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第49話:新しい装備
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「よーし! これでどうだ!」
「いいね! 買った!」
ディーの買い物はクレアとは違い、太一たちに確認を取ることはなく、完全にダジール任せで選んできた装備を値段を見ることなく購入していた。
「ディーさん! 値段を確認してください!」
「大丈夫だって! 親父、いくらだ?」
「全部で一〇万ジェンだ!」
「「「じゅ、一〇万!?」」」
「ちょうどいい値段じゃないか!」
「「「これがいい値段なの!?」」」
まさかの金額に驚いていたのは太一たちだけで、ディーはいい値段だと言って即決してしまう。
さすがに申し訳ないと思い手持ちからいくらか出そうと太一が財布を出そうとしたのだが、それをディーに止められてしまった。
「俺が出すって言っただろう?」
「いやでも、さすがに金額が……」
「これくらいなら問題ない。何せ俺はBランク冒険者だぜ?」
「こいつらの稼ぎなら問題ないだろう」
「ダジールさんがそれを言っちゃうのか?」
「ディーさんもダジールさんも、すごいですね」
困惑しているのは太一たちだけで、やり取りをしている当人たちはまったく気にしていない。
となればこれ以上何を言っても意味がないと、三人は素直に奢られることにした。
「っーわけで、早速着替えて来い、三人とも」
「あっちに試着室があるぞ」
「「「ありがとうございます! ディーさん! ダジールさん!」」」
そうして三人は試着室に移動すると、新しい装備に身を包んで出てきた。
「おぉーっ! 似合ってるじゃないか!」
「うむ、デビルベアとの一戦を終えて、表情も凛々しくなっているみたいだしな!」
ディーとダジールが手放しで褒めており、三人は気恥ずかしくなってしまう。
「や、止めてくださいよ、二人とも」
「こんないい装備、俺たちに必要か?」
「着せられてる感が強いよね」
「「そうか?」」
「「「そうですよ!」」」
全然異なる三人と二人の意見に、太一たちは強い口調で似合っていないと主張する。
とはいえすでに支払いも済ませており、今後はこの装備が似合うと自分たちでも言えるような冒険者になる必要が出てきた。
「これからもっと頑張ろうな、勇人、公太」
「おうよ! まずは目指せEランク!」
「早く上がれたらいいね!」
「ん? なんだ、聞いていないのか?」
目標を見つけた太一たちがやる気を見せていると、ディーが首を傾げながらそう口にする。
「何を聞いていないんですか?」
「お前たち今日からEランクだぞ?」
「「「……はい?」」」
「そうか! デビルベア討伐の功が出たということだな?」
「「「……デビルベア討伐の功?」」」
ディーもダジールも何を言っているのかと、今度は太一たちが首を傾げる。
今回の薬草採集は結局のところ、デビルベアの登場により失敗に終わっている。
そして、デビルベア討伐とダジールは言っていたが、太一たちがやったのは足止めであり、実際に討伐したのはライフキーパーズだ。
功が与えられるというのであれば、それはライフキーパーズにだけ与えられるものだと思っていた。
「俺たち、足止めしかしてませんけど?」
「それが十分でかい功になるんだよ」
「そうなのか? なんか納得できないんだけど?」
「評価するのは自分たちではなく、周りだということだな」
「でも、これでランクが上がっちゃっていいのかな?」
「「いいんだよ! 謙遜もし過ぎると面倒くさいぞ!」」
「「「……えぇ~?」」」
今までの噂に関しては、客観的に見ればそう言われてもおかしくはないと、どこかで納得できる部分があったが、Eランク昇格やデビルベア討伐の功に関しては、他の人の功を奪っているのではないかという思いがあり、すぐに納得できるものではなかった。
しかし、ダジールが口にした評価は周りがするものだという言葉にも一理あると思っており、それが過剰評価ではないかと感じている。
「評価してもらえるのは嬉しいんだけどなぁ……」
「Eランクに上がるのはなぁ……」
「もう少しちゃんと頑張りたいよねぇ……」
「「ちゃんと頑張っているだろうが!」」
「「「そのつもりなんですけど、今回はなぁ~」」」
なかなか納得してもらえない三人を見て、ディーとダジールは顔を見合わせると、大きくため息をついた。
「こりゃダメだ」
「だがまあ、ギルドが昇格させるというのなら、昇格だろうな」
「それ、拒否はできないんですかね?」
「「できないな」」
「ですよね~」
太一たちのEランク昇格は確定であり、それを覆すことは難しい。
そもそも、冒険者たちは早く上のランクになりたいと日々努力しており、まさか昇格を拒否したいと言われているとは、ギルド側も夢にも思っていないだろう。
だが、昇格は昇格である。
これから太一たちは一つ上のランクの依頼まで受けられるようになり、選択の幅が広がるのだ。
「……分かりました」
「……仕方ないよな?」
「……装備も変わったし、頑張ろう!」
「コウタの坊やの言う通りだ」
「俺たちもしっかり指導するからよ! よろしく頼むぜ!」
