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第22話:報告会
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部屋に入ってから一息ついた太一たちは、すぐに空腹に襲われた。
「……どうする?」
「……どうするも何も」
「……格安で美味しいんでしょう?」
「「「……腹ごしらえだな!」」」
疲れは残っているものの、空腹に勝るものはない。
太一たちは立ち上がり部屋を出ると、自然と早足になりながら酒場へ向かった。
「あっ! お食事ですか?」
一階へ下りたところで声を掛けてくれたのは、看板娘のアキだった。
「そうです」
「俺たちって普通に酒場で食事をしてもいいのかな?」
「確かに、子供が酒場ってどうなんだろう?」
「大丈夫ですよ。でも、お酒の提供はできませんが我慢してくださいね」
ニコリと笑みを浮かべながら開いている席に案内してくれたアキは、そのまま注文を取ってくれる。
「こちらがメニューになります」
「オススメとかありますか?」
「そうですねぇ……一番の人気メニューがミニファングの煮つけ、量を食べる方にはブルファングのステーキ、さっぱり食べたい方には季節野菜のレミー和えかな」
アキの説明を聞いて、太一がミニファングの煮つけ、勇人が季節野菜のレミー和え、公太がブルファングのステーキを注文した。
「かしこまりました! 少々お待ちくださいね!」
ペコリと会釈をして台所へ下がっていったアキを見送り、太一たちは今日一日の出来事を話し始めた。
「公太はどうだったんだ?」
「この中でスキルを一番使えたのは公太だよな? どうなんだ?」
「えっと、現場の人たちもみんないい人で、問題なく依頼をこなせたよ。他の人ならここまでできなかったって褒められたんだ!」
「「おぉーっ!」」
公太が嬉しそうに褒められたと口にすると、太一と勇人が拍手をしながら歓声をあげる。
それが恥ずかしかったのか、今度は公太が慌てたように口を開いた。
「ゆ、勇人君はどうだったの?」
「そうだよ! 勇人もスキルを使えたんじゃないか?」
「ただの犬の散歩だぞ? ……まあ、めっちゃ走ってたからスキルも使ったと思うけど、必死過ぎて使った感覚はマジでなかったな」
小さく息を吐きながらそう口にした勇人だったが、すぐに笑みを浮かべる。
「でも、楽しかったかな」
「「犬の散歩が?」」
「その犬の頭が良くってよ! なんていうか、俺の話していることが分かってるのかなーってさ!」
「「……犬なのに?」」
「犬なのにだよ! 俺も最初はまさかとは思ったけど……まあ、ここは異世界なわけだし、そういう犬がいてもいいんじゃねえか?」
一人だけ納得したように口にしている勇人を見て、太一と公太は最初こそ顔を見合わせながら首を傾げていたが、最終的にはそうかもしれないと思うようになっていた。
「まあ、勇人がそう言うならそうなのかもしれないな」
「勇人君、こういうところで冗談とか言わないもんね」
「真っ当な人間だからな、俺様は!」
「それじゃあ今度は太一君だね、どうだった?」
「俺は無視かよ! 突っ込めよ! ……まあ、いいけどな。俺も太一の話が気になるしよ!」
公太も勇人も自分の話が終わると、すぐに太一へ話題を振った。
クレアへの報告の中に入っていた先輩冒険者とのやり取りがずっと気になっており、早く話が聞きたいと思っていたのだ。
「スキルが使える依頼ではなかったけど、リーザさん……お店の店主さんがとてもいい人で、いろいろと教えてもらったんだ」
「いろいろって、例えば?」
「そのお店がなんと! ポーションを取り扱っているお店だったんだ!」
「えぇっ! ぽ、ポーションだって!!」
ポーションという言葉に食いついたのは公太だった。
勇人は三人の中ではマンガやゲームに触れてこなかったので首を傾げていたが、三人の中でも一番触れてきた公太はテーブルに前のめりになってしまう。
「そうなんだよ! 俺も興奮しちゃってさ!」
「いいなー、僕も行きたいなー」
「今度みんなで行こうよ! すぐには無理かもしれないけど、俺たちもいつかは街の外の依頼を受けることがあるかもしれないしさ!」
「うんうん、行こう! あぁー、楽しみだなー!」
「……それもいいけどさ!」
太一と公太が盛り上がっているのを横目に見ていた勇人だったが、しびれを切らしたのか二人の間に入って声をあげた。
「先輩冒険者との話を聞かせてくれよ!」
「あっ! 僕もそれは気になってた!」
「だろ! 俺たちってディーさんたちしか知り合いがいなかったし、他の冒険者の話も気になるんだよ!」
「うんうん! 気になる、気になる!」
勇人の言葉に公太も頷き、太一がカイナとの話を伝えようとした――その時である。
「お待たせしましたー!」
アキが出来上がった料理を運んできてくれた。
テーブルには注文した料理が並び、空腹の三人は美味しそうな香りに目を奪われてしまう。
「お熱いうちに召し上がってくださいね! それじゃあ、失礼します!」
最後のアキの言葉はすでに、三人の耳には届いていなかった。
「……さ、先に食べちゃおうか」
「……そ、そうだな」
「……お腹空いたよー!」
