上 下
49 / 50

第49話:新しい装備

しおりを挟む
「よーし! これでどうだ!」
「いいね! 買った!」

 ディーの買い物はクレアとは違い、太一たちに確認を取ることはなく、完全にダジール任せで選んできた装備を値段を見ることなく購入していた。

「ディーさん! 値段を確認してください!」
「大丈夫だって! 親父、いくらだ?」
「全部で一〇万ジェンだ!」
「「「じゅ、一〇万!?」」」
「ちょうどいい値段じゃないか!」
「「「これがいい値段なの!?」」」

 まさかの金額に驚いていたのは太一たちだけで、ディーはいい値段だと言って即決してしまう。
 さすがに申し訳ないと思い手持ちからいくらか出そうと太一が財布を出そうとしたのだが、それをディーに止められてしまった。

「俺が出すって言っただろう?」
「いやでも、さすがに金額が……」
「これくらいなら問題ない。何せ俺はBランク冒険者だぜ?」
「こいつらの稼ぎなら問題ないだろう」
「ダジールさんがそれを言っちゃうのか?」
「ディーさんもダジールさんも、すごいですね」

 困惑しているのは太一たちだけで、やり取りをしている当人たちはまったく気にしていない。
 となればこれ以上何を言っても意味がないと、三人は素直に奢られることにした。

「っーわけで、早速着替えて来い、三人とも」
「あっちに試着室があるぞ」
「「「ありがとうございます! ディーさん! ダジールさん!」」」

 そうして三人は試着室に移動すると、新しい装備に身を包んで出てきた。

「おぉーっ! 似合ってるじゃないか!」
「うむ、デビルベアとの一戦を終えて、表情も凛々しくなっているみたいだしな!」

 ディーとダジールが手放しで褒めており、三人は気恥ずかしくなってしまう。

「や、止めてくださいよ、二人とも」
「こんないい装備、俺たちに必要か?」
「着せられてる感が強いよね」
「「そうか?」」
「「「そうですよ!」」」

 全然異なる三人と二人の意見に、太一たちは強い口調で似合っていないと主張する。
 とはいえすでに支払いも済ませており、今後はこの装備が似合うと自分たちでも言えるような冒険者になる必要が出てきた。

「これからもっと頑張ろうな、勇人、公太」
「おうよ! まずは目指せEランク!」
「早く上がれたらいいね!」
「ん? なんだ、聞いていないのか?」

 目標を見つけた太一たちがやる気を見せていると、ディーが首を傾げながらそう口にする。

「何を聞いていないんですか?」
「お前たち今日からEランクだぞ?」
「「「……はい?」」」
「そうか! デビルベア討伐の功が出たということだな?」
「「「……デビルベア討伐の功?」」」

 ディーもダジールも何を言っているのかと、今度は太一たちが首を傾げる。
 今回の薬草採集は結局のところ、デビルベアの登場により失敗に終わっている。
 そして、デビルベア討伐とダジールは言っていたが、太一たちがやったのは足止めであり、実際に討伐したのはライフキーパーズだ。
 功が与えられるというのであれば、それはライフキーパーズにだけ与えられるものだと思っていた。

「俺たち、足止めしかしてませんけど?」
「それが十分でかい功になるんだよ」
「そうなのか? なんか納得できないんだけど?」
「評価するのは自分たちではなく、周りだということだな」
「でも、これでランクが上がっちゃっていいのかな?」
「「いいんだよ! 謙遜もし過ぎると面倒くさいぞ!」」
「「「……えぇ~?」」」

 今までの噂に関しては、客観的に見ればそう言われてもおかしくはないと、どこかで納得できる部分があったが、Eランク昇格やデビルベア討伐の功に関しては、他の人の功を奪っているのではないかという思いがあり、すぐに納得できるものではなかった。
 しかし、ダジールが口にした評価は周りがするものだという言葉にも一理あると思っており、それが過剰評価ではないかと感じている。

「評価してもらえるのは嬉しいんだけどなぁ……」
「Eランクに上がるのはなぁ……」
「もう少しちゃんと頑張りたいよねぇ……」
「「ちゃんと頑張っているだろうが!」」
「「「そのつもりなんですけど、今回はなぁ~」」」

 なかなか納得してもらえない三人を見て、ディーとダジールは顔を見合わせると、大きくため息をついた。

「こりゃダメだ」
「だがまあ、ギルドが昇格させるというのなら、昇格だろうな」
「それ、拒否はできないんですかね?」
「「できないな」」
「ですよね~」

 太一たちのEランク昇格は確定であり、それを覆すことは難しい。
 そもそも、冒険者たちは早く上のランクになりたいと日々努力しており、まさか昇格を拒否したいと言われているとは、ギルド側も夢にも思っていないだろう。
 だが、昇格は昇格である。
 これから太一たちは一つ上のランクの依頼まで受けられるようになり、選択の幅が広がるのだ。

「……分かりました」
「……仕方ないよな?」
「……装備も変わったし、頑張ろう!」
「コウタの坊やの言う通りだ」
「俺たちもしっかり指導するからよ! よろしく頼むぜ!」
「「「はーい!」」」

 こうして太一たちは新たな装備を手にし、今日は宿に戻っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

処理中です...