「「「はーい!」」」
こうして太一たちは新たな装備を手にし、今日は宿に戻っていった。
「いいね! 買った!」
ディーの買い物はクレアとは違い、太一たちに確認を取ることはなく、完全にダジール任せで選んできた装備を値段を見ることなく購入していた。
「ディーさん! 値段を確認してください!」
「大丈夫だって! 親父、いくらだ?」
「全部で一〇万ジェンだ!」
「「「じゅ、一〇万!?」」」
「ちょうどいい値段じゃないか!」
「「「これがいい値段なの!?」」」
まさかの金額に驚いていたのは太一たちだけで、ディーはいい値段だと言って即決してしまう。
さすがに申し訳ないと思い手持ちからいくらか出そうと太一が財布を出そうとしたのだが、それをディーに止められてしまった。
「俺が出すって言っただろう?」
「いやでも、さすがに金額が……」
「これくらいなら問題ない。何せ俺はBランク冒険者だぜ?」
「こいつらの稼ぎなら問題ないだろう」
「ダジールさんがそれを言っちゃうのか?」
「ディーさんもダジールさんも、すごいですね」
困惑しているのは太一たちだけで、やり取りをしている当人たちはまったく気にしていない。
となればこれ以上何を言っても意味がないと、三人は素直に奢られることにした。
「っーわけで、早速着替えて来い、三人とも」
「あっちに試着室があるぞ」
「「「ありがとうございます! ディーさん! ダジールさん!」」」
そうして三人は試着室に移動すると、新しい装備に身を包んで出てきた。
「おぉーっ! 似合ってるじゃないか!」
「うむ、デビルベアとの一戦を終えて、表情も凛々しくなっているみたいだしな!」
ディーとダジールが手放しで褒めており、三人は気恥ずかしくなってしまう。
「や、止めてくださいよ、二人とも」
「こんないい装備、俺たちに必要か?」
「着せられてる感が強いよね」
「「そうか?」」
「「「そうですよ!」」」
全然異なる三人と二人の意見に、太一たちは強い口調で似合っていないと主張する。
とはいえすでに支払いも済ませており、今後はこの装備が似合うと自分たちでも言えるような冒険者になる必要が出てきた。
「これからもっと頑張ろうな、勇人、公太」
「おうよ! まずは目指せEランク!」
「早く上がれたらいいね!」
「ん? なんだ、聞いていないのか?」
目標を見つけた太一たちがやる気を見せていると、ディーが首を傾げながらそう口にする。
「何を聞いていないんですか?」
「お前たち今日からEランクだぞ?」
「「「……はい?」」」
「そうか! デビルベア討伐の功が出たということだな?」
「「「……デビルベア討伐の功?」」」
ディーもダジールも何を言っているのかと、今度は太一たちが首を傾げる。
今回の薬草採集は結局のところ、デビルベアの登場により失敗に終わっている。
そして、デビルベア討伐とダジールは言っていたが、太一たちがやったのは足止めであり、実際に討伐したのはライフキーパーズだ。
功が与えられるというのであれば、それはライフキーパーズにだけ与えられるものだと思っていた。
「俺たち、足止めしかしてませんけど?」
「それが十分でかい功になるんだよ」
「そうなのか? なんか納得できないんだけど?」
「評価するのは自分たちではなく、周りだということだな」
「でも、これでランクが上がっちゃっていいのかな?」
「「いいんだよ! 謙遜もし過ぎると面倒くさいぞ!」」
「「「……えぇ~?」」」
今までの噂に関しては、客観的に見ればそう言われてもおかしくはないと、どこかで納得できる部分があったが、Eランク昇格やデビルベア討伐の功に関しては、他の人の功を奪っているのではないかという思いがあり、すぐに納得できるものではなかった。
しかし、ダジールが口にした評価は周りがするものだという言葉にも一理あると思っており、それが過剰評価ではないかと感じている。
「評価してもらえるのは嬉しいんだけどなぁ……」
「Eランクに上がるのはなぁ……」
「もう少しちゃんと頑張りたいよねぇ……」
「「ちゃんと頑張っているだろうが!」」
「「「そのつもりなんですけど、今回はなぁ~」」」
なかなか納得してもらえない三人を見て、ディーとダジールは顔を見合わせると、大きくため息をついた。
「こりゃダメだ」
「だがまあ、ギルドが昇格させるというのなら、昇格だろうな」
「それ、拒否はできないんですかね?」
「「できないな」」
「ですよね~」
太一たちのEランク昇格は確定であり、それを覆すことは難しい。
そもそも、冒険者たちは早く上のランクになりたいと日々努力しており、まさか昇格を拒否したいと言われているとは、ギルド側も夢にも思っていないだろう。
だが、昇格は昇格である。
これから太一たちは一つ上のランクの依頼まで受けられるようになり、選択の幅が広がるのだ。
「……分かりました」
「……仕方ないよな?」
「……装備も変わったし、頑張ろう!」
「コウタの坊やの言う通りだ」
「俺たちもしっかり指導するからよ! よろしく頼むぜ!」
「「「はーい!」」」
こうして太一たちは新たな装備を手にし、今日は宿に戻っていった。
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