「「「いただきまーす!」」」
結局、太一がカイナとの話を伝える前に土竜亭の食事を堪能することにした。
「……どうする?」
「……どうするも何も」
「……格安で美味しいんでしょう?」
「「「……腹ごしらえだな!」」」
疲れは残っているものの、空腹に勝るものはない。
太一たちは立ち上がり部屋を出ると、自然と早足になりながら酒場へ向かった。
「あっ! お食事ですか?」
一階へ下りたところで声を掛けてくれたのは、看板娘のアキだった。
「そうです」
「俺たちって普通に酒場で食事をしてもいいのかな?」
「確かに、子供が酒場ってどうなんだろう?」
「大丈夫ですよ。でも、お酒の提供はできませんが我慢してくださいね」
ニコリと笑みを浮かべながら開いている席に案内してくれたアキは、そのまま注文を取ってくれる。
「こちらがメニューになります」
「オススメとかありますか?」
「そうですねぇ……一番の人気メニューがミニファングの煮つけ、量を食べる方にはブルファングのステーキ、さっぱり食べたい方には季節野菜のレミー和えかな」
アキの説明を聞いて、太一がミニファングの煮つけ、勇人が季節野菜のレミー和え、公太がブルファングのステーキを注文した。
「かしこまりました! 少々お待ちくださいね!」
ペコリと会釈をして台所へ下がっていったアキを見送り、太一たちは今日一日の出来事を話し始めた。
「公太はどうだったんだ?」
「この中でスキルを一番使えたのは公太だよな? どうなんだ?」
「えっと、現場の人たちもみんないい人で、問題なく依頼をこなせたよ。他の人ならここまでできなかったって褒められたんだ!」
「「おぉーっ!」」
公太が嬉しそうに褒められたと口にすると、太一と勇人が拍手をしながら歓声をあげる。
それが恥ずかしかったのか、今度は公太が慌てたように口を開いた。
「ゆ、勇人君はどうだったの?」
「そうだよ! 勇人もスキルを使えたんじゃないか?」
「ただの犬の散歩だぞ? ……まあ、めっちゃ走ってたからスキルも使ったと思うけど、必死過ぎて使った感覚はマジでなかったな」
小さく息を吐きながらそう口にした勇人だったが、すぐに笑みを浮かべる。
「でも、楽しかったかな」
「「犬の散歩が?」」
「その犬の頭が良くってよ! なんていうか、俺の話していることが分かってるのかなーってさ!」
「「……犬なのに?」」
「犬なのにだよ! 俺も最初はまさかとは思ったけど……まあ、ここは異世界なわけだし、そういう犬がいてもいいんじゃねえか?」
一人だけ納得したように口にしている勇人を見て、太一と公太は最初こそ顔を見合わせながら首を傾げていたが、最終的にはそうかもしれないと思うようになっていた。
「まあ、勇人がそう言うならそうなのかもしれないな」
「勇人君、こういうところで冗談とか言わないもんね」
「真っ当な人間だからな、俺様は!」
「それじゃあ今度は太一君だね、どうだった?」
「俺は無視かよ! 突っ込めよ! ……まあ、いいけどな。俺も太一の話が気になるしよ!」
公太も勇人も自分の話が終わると、すぐに太一へ話題を振った。
クレアへの報告の中に入っていた先輩冒険者とのやり取りがずっと気になっており、早く話が聞きたいと思っていたのだ。
「スキルが使える依頼ではなかったけど、リーザさん……お店の店主さんがとてもいい人で、いろいろと教えてもらったんだ」
「いろいろって、例えば?」
「そのお店がなんと! ポーションを取り扱っているお店だったんだ!」
「えぇっ! ぽ、ポーションだって!!」
ポーションという言葉に食いついたのは公太だった。
勇人は三人の中ではマンガやゲームに触れてこなかったので首を傾げていたが、三人の中でも一番触れてきた公太はテーブルに前のめりになってしまう。
「そうなんだよ! 俺も興奮しちゃってさ!」
「いいなー、僕も行きたいなー」
「今度みんなで行こうよ! すぐには無理かもしれないけど、俺たちもいつかは街の外の依頼を受けることがあるかもしれないしさ!」
「うんうん、行こう! あぁー、楽しみだなー!」
「……それもいいけどさ!」
太一と公太が盛り上がっているのを横目に見ていた勇人だったが、しびれを切らしたのか二人の間に入って声をあげた。
「先輩冒険者との話を聞かせてくれよ!」
「あっ! 僕もそれは気になってた!」
「だろ! 俺たちってディーさんたちしか知り合いがいなかったし、他の冒険者の話も気になるんだよ!」
「うんうん! 気になる、気になる!」
勇人の言葉に公太も頷き、太一がカイナとの話を伝えようとした――その時である。
「お待たせしましたー!」
アキが出来上がった料理を運んできてくれた。
テーブルには注文した料理が並び、空腹の三人は美味しそうな香りに目を奪われてしまう。
「お熱いうちに召し上がってくださいね! それじゃあ、失礼します!」
最後のアキの言葉はすでに、三人の耳には届いていなかった。
「……さ、先に食べちゃおうか」
「……そ、そうだな」
「……お腹空いたよー!」
「「「いただきまーす!」」」
結局、太一がカイナとの話を伝える前に土竜亭の食事を堪能することにした。
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