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第20話:依頼完了
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「「おそーい!」」
「ご、ごめん!」
太一が冒険者ギルドに戻ってきたのは、太陽が地平線に隠れてしばらく経ってからだった。
リーザのお店が閉店したのは少し早い時間だったものの、リーザとカイナとの話が盛り上がり過ぎて遅くなってしまったのだ。
「おかえりなさい、タイチ君」
「クレアさんもすみませんでした!」
「私は仕事だから構わないんだけど、リーザさんのお店、忙しかったの?」
「いえ、お店は時間通りに閉店したんですが、先輩冒険者のカイナさんが来てくれて、話を聞いていたら遅くなってしまいました」
「「先輩冒険者だって!?」」
「そうなんだよ! めっちゃいろいろな話をしてくれて、二人にも教えてあげようって――」
遅くなった太一に怒っていた勇人と公太だったが、先輩冒険者と聞いた途端に表情を輝かせた。
そうだろうと思っていた太一も笑顔に戻り、そのまま二人に話をしようとしたのだが、そこにクレアが割って入った。
「はいはい! 盛り上がるのはいいけど、まずはタイチ君の依頼完了を確認しないとね!」
「あっ! す、すみません! そうでしたね!」
クレアの指摘を受けて、太一はすぐに依頼書を提出する。
「うんうん、問題なさそうね」
依頼書を確認したクレアは嬉しそうに処理を進めていくと、最後には依頼達成の報酬が入った袋をカウンターに置いた。
「こちらがタイチ君が初めての依頼で稼いだ報酬です! おめでとう、タイチ君!」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうに袋を受け取った太一だったが、その重さが思っていた以上に重かったこともあり首を傾げてしまう。
「あれ? なんだか、重いような?」
太一がそう呟くと、同じ経験をしていたのか勇人と公太が顔を見合わせたあと、苦笑しながら口を開いた。
「なんだ、太一もかよ」
「実は僕も勇人君もそうだったんだ」
「二人も? いったいどういうことなんだ?」
「三人とも、依頼人が思っていた以上の働きをしてくれたってことよ」
答えを教えてくれたのはクレアだった。
「依頼書に追記がされていてね、本来の報酬額に上乗せするよう書かれていたのよ」
「えぇっ!? ……でも、特別なことなんてしてないけどなぁ?」
「報酬を上げてほしいと頼む時は、その人の気持ちみたいなものだからね。きっとリーザさんにとって、タイチ君との時間がとても楽しかったんだと思うわ」
太一からすればとても楽しく、そして有意義な時間を過ごすことができた。
クレアが言っていた通り、少しでもリーザが太一との時間を楽しいと思ってくれていたのであれば、これ以上に嬉しいことはないと思ってしまう。
「ユウト君もコウタ君も依頼人から報酬を上げるよう書かれていたし、三人がきちんと依頼を達成してくれて、アドバイザーとしてこれほど嬉しいことはないわ!」
それに何より、アドバイザーになってくれたクレアが喜んでいる姿を見て、三人は頑張ってよかったなと心の底から思っていた。
「それじゃあ三人とも、本当にお疲れ様でした! よく頑張ったわね!」
「「「はい! ありがとうございます!」」」
興奮した様子で返事をした三人――だったが、ここでクレアから重大な確認が口にされた。
「そうそう、三人とも。今日の宿はもう決めたのかしら?」
「「「……宿?」」」
クレアの確認に三人は声を揃えたあと、徐々にその表情を青くしていく。
「……ま、マズいぞ、勇人、公太」
「……ぜんっぜん、考えてなかった」
「……僕たち、野宿かなぁ?」
こちらの世界へ迷い込んでから今に至るまで、成り行きに任せて行動していたこともあり、宿のことなど頭の中からすっかり抜け落ちていた。……というか、目の前のことに精一杯すぎて思いついてすらいなかった。
三人がどうしようかと顔を青ざめていると、クレアがクスクスと笑いながら口を開いた。
「うふふ、安心してちょうだい。そうだろうと思って、ギルドから紹介できる宿を選んでおいたわ」
「「「ありがとうございます、クレアさん! あなたは神様です!!」」」
「大袈裟すぎよ、三人とも。何軒かあるんだけど、私のオススメの宿は『土竜亭』かな。新人冒険者にも優しい料金設定だし、何より食事が美味しいの!」
「「「そこを紹介してください! よろしくお願いします!!」」」
太一たちが頭を下げると、クレアはすぐに紹介状を準備してくれた。
口頭でも問題はないのだが、紹介状があるということはギルド職員から認められた冒険者だということで、それはつまり将来有望な冒険者だと宣伝しているようなものだった。
クレアは太一たちが迷い人だからではなく、初めての依頼で依頼人が大満足するだけの仕事をしてくれたことに期待して紹介状を書いてくれていた。
「場所の地図も書いておいたから、この場所に行ってみてね。紹介状は女将さんに渡すだけで大丈夫よ、あっちも分かってくれているから」
「本当に、何から何までありがとうございます」
「いつか絶対に恩返しさせてくれな!」
「僕たち、冒険者を頑張りますから!」
「うふふ、期待して待っているわね」
