異世界に行ったら【いのちだいじに】な行動を心がけてみた

渡琉兎

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第32話:本当の薬草採集講座

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「見た感じだと、スイナ草については教えてもらったのかしら?」
「下級ポーションの素材になるということは教えてもらいました!」
「でもまだ採集のやり方を教わっていません!」
「カイナさんはボンッて抜いて終わりだと言っていました!」
「ちょっと、コウタ君!」

 太一、勇人、公太と答えていくと、最後にカイナがストップをかけたが時すでに遅かった。

「……カ~イ~ナ~?」
「えっと、あの、その、私はそうやって採集をしておりましてですね、はははー!」
「……まったく。それだと群生地とはいえ次が生えてこなくなる可能性があるから、根っこまで取る場合は必要な時だけで少量だと言われているでしょう」
「えっ? そうなんですか?」
「……まさか知らなかったとか言わないわよね?」
「あ、あは、あはは~」

 ミリーがジト目を向けると、カイナは視線を逸らせながら空笑いを浮かべた。

「……三人はしっかりと根っこを残して採集をしてちょうだいね」
「「「分かりました!」」」
「でも、カイナとの会話であったから分かるかもしれないけど、根っこが必要な時もあります。というのも、根っこにも薬効があるからです」

 ミリーの口調が先生っぽくなってきたところで、太一が手をあげた。

「はい、タイチ君」
「それは中級ポーションとか、別のポーションを作る時ってことですか?」
「その通り。もっと詳しく伝えると、解毒ポーションに必要になるわ」
「うげー、毒とかあるのかよ」
「まあ、ファンタジーの世界ではよくあるんじゃないかな?」
「っていうか、日本にも毒はあっただろうが」

 解毒と聞いて勇人が嫌な顔をすると、公太と太一がそれはあるだろうと声を掛けた。

「下級ポーションのためにスイナ草を採集していて根っこが残っていると、調合が上手くいかなくなってしまうので、気をつけなければいけないの」
「それじゃあ、もしも根っこまで採ってしまったら、そのことを提出の時に伝えた方がいいってことですか?」
「その通りよ。もしくは、事前に分けて置いて提出の時に区別できればベストね」
「確かに! それだったら冒険者ギルドの手間が省けるな!」
「そうは言うけど勇人君、最初から根っこを採らないようにしたらいいんじゃないの?」
「あー……それもそうか」

 勇人が納得したように頷くと、ミリーは太一たちからカイナへ視線を向ける。

「カイナ、今日はどの素材を中心に採集をするつもりだったのかしら?」
「……スイナ草です」
「スイナ草を使ってできるポーションの種類は?」

 太一たちへの講座のはずが、気づけばカイナにまで授業の手が伸びている。
 そしてカイナも疑問に思うことなく、ミリーの質問に素直に答えていた。

「えっと……に、二種類?」
「三種類よ。全く、これも分からなかったの?」
「うぐっ!? ……わ、忘れていただけですよ~」
「教える立場の人が忘れていただけだなんて、よく言えるわねぇ?」
「…………すみませんでした」
「よろしい」

 カイナには薬草採集講座というよりも、先輩冒険者としての心構えを指導しているように太一には見えていた。

「下級ポーションと解毒ポーション、三つ目が耐熱ポーションよ」

 冒険者は様々な場所、環境の中で活動することが多く、その中には高熱になるような場所もある。
 耐熱だけではなく耐寒に特化したものもあり、様々な耐性をつけるポーションが存在していた。

「ディルガイド付近には耐熱ポーションが必要になるような場所はないから需要はないけど、場所によっては根っこありでの採集を必要とする時もあるから、何を必要としているかはきちんと確認が必要になるの」
「それじゃあ俺たちも気をつけないとだな」
「今回だと、引率のカイナさんに確認が必要だったってことか?」
「そのカイナさんが分かっていない時はどうしたらいいんですか?」
「ぐはっ!? ……な、何気にコウタ君の一言が、地味にきついわ~」

 悪気はないのだが、公太の言葉が一番カイナの胸に刺さっていた。

「もしも引率者が何も分かっていない場合は、面倒だと思っても一度ギルドに引き返して、きちんと依頼内容を確認する方がいいわね。まあ、大方今回は常時依頼ってことで引き受けたんだと思うけど、引率者がこれじゃあねぇ?」

 ミリーからの再びのジト目に、今回は視線を逸らせるのではなく大きく肩を落として俯いてしまった。

「……まあ、カイナも成長途上だし、これから後輩の指導も学んでいけば大丈夫かしらね」
「み、ミリーさん!」
「だーけーどー! 指導するとなれば間違ったことを教えるのは論外! きちんと予習なり復習なりするべきよ!」
「……肝に銘じます」

 上げたり下げたりの繰り返しに、カイナの心は完全に折れかけていた。

「それじゃあタイチ君、ユウト君、コウタ君、一人ずつ採集を行ってみましょうか」
「「「はい! よろしくお願いします!」」」

 薬草採集講座が終わり、太一たちはようやく実際の採集に入っていった。
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