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第47話:指導方針
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「まずはコウタだが、俺が指導をしよう」
「ディーさん自ら、僕の指導に!?」
最初に口にされたのは公太への指導だった。
「何せコウタが一番魔獣と戦う機会が多くなりそうだからな、生き残るすべを叩きこんでおきたい」
「……生き残る、すべですか」
生き残ると聞いた公太は不安そうな表情を浮かべる。
「おっと、そんな深刻にならないでくれよ? 話を聞いた限り、コウタは大盾で攻撃を防ぎ、ユウトがかく乱し、タイチが作った罠のところへ誘導、この型が基本だと思っていいんだろう?」
「あの時はとっさの判断だったのでなんとも言えませんが、そうなるかと思います」
「なら、コウタが自ら攻撃をする機会はそうそう訪れないだろう。今回の腰に提げていた剣は抜かなかったんだろう?」
そう口にしたディーは、公太が腰に提げている新品同様の剣を指差した。
「はい、抜いていません」
「それでいいんだ」
「……いいんですか?」
「魔獣ってのは、傷を与えてきた相手を執拗に追いかけてくる習性がある。もしもコウタがデビルベアを剣で傷つけていたら、間違いなくユウトではなくコウタを狙っていただろうな」
ディーの説明を聞き、勇人と公太はゴクリと唾を飲み込んだ。
デビルベアの足止めをしていた時、勇人はナイフを使って右足に傷を負わせていた。それがあったからこそ、公太が吹き飛ばされた時も彼ではなく勇人を追い掛けてきた。
もしも公太が剣を抜いていたら、もしも勇人がナイフで傷をつけていなければ、もしかすると公太はこの場にいなかったかもしれない。
「……勇人君! 本当にありがとう!」
「……公太も頑張ったな! ありがとう!」
そして、二人はお互いに抱き合って生きていることを喜んだ。
「話が逸れちまったが、俺はコウタに大盾を使った生き残るすべを叩きこむ。戦うことが全てじゃねぇからな!」
「分かりました! よろしくお願いします!」
公太が頭を下げると、続けてディーは勇人に視線を移した。
「んで、ユウトにはリッツが指導につく」
「よろしくねー」
「よろしくっす! ……ってことは、リッツさんもかく乱とかをする役目っすか?」
思わず先輩後輩の感じで話し出した勇人を見て、リッツは笑いながら手を左右に振った。
「僕にまでそんな口調はいらないってー。ユウト君たちの方が年上だろー?」
「いや、でもなぁ……」
「僕がいいって言ってるんだから、いいんだよー」
「……分かった、ありがとな!」
気持ちの切り替えが早いのは勇人のいいところだ。
「それと、僕が教えるのはさっきユウト君が言ったようにかく乱に関してだよ。あと、余裕があれば斥候としての動き方も教えたいと思っているよ」
「斥候?」
「実は、カイナに斥候としての動き方を教えたのが僕なんだー」
「マジかよ! すげぇな、リッツは」
「ふふーん! これでもBランク冒険者だからねー!」
腰に手を当てて胸を張るリッツを見て、パーティメンバーは苦笑いを浮かべていた。
「こんな軽い性格だが、実力は確かだ。教え方もしっかりしているし、ちゃんと学べばユウトも一流の斥候役になれるぜ」
「ディーは一言多いんだよなー」
「事実だろうが」
「事実よね」
「事実だわ」
「……みんな酷いなー! あははー!」
全員から軽い性格だと暴露されたリッツだったが、それでも彼は笑って済ませており、太一たちも同じ思いを抱いていた。
「最後にタイチだが、お前にはタニアとミリーがつく」
「えっ? 二人もついてくれるんですか?」
「話を聞く限り、魔獣と相対する時はタイチの動きが肝になりそうだからな、動き方の指導をタニアが、罠に使えそうなものの指導をミリーが行う」
「よろしくね、タイチ君!」
「今度は漏れがないよう、気をつけるわね」
ライフキーパーズでのタニアの役目は前衛もしくは中衛、時には斥候役を務めたりと、多岐にわたっている。
その分、多くの動きを経験しており、罠を設置するにあたりいい場所の見極め方などを指導することになる。
一方でミリーは魔導師なのだが、薬草採集講座の時にも見せたが薬草だけでなく植物に対する知識も豊富だ。
そこから罠を作る材料になりそうなものを指導していく。
「……正直、ギルドに新人たちが駆け込んできて三人の話を聞いた時は血の気が引いたよ。俺たちのせいでお前たちが死んじまうと思ったからな」
ふと、ディーが真剣な面持ちでそう口にし始めた。
「迷い人に限らず、俺たちは困っていそうな奴らには積極的に声を掛けてきたが、それが全部いい方向に転んだとも言い切れない。だから今回も……って思っちまったが、お前たちは生き残ってくれた。むしろ、他の新人たちを守ってくれたんだ。本当にありがとな」
そこまで言い切ると快活な笑みを浮かべ、最後にこう締めくくった。
「指導は厳しくする部分も出てくるが、ついてこられるか?」
「「「ついていきます!」」」
「はは! 即答かよ! それじゃあお前たち、明日からみっちりしごくから、覚悟しろよ!」
「「「はい! よろしくお願いします!」」」
