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第23話:カイナ再び
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「……これは」
「……ヤベェなぁ」
「……美味しいねえ!」
太一、勇人、公太がそれぞれの料理を堪能して声をあげると、たまたま近くを通り過ぎていたアキが笑みを浮かべた。
「ありがとうございます! お母さんも喜びます!」
そう口にしてそのまま仕事に戻っていくと、太一は料理を見つめながら感動してしまう。
「へぇ、これってミアさんが作ってるんだ」
「ミアさん?」
「女将さんの名前だよ。さっき聞いておいたんだ」
「宿の受付もしながら、料理も作ってるなんて、すごいねえ!」
「……お前なすごいばっかりだな、公太」
「だって、すごいんだもの! 美味しいんだもの!」
何より美味しいものに目がない公太は、ステーキを頬張りながら何度も頷いている。
その姿に再び空腹を刺激された太一と勇人も料理を口に運び、しばらくはただ黙って料理の味を堪能していく。
「――あれ? タイチじゃないの!」
そこへ声が掛かったことで三人が顔を上げると、声の主を見つけて太一が口を開いた。
「カイナさん! さっきぶりです!」
「本当だねー! その子たちが一緒に保護された迷い人なの?」
「……太一、誰?」
料理を飲み込んでから勇人が問い掛けると、太一は笑顔で答える。
「さっき話をしていた先輩冒険者のカイナさん。リーザさんのお店でいろいろと話を聞いたんだ」
「マジかよ! めっちゃリアルタイムな話題じゃんか!」
「……んぐっ! は、初めまして! 榊公太っていいます!」
「俺は鈴木勇人っす!」
「あはは! みんな元気だねー! 私はカイナよ、よろしくね! ねえ、タイチ。相席してもいいかしら?」
「もちろんです! 二人もいいよな?」
カイナが相席を申し出ると、勇人も公太も何度も頷き、太一が席を進める。
アキが注文を取りに来ると、カイナ慣れた様子で料理を頼んでいた。
「……カイナさんは土竜亭の常連なんですか?」
「ここの料理は安いし美味しいからね! 私だけじゃなく、ほとんどの冒険者がお世話になっていると思うわよ!」
「やっぱり人気なんだな、このお店」
「これだけ美味しかったら当然だよね!」
勇人が満席になったフロアを見渡すと、公太がやや興奮した感じで納得だと口にする。
「もしかしてタイチたちはここに泊まっているの?」
「はい。依頼完了の報告でギルドに戻ったら、クレアさんが紹介状を書いてくれたんです」
「へぇー! ってことは、三人とも相当期待されているみたいだね!」
「「「……期待ですか?」」」
「あれ、知らないの?」
何をと言わんばかりに太一たちは大きく頷いた。
「紹介状って、そう簡単に発行されるものじゃないのよ?」
「そうなんですか?」
「でも、クレアさんはささっと書いてくれたよな?」
「う、うん」
「それだけクレアさんに認められているってことじゃないのよ! でもまあ、迷い人だったら分からないのも当然か」
カイナはそう口にしたものの、太一たちからすればやはりピンとこない。
何せまだ一件しか依頼をこなしていないわけで、何を見て期待してもらったのかが分からなかったのだ。
「まあ、分からないことがあったら私でもいいし、なんならミアさんに聞いてもいいと思うわよ」
「どうしてミアさんの名前が出てくるんですか?」
「あぁー、そこも聞いていないのねー。そうなると――」
「はいよ! お待ちどうさん!」
カイナが何かを言いかけたタイミングで彼女が注文した料理が運ばれてきた。
しかし、今回はアキではなくミアが運んできてくれた。
「調子はどうだい、カイナ!」
「あぁー……ば、バッチリ順調ですよ! あは、あははー」
何やら居づらそうにしているなと思った太一だったが、それ以上に伝えなければならないことがあると口を開く。
「ミアさん! この料理、とっても美味しいです!」
「本当だよな! めっちゃ美味しいっす!」
「僕、おかわりしたいです!」
「あはは! そうかい? それなら作った甲斐があるってもんだよ! コウタはおかわりだね、ちょっと待ってな! カイナもゆっくりしておいきよ!」
「……は、はーい」
ミアが再び台所へ姿を消したのを見て、何故かカイナは大きく息を吐き出した。
「ぷふぅー! ……ごめん、三人とも、さっきのは忘れてくれるかな?」
「「「……? 分かりました」」」
三人は首をコテンと倒しながらそう口にすると、再び料理を口に運んでいく。
カイナも気分を変えようと運ばれてきた料理を口に運び、満足そうに何度も頷いていた。
それから公太がおかわりで注文したステーキが運ばれてくると、太一がリーザのお店で聞いた話や、勇人や公太がカイナに質問をして答えていくなど、賑やかな時間が流れていった。
