不遇天職と不遇スキルは組み合わせると最強です! ~モノマネ士×定着で何にでもなれちゃいました~

渡琉兎

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第14話:新人冒険者

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「――いらっしゃいませ。冒険者への登録ですか?」

 受付嬢は定型文を口にしながらカウンターに書類を手際よく準備していく。

「登録はどなたが行いますか?」
「三人全員です」
「かしこまりました。では、こちらに名前、性別、天職とスキルを記入してください」

 渡された書類に目を通しながら、受付嬢の言葉を耳に入れていく。
 やはり来たか、天職とスキル。
 不遇天職のモノマネ士と記入するだけでも冒険者になるということを疑われそうだが、さらにスキルが天職に合っていない定着である。
 とはいえ、嘘はいけない。俺が素直に記入をして書類を返すと、案の定というか、受付嬢は書類と俺の顔を何度も往復させていた。

「……あの、恐れ入りますが、マジですか?」

 おぉ、そうか。取り繕うことすらできないくらいに衝撃を受けてしまったのか。

「はい、マジです」
「……そうですか、分かりました」

 ……あ、あれ? なんだろう、ものすごく冷めた視線を向けられてしまったのだが。
 俺はレミティアとリディアに視線を向けたのだが、二人も何が起きているのか分からないようだ。
 とはいえ受付嬢はそれ以降、特に何かを指摘することはなく淡々と作業を進めていく。
 冒険者としての説明も行い、最終的には冒険者カードまで発行してくれたのだ――ただし、レミティアとリディアの二人分だけ。

「……あの、俺のは?」
「アリウス様に限り、冒険者になるために必要な実力を有しているのか、模擬戦を行い確認が必要と判断されました」
「……は?」
「なので、あちらの階段から地下闘技場へ移動していただきますようお願いいたします」

 ……なるほど、そういうことか。
 俺がモノマネ士で、しかもスキルが定着ということで冷やかしだと思われたのかもしれない。

「あなた! アリウスに失礼ではないですか!」
「そうです! アリウス様の実力は私たちが保証します!」
「申し訳ございませんが、これが規則です。冒険者ギルドには多くの人が登録をしておりますが、誰でも絶対になれるというわけではございません。魔獣と相対して死んでしまうかもしれない人物を冒険者に登録することを、私たち組織は望んでおりません」

 二人が抗議の声をあげたものの、受付嬢は頑として受け入れてくれない。

「……まあ、いいんじゃないか?」
「アリウス、いいのですか?」

 俺が二人を止めると、レミティアは心配そうにこちらへ振り返る。
 しかし、むしろ俺はこれをチャンスだと思っている。
 ここで実力を示すことができれば、冒険者ギルド側は登録を渋ることができなくなるはずだ。

「……よほどの自信があるのですね」
「まあな」

 俺の言葉を挑発と捉えたのか、受付嬢の視線が少しだけ厳しいものになる。
 それを真正面から受け止めると、何かを諦めたのか、ため息を吐きながら受付嬢は立ち上がった。

「分かりました。私がご案内いたします」
「分かった、ありがとうございます」
「いいえ、この目でしっかりと確かめたいと思いますので」

 そう口にした受付嬢から、先ほどまでは感じることができなかった殺気にも似た気配が漂い始めた。
 ……なるほど、この人は受付嬢でありながらも、相当な実力者のようだ。
 ただ、お爺ちゃんほどの迫力は感じないな。
 実力的には……リディアよりは強いといったところだろう。
 相手の実力を見極めるのも修行の内だとお爺ちゃんに言われていたので、ナリゴサ村にいる頃からずっと続けていた。
 まあ、往来が激しいわけではないので数は限られていたけど、それなりの精度を持っていると思う。
 しかし、バズズさんだけはどうもはっきりと測ることができなかったので、きっとお爺ちゃんに勝るとも劣らない実力者であるはずだ。
 前を進む受付嬢の背中を見ながら歩き出すと、何故かレミティアとリディアもついてきた。

「一緒に来るのか?」
「もちろんです!」
「アリウス様、やってしまってください!」
「俺が敵う相手ならいいんだけどな」

 最初は俺だけに向かわせるつもりだったはずだし、受付嬢が自ら相手をするとは思えない。
 彼女以上の実力者と模擬戦を行うとなれば、話は変わってきてしまう。
 しかし、地下闘技場に下りてみると、俺の心配は杞憂に終わってしまった。

「なんだぁ? 今日の身の程知らずはそっちのガキどもかぁ?」
「いいえ、そちらの男性です」
「んだよ。野郎だけかよ、つまんねぇなぁ」

 長槍を肩に担いだ態度の悪い金髪の男性が、俺を睨みつけながら舞台に唾を吐き掛ける。
 実力的には受付嬢よりも弱く、さらに言えばリディアにも及ばないだろう。
 こんな相手が実力を測るための相手なのかと、俺はため息を吐いてしまった。

「んだてめぇ、舐めてんのかこらあっ!」
「いいや、そんなことはない。時間がもったいないからさっさと始めてしまおう」

 俺はそう口にしながら壁に立て掛けられていた木剣を手に取り、舞台に上がる。
 こちらの態度が気に食わなかったのだろう、金髪の男性は目をぎらつかせながら槍を両手で握り構えた。

「ぶっ殺してやる!」
「こう言っているが、俺も本気でやっていいのか?」
「構いません。彼に勝てないようでは、冒険者として活動させるわけには参りませんので」
「そうか……分かった」
「かかかっ! 後悔しても遅いからなぁ?」

 あの穂先、刃が潰されていないみたいだが、いいんだな。
 相手が俺でよかった。他の奴なら怪我では済まなかったかもしれない。
 まあ、今回に限って言えば、金髪やろうの方が怪我をする可能性が高いんだけど。

「それでは、私が審判を行いましょう。模擬戦――始め!」

 受付嬢の合図と共に男性が地面を蹴ると、目の前に穂先が迫ってくる。
 なんらかのスキルを発動させたのだろう、彼の速度を目で追うにはそれなりの実力が必要になってくるはずだ。
 しかし、俺にはスキルを使わなくとも、その動きがはっきりと見えていた。
 突き出された穂先を木剣で素早く叩き落すと、返す刃を振り上げて男性の顎に一撃を叩き込む。
 きっと回避してくれるだろう、そこからもう少しだけ楽しめるはずだ。

「ぐべあっ!?」
「は?」

 そう思っていたのだが、切り上げた木剣は男性の顎を確実に捉え、そのまま上半身がグンと伸びると、そのままの勢いで後方へと傾いていき、仰向けに倒れてしまった。

「……終わりか? 嘘だろ?」
「……しょ、勝者、アリウス」

 あまりにも呆気なく終わってしまった模擬戦は、ポカンとした表情の受付嬢の合図によって幕を下ろしたのだった。
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