こうして太一たちは冒険者ギルドを後にした。
「ご、ごめん!」
太一が冒険者ギルドに戻ってきたのは、太陽が地平線に隠れてしばらく経ってからだった。
リーザのお店が閉店したのは少し早い時間だったものの、リーザとカイナとの話が盛り上がり過ぎて遅くなってしまったのだ。
「おかえりなさい、タイチ君」
「クレアさんもすみませんでした!」
「私は仕事だから構わないんだけど、リーザさんのお店、忙しかったの?」
「いえ、お店は時間通りに閉店したんですが、先輩冒険者のカイナさんが来てくれて、話を聞いていたら遅くなってしまいました」
「「先輩冒険者だって!?」」
「そうなんだよ! めっちゃいろいろな話をしてくれて、二人にも教えてあげようって――」
遅くなった太一に怒っていた勇人と公太だったが、先輩冒険者と聞いた途端に表情を輝かせた。
そうだろうと思っていた太一も笑顔に戻り、そのまま二人に話をしようとしたのだが、そこにクレアが割って入った。
「はいはい! 盛り上がるのはいいけど、まずはタイチ君の依頼完了を確認しないとね!」
「あっ! す、すみません! そうでしたね!」
クレアの指摘を受けて、太一はすぐに依頼書を提出する。
「うんうん、問題なさそうね」
依頼書を確認したクレアは嬉しそうに処理を進めていくと、最後には依頼達成の報酬が入った袋をカウンターに置いた。
「こちらがタイチ君が初めての依頼で稼いだ報酬です! おめでとう、タイチ君!」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうに袋を受け取った太一だったが、その重さが思っていた以上に重かったこともあり首を傾げてしまう。
「あれ? なんだか、重いような?」
太一がそう呟くと、同じ経験をしていたのか勇人と公太が顔を見合わせたあと、苦笑しながら口を開いた。
「なんだ、太一もかよ」
「実は僕も勇人君もそうだったんだ」
「二人も? いったいどういうことなんだ?」
「三人とも、依頼人が思っていた以上の働きをしてくれたってことよ」
答えを教えてくれたのはクレアだった。
「依頼書に追記がされていてね、本来の報酬額に上乗せするよう書かれていたのよ」
「えぇっ!? ……でも、特別なことなんてしてないけどなぁ?」
「報酬を上げてほしいと頼む時は、その人の気持ちみたいなものだからね。きっとリーザさんにとって、タイチ君との時間がとても楽しかったんだと思うわ」
太一からすればとても楽しく、そして有意義な時間を過ごすことができた。
クレアが言っていた通り、少しでもリーザが太一との時間を楽しいと思ってくれていたのであれば、これ以上に嬉しいことはないと思ってしまう。
「ユウト君もコウタ君も依頼人から報酬を上げるよう書かれていたし、三人がきちんと依頼を達成してくれて、アドバイザーとしてこれほど嬉しいことはないわ!」
それに何より、アドバイザーになってくれたクレアが喜んでいる姿を見て、三人は頑張ってよかったなと心の底から思っていた。
「それじゃあ三人とも、本当にお疲れ様でした! よく頑張ったわね!」
「「「はい! ありがとうございます!」」」
興奮した様子で返事をした三人――だったが、ここでクレアから重大な確認が口にされた。
「そうそう、三人とも。今日の宿はもう決めたのかしら?」
「「「……宿?」」」
クレアの確認に三人は声を揃えたあと、徐々にその表情を青くしていく。
「……ま、マズいぞ、勇人、公太」
「……ぜんっぜん、考えてなかった」
「……僕たち、野宿かなぁ?」
こちらの世界へ迷い込んでから今に至るまで、成り行きに任せて行動していたこともあり、宿のことなど頭の中からすっかり抜け落ちていた。……というか、目の前のことに精一杯すぎて思いついてすらいなかった。
三人がどうしようかと顔を青ざめていると、クレアがクスクスと笑いながら口を開いた。
「うふふ、安心してちょうだい。そうだろうと思って、ギルドから紹介できる宿を選んでおいたわ」
「「「ありがとうございます、クレアさん! あなたは神様です!!」」」
「大袈裟すぎよ、三人とも。何軒かあるんだけど、私のオススメの宿は『土竜亭』かな。新人冒険者にも優しい料金設定だし、何より食事が美味しいの!」
「「「そこを紹介してください! よろしくお願いします!!」」」
太一たちが頭を下げると、クレアはすぐに紹介状を準備してくれた。
口頭でも問題はないのだが、紹介状があるということはギルド職員から認められた冒険者だということで、それはつまり将来有望な冒険者だと宣伝しているようなものだった。
クレアは太一たちが迷い人だからではなく、初めての依頼で依頼人が大満足するだけの仕事をしてくれたことに期待して紹介状を書いてくれていた。
「場所の地図も書いておいたから、この場所に行ってみてね。紹介状は女将さんに渡すだけで大丈夫よ、あっちも分かってくれているから」
「本当に、何から何までありがとうございます」
「いつか絶対に恩返しさせてくれな!」
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こうして太一たちは冒険者ギルドを後にした。
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