「……ヤベェなぁ」
「……美味しいねえ!」
太一、勇人、公太がそれぞれの料理を堪能して声をあげると、たまたま近くを通り過ぎていたアキが笑みを浮かべた。
「ありがとうございます! お母さんも喜びます!」
そう口にしてそのまま仕事に戻っていくと、太一は料理を見つめながら感動してしまう。
「へぇ、これってミアさんが作ってるんだ」
「ミアさん?」
「女将さんの名前だよ。さっき聞いておいたんだ」
「宿の受付もしながら、料理も作ってるなんて、すごいねえ!」
「……お前なすごいばっかりだな、公太」
「だって、すごいんだもの! 美味しいんだもの!」
何より美味しいものに目がない公太は、ステーキを頬張りながら何度も頷いている。
その姿に再び空腹を刺激された太一と勇人も料理を口に運び、しばらくはただ黙って料理の味を堪能していく。
「――あれ? タイチじゃないの!」
そこへ声が掛かったことで三人が顔を上げると、声の主を見つけて太一が口を開いた。
「カイナさん! さっきぶりです!」
「本当だねー! その子たちが一緒に保護された迷い人なの?」
「……太一、誰?」
料理を飲み込んでから勇人が問い掛けると、太一は笑顔で答える。
「さっき話をしていた先輩冒険者のカイナさん。リーザさんのお店でいろいろと話を聞いたんだ」
「マジかよ! めっちゃリアルタイムな話題じゃんか!」
「……んぐっ! は、初めまして! 榊公太っていいます!」
「俺は鈴木勇人っす!」
「あはは! みんな元気だねー! 私はカイナよ、よろしくね! ねえ、タイチ。相席してもいいかしら?」
「もちろんです! 二人もいいよな?」
カイナが相席を申し出ると、勇人も公太も何度も頷き、太一が席を進める。
アキが注文を取りに来ると、カイナ慣れた様子で料理を頼んでいた。
「……カイナさんは土竜亭の常連なんですか?」
「ここの料理は安いし美味しいからね! 私だけじゃなく、ほとんどの冒険者がお世話になっていると思うわよ!」
「やっぱり人気なんだな、このお店」
「これだけ美味しかったら当然だよね!」
勇人が満席になったフロアを見渡すと、公太がやや興奮した感じで納得だと口にする。
「もしかしてタイチたちはここに泊まっているの?」
「はい。依頼完了の報告でギルドに戻ったら、クレアさんが紹介状を書いてくれたんです」
「へぇー! ってことは、三人とも相当期待されているみたいだね!」
「「「……期待ですか?」」」
「あれ、知らないの?」
何をと言わんばかりに太一たちは大きく頷いた。
「紹介状って、そう簡単に発行されるものじゃないのよ?」
「そうなんですか?」
「でも、クレアさんはささっと書いてくれたよな?」
「う、うん」
「それだけクレアさんに認められているってことじゃないのよ! でもまあ、迷い人だったら分からないのも当然か」
カイナはそう口にしたものの、太一たちからすればやはりピンとこない。
何せまだ一件しか依頼をこなしていないわけで、何を見て期待してもらったのかが分からなかったのだ。
「まあ、分からないことがあったら私でもいいし、なんならミアさんに聞いてもいいと思うわよ」
「どうしてミアさんの名前が出てくるんですか?」
「あぁー、そこも聞いていないのねー。そうなると――」
「はいよ! お待ちどうさん!」
カイナが何かを言いかけたタイミングで彼女が注文した料理が運ばれてきた。
しかし、今回はアキではなくミアが運んできてくれた。
「調子はどうだい、カイナ!」
「あぁー……ば、バッチリ順調ですよ! あは、あははー」
何やら居づらそうにしているなと思った太一だったが、それ以上に伝えなければならないことがあると口を開く。
「ミアさん! この料理、とっても美味しいです!」
「本当だよな! めっちゃ美味しいっす!」
「僕、おかわりしたいです!」
「あはは! そうかい? それなら作った甲斐があるってもんだよ! コウタはおかわりだね、ちょっと待ってな! カイナもゆっくりしておいきよ!」
「……は、はーい」
ミアが再び台所へ姿を消したのを見て、何故かカイナは大きく息を吐き出した。
「ぷふぅー! ……ごめん、三人とも、さっきのは忘れてくれるかな?」
「「「……? 分かりました」」」
三人は首をコテンと倒しながらそう口にすると、再び料理を口に運んでいく。
カイナも気分を変えようと運ばれてきた料理を口に運び、満足そうに何度も頷いていた。
それから公太がおかわりで注文したステーキが運ばれてくると、太一がリーザのお店で聞いた話や、勇人や公太がカイナに質問をして答えていくなど、賑やかな時間が流れていった。
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