」
「それでは私はハイモンクを」
「ってことは俺は、ゴブリンナイトだな」
それぞれが誰を相手にするかを決めたところで、俺たちは一斉に駆け出した。
ほぼ同時にゴブリン上位種たちも駆け出しており、彼我の距離は一瞬にして詰まった。
「うおおおおっ!」
俺が鋭く振り抜いた剣と、ゴブリンナイトの直剣がぶつかり合い、激しい金属音が洞窟内に響き渡る。
それも、こちらの戦闘だけではなく、同時にバズズさんとリディアも戦闘を開始したので、音の広がりは相当なものだ。
『ゴブ! ゴブゴブ! ゴブラアアアアッ!!』
だからといって、たかが音だ。目の前に迫ってくる直剣への集中力が欠けるようなものではない。
数合打ち合ったあと、俺は軽く後方へ飛び退き、着地と同時に再び前進。緩急をつけた攻撃を仕掛けていく。
『ゴブラアアッ! ゴブブ、ゴブラアアアアッ!』
ちっ、こちらの緩急をつけた攻撃にもついてくるのか、ゴブリンナイト!
「それなら、これでどうだ!」
『ゴ、ゴブリャ!?』
単純な剣術だけではゴブリンナイトとほぼ互角。それならスキルを多用すればいいだけの話だ。
普通はできないだろう。しかし、俺にはできるんだよな!
「快速」
俺は快速スキルを使って一気に前へ――出るわけではない。
大きく後方へ飛び退くと、そのまま壁に両足をつける。
『ゴブ?』
ゴブリンナイトは困惑気味に首を傾げている。
そうだろうな、俺の行動の意味なんて、お前には分からないだろう。
「怪力、飛行!」
足の筋肉を強化して壁を蹴りつけると同時に、飛行を発動させて超低空飛行で一気に接近する。
『ゴブラッ!?』
驚愕の表情を浮かべたゴブリンナイト。その顔を俺ははっきりと見ていた。
「はあっ!」
ゴブリンナイトが直剣を盾代わりにしようと腕を動かしたが、完全に遅れている。
俺は柔剣を用いて剣の動きを波打たせると、直剣を回避してゴブリンナイトの首へ剣身を滑り込ませた。
――ズバッ!
ゴブリンナイトの首が宙を舞うと、残された胴体から力が抜け、ゆっくりと後方へと倒れ込んでいった。
「よし、次だ!」
バズズさんかリディアの助太刀にと振り返ろうとした直後――
「――!?」
背筋が凍るほどの悪寒を感じ、俺は先の通路へ視線を向けた。
「…………レミティア!!」
「え?」
俺はレミティアの名前を叫ぶと同時に駆け出す。
レミティアは驚きの声を漏らしているが、名前を呼んだ理由を説明している暇はなかった。
――ゴウッ!