こうして太一たちは、ライフキーパーズに直接指導してもらえることになったのだった。
「ディーさん自ら、僕の指導に!?」
最初に口にされたのは公太への指導だった。
「何せコウタが一番魔獣と戦う機会が多くなりそうだからな、生き残るすべを叩きこんでおきたい」
「……生き残る、すべですか」
生き残ると聞いた公太は不安そうな表情を浮かべる。
「おっと、そんな深刻にならないでくれよ? 話を聞いた限り、コウタは大盾で攻撃を防ぎ、ユウトがかく乱し、タイチが作った罠のところへ誘導、この型が基本だと思っていいんだろう?」
「あの時はとっさの判断だったのでなんとも言えませんが、そうなるかと思います」
「なら、コウタが自ら攻撃をする機会はそうそう訪れないだろう。今回の腰に提げていた剣は抜かなかったんだろう?」
そう口にしたディーは、公太が腰に提げている新品同様の剣を指差した。
「はい、抜いていません」
「それでいいんだ」
「……いいんですか?」
「魔獣ってのは、傷を与えてきた相手を執拗に追いかけてくる習性がある。もしもコウタがデビルベアを剣で傷つけていたら、間違いなくユウトではなくコウタを狙っていただろうな」
ディーの説明を聞き、勇人と公太はゴクリと唾を飲み込んだ。
デビルベアの足止めをしていた時、勇人はナイフを使って右足に傷を負わせていた。それがあったからこそ、公太が吹き飛ばされた時も彼ではなく勇人を追い掛けてきた。
もしも公太が剣を抜いていたら、もしも勇人がナイフで傷をつけていなければ、もしかすると公太はこの場にいなかったかもしれない。
「……勇人君! 本当にありがとう!」
「……公太も頑張ったな! ありがとう!」
そして、二人はお互いに抱き合って生きていることを喜んだ。
「話が逸れちまったが、俺はコウタに大盾を使った生き残るすべを叩きこむ。戦うことが全てじゃねぇからな!」
「分かりました! よろしくお願いします!」
公太が頭を下げると、続けてディーは勇人に視線を移した。
「んで、ユウトにはリッツが指導につく」
「よろしくねー」
「よろしくっす! ……ってことは、リッツさんもかく乱とかをする役目っすか?」
思わず先輩後輩の感じで話し出した勇人を見て、リッツは笑いながら手を左右に振った。
「僕にまでそんな口調はいらないってー。ユウト君たちの方が年上だろー?」
「いや、でもなぁ……」
「僕がいいって言ってるんだから、いいんだよー」
「……分かった、ありがとな!」
気持ちの切り替えが早いのは勇人のいいところだ。
「それと、僕が教えるのはさっきユウト君が言ったようにかく乱に関してだよ。あと、余裕があれば斥候としての動き方も教えたいと思っているよ」
「斥候?」
「実は、カイナに斥候としての動き方を教えたのが僕なんだー」
「マジかよ! すげぇな、リッツは」
「ふふーん! これでもBランク冒険者だからねー!」
腰に手を当てて胸を張るリッツを見て、パーティメンバーは苦笑いを浮かべていた。
「こんな軽い性格だが、実力は確かだ。教え方もしっかりしているし、ちゃんと学べばユウトも一流の斥候役になれるぜ」
「ディーは一言多いんだよなー」
「事実だろうが」
「事実よね」
「事実だわ」
「……みんな酷いなー! あははー!」
全員から軽い性格だと暴露されたリッツだったが、それでも彼は笑って済ませており、太一たちも同じ思いを抱いていた。
「最後にタイチだが、お前にはタニアとミリーがつく」
「えっ? 二人もついてくれるんですか?」
「話を聞く限り、魔獣と相対する時はタイチの動きが肝になりそうだからな、動き方の指導をタニアが、罠に使えそうなものの指導をミリーが行う」
「よろしくね、タイチ君!」
「今度は漏れがないよう、気をつけるわね」
ライフキーパーズでのタニアの役目は前衛もしくは中衛、時には斥候役を務めたりと、多岐にわたっている。
その分、多くの動きを経験しており、罠を設置するにあたりいい場所の見極め方などを指導することになる。
一方でミリーは魔導師なのだが、薬草採集講座の時にも見せたが薬草だけでなく植物に対する知識も豊富だ。
そこから罠を作る材料になりそうなものを指導していく。
「……正直、ギルドに新人たちが駆け込んできて三人の話を聞いた時は血の気が引いたよ。俺たちのせいでお前たちが死んじまうと思ったからな」
ふと、ディーが真剣な面持ちでそう口にし始めた。
「迷い人に限らず、俺たちは困っていそうな奴らには積極的に声を掛けてきたが、それが全部いい方向に転んだとも言い切れない。だから今回も……って思っちまったが、お前たちは生き残ってくれた。むしろ、他の新人たちを守ってくれたんだ。本当にありがとな」
そこまで言い切ると快活な笑みを浮かべ、最後にこう締めくくった。
「指導は厳しくする部分も出てくるが、ついてこられるか?」
「「「ついていきます!」」」
「はは! 即答かよ! それじゃあお前たち、明日からみっちりしごくから、覚悟しろよ!」
「「「はい! よろしくお願いします!」」」
こうして太一たちは、ライフキーパーズに直接指導してもらえることになったのだった。
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