再び噴き出した炎が、レミティアを狙ってきた。
こいつらは群れを率いることの多い上位種だが、こいつらを従えている、さらに上の上位種がいるってことだ。
「レミティア様、身体強化魔法をお願いできますかな?」
「わ、分かったわ!」
俺が警戒を強めていると、後方からバズズさんとレミティアの声が聞こえてきた。
「フルブースト!」
レミティアがそう口にすると、俺たちの体に美しい純白の光が降り注いだ。
「これは……?」
「レミティア様の聖魔法、フルブーストです、アリウス殿!」
「私も前に出ます。レミティア様は防御魔法で自衛をお願いいたします」
「分かりました。皆さん、お気をつけて」
フルブーストによって身体強化されたとして、二人でゴブリンの上位種を三匹、一斉に相手取ることは難しい。
そのことに気づいていたのだろう、バズズさんも前に出てきた。
「レミティアの護衛は大丈夫なんですか?」
「問題ありませんぞ。レミティア様の防御魔法は一級品ですからな。とはいえ……」
そこで言葉を切ったバズズさんは、背中の大剣を抜き放つと、剣先をゴブリンウォリアーへ向けた。
「長い間で一人にするつもりはありません。ウォリアーは私が相手をいたしましょう」
「それでは私はハイモンクを」
「ってことは俺は、ゴブリンナイトだな」
それぞれが誰を相手にするかを決めたところで、俺たちは一斉に駆け出した。
ほぼ同時にゴブリン上位種たちも駆け出しており、彼我の距離は一瞬にして詰まった。
「うおおおおっ!」
俺が鋭く振り抜いた剣と、ゴブリンナイトの直剣がぶつかり合い、激しい金属音が洞窟内に響き渡る。
それも、こちらの戦闘だけではなく、同時にバズズさんとリディアも戦闘を開始したので、音の広がりは相当なものだ。
『ゴブ! ゴブゴブ! ゴブラアアアアッ!!』
だからといって、たかが音だ。目の前に迫ってくる直剣への集中力が欠けるようなものではない。
数合打ち合ったあと、俺は軽く後方へ飛び退き、着地と同時に再び前進。緩急をつけた攻撃を仕掛けていく。
『ゴブラアアッ! ゴブブ、ゴブラアアアアッ!』
ちっ、こちらの緩急をつけた攻撃にもついてくるのか、ゴブリンナイト!
「それなら、これでどうだ!」
『ゴ、ゴブリャ!?』
単純な剣術だけではゴブリンナイトとほぼ互角。それならスキルを多用すればいいだけの話だ。
普通はできないだろう。しかし、俺にはできるんだよな!
「快速」
俺は快速スキルを使って一気に前へ――出るわけではない。
大きく後方へ飛び退くと、そのまま壁に両足をつける。
『ゴブ?』
ゴブリンナイトは困惑気味に首を傾げている。
そうだろうな、俺の行動の意味なんて、お前には分からないだろう。
「怪力、飛行!」
足の筋肉を強化して壁を蹴りつけると同時に、飛行を発動させて超低空飛行で一気に接近する。
『ゴブラッ!?』
驚愕の表情を浮かべたゴブリンナイト。その顔を俺ははっきりと見ていた。
「はあっ!」
ゴブリンナイトが直剣を盾代わりにしようと腕を動かしたが、完全に遅れている。
俺は柔剣を用いて剣の動きを波打たせると、直剣を回避してゴブリンナイトの首へ剣身を滑り込ませた。
――ズバッ!
ゴブリンナイトの首が宙を舞うと、残された胴体から力が抜け、ゆっくりと後方へと倒れ込んでいった。
「よし、次だ!」
バズズさんかリディアの助太刀にと振り返ろうとした直後――
「――!?」
背筋が凍るほどの悪寒を感じ、俺は先の通路へ視線を向けた。
「…………レミティア!!」
「え?」
俺はレミティアの名前を叫ぶと同時に駆け出す。
レミティアは驚きの声を漏らしているが、名前を呼んだ理由を説明している暇はなかった。
――ゴウッ!
再び噴き出した炎が、レミティアを狙ってきた。
142
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
最弱職と村を追い出されましたが、突然勇者の能力が上書きされたのでスローライフを始めます
渡琉兎
ファンタジー
十五歳になりその者の能力指標となる職業ランクを確認した少年、スウェイン。
彼の職業ランクは最底辺のN、その中でもさらに最弱職と言われる荷物持ちだったことで、村人からも、友人からも、そして家族からも見放されてしまい、職業が判明してから三日後――村から追い出されてしまった。
職業ランクNは、ここラクスラインでは奴隷にも似た扱いを受けてしまうこともあり、何処かで一人のんびり暮らしたいと思っていたのだが、空腹に負けて森の中で倒れてしまう。
そんな時――突然の頭痛からスウェインの知り得ないスキルの情報や見たことのない映像が頭の中に流れ込んでくる。
目覚めたスウェインが自分の職業を確認すると――何故か最高の職業ランクXRの勇者になっていた!
勇者になってもスローライフを願うスウェインの、自由気ままな生活がスタートした!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる