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第二章:自由と束縛と
第84話:冒険者アリシア 9
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「おい、てめぇ。いきなり現れてでけぇ面してるじゃねぇか」
声の方へ視線を向けると、そこには大柄な男性が三人、アリシアたちを睨みつけながら立っていた。
「別に大きい顔をしているつもりはないわ。新人冒険者だし、普通に依頼を受けているだけですよ?」
「てめぇ、俺様に立てつこうってのか?」
「質問されたので答えただけです」
「舐めやがって!」
先頭に立つ赤髪の男性ではなく、後ろに立っていた丸刈りの男性が声を荒げる。茶髪の男性はにやにやしながらアリシアとケイナを上から下まで眺めていた。
「ちょっと、ガルアさん! 何をしているんですか!」
怒声を聞いて戻ってきたリティは、赤髪の男性に詰め寄っていく。
「んだよ、リティ。てめぇは黙ってろ」
「黙りません! この方たちは私が担当している新人冒険者ですよ、絡まないでください!」
「おい、てめえ! ガルアさんに何言ってくれてんだよ!」
「ひひ、あんたもいい体してるよなぁ」
ここでも丸刈りの男性が声を荒げ、茶髪の男性がにやにやと笑っている。
「なあ、あんた。ランクは何なんだ?」
「あぁん? んだ、でけぇの」
リティが宥めようとしていたのだが、そこへゼーアがあえて声を掛けてきた。
「言葉がわからないのか? ランクはなんだと聞いたんだ」
「てめぇ、アイアンが調子に乗るんじゃねえぞ!」
「こちとらシルバーとブロンズのパーティだぞこらあ!」
「ひひ、ぶっ飛ばしてもいいんじゃねぇか? そしたら、好きにできる? ひひ」
「そういうことだ。アイアンが舐めた口を利いてんじゃねえぞ?」
ガルアがゼーアに詰め寄り、おでことおでこをぶつけて睨みつける。
「ちょっと、ガルアさん!」
「待って、リティさん」
「……アリシアさん?」
まさかアリシアに止められるとは思っていなかったのか、リティは驚いたように呟いた。
「ガルアさん、でしたっけ?」
「あぁん、今度はてめぇか?」
「そっちも三人、こちらも三人。せっかくですし、一つ勝負といきませんか?」
「……勝負だぁ? てめぇ、ふざけてんのか?」
「ふざけてはいませんよ。ただ、このままではお互いに話が平行線でしょう?」
「えぇ! ア、アリシアさん!?」
そして、アリシアの提案を聞いたリティが大声をあげ、それにガルアはニヤリと笑った。
「はっ! てめぇ、面白いじゃねえか!」
「それで、どうするの?」
「いいぜ、やってやろうじゃねえか!」
「ガルアさんまで! ゼーアさんとケイナさんも止めてくださいよ!」
アリシアでは話にならないと思ったのか、リティはゼーアとケイナに声を掛けた。しかし――
「……いいねぇ、面白そうだ!」
「……あの人、気持ち悪いです! 絶対に叩き潰します!」
「……え、えぇぇ~?」
二人までもやる気になっており、リティは説得を諦めてしまった。
そして、ガルアたちもやる気満々であり、さらに言えば負けるつもりなど微塵もない。
「ぶっ殺しちまっても知らねぇぞ、ガキがぁ」
「それはこっちのセリフです、先輩」
「……あぁぁ~、もう! 止めませんけど、ここでは止めてくださいよね! 地下の訓練場を提供しますから、そこでお願いします! それと、このことはギルマスにも報告しますからね!」
矢継ぎ早にそう口にしたリティは地下へ降りる階段を指さしたあと、すぐに二階へと駆け出した。
「というわけで、ギルド公認だ。さっさと行こうぜ」
「わかりました。行きましょう、ゼーアさん、ケイナちゃん」
こうしてアリシアたちは、絡んできたガルアたちと勝負をするために地下の訓練場へ足を向けたのだった。
声の方へ視線を向けると、そこには大柄な男性が三人、アリシアたちを睨みつけながら立っていた。
「別に大きい顔をしているつもりはないわ。新人冒険者だし、普通に依頼を受けているだけですよ?」
「てめぇ、俺様に立てつこうってのか?」
「質問されたので答えただけです」
「舐めやがって!」
先頭に立つ赤髪の男性ではなく、後ろに立っていた丸刈りの男性が声を荒げる。茶髪の男性はにやにやしながらアリシアとケイナを上から下まで眺めていた。
「ちょっと、ガルアさん! 何をしているんですか!」
怒声を聞いて戻ってきたリティは、赤髪の男性に詰め寄っていく。
「んだよ、リティ。てめぇは黙ってろ」
「黙りません! この方たちは私が担当している新人冒険者ですよ、絡まないでください!」
「おい、てめえ! ガルアさんに何言ってくれてんだよ!」
「ひひ、あんたもいい体してるよなぁ」
ここでも丸刈りの男性が声を荒げ、茶髪の男性がにやにやと笑っている。
「なあ、あんた。ランクは何なんだ?」
「あぁん? んだ、でけぇの」
リティが宥めようとしていたのだが、そこへゼーアがあえて声を掛けてきた。
「言葉がわからないのか? ランクはなんだと聞いたんだ」
「てめぇ、アイアンが調子に乗るんじゃねえぞ!」
「こちとらシルバーとブロンズのパーティだぞこらあ!」
「ひひ、ぶっ飛ばしてもいいんじゃねぇか? そしたら、好きにできる? ひひ」
「そういうことだ。アイアンが舐めた口を利いてんじゃねえぞ?」
ガルアがゼーアに詰め寄り、おでことおでこをぶつけて睨みつける。
「ちょっと、ガルアさん!」
「待って、リティさん」
「……アリシアさん?」
まさかアリシアに止められるとは思っていなかったのか、リティは驚いたように呟いた。
「ガルアさん、でしたっけ?」
「あぁん、今度はてめぇか?」
「そっちも三人、こちらも三人。せっかくですし、一つ勝負といきませんか?」
「……勝負だぁ? てめぇ、ふざけてんのか?」
「ふざけてはいませんよ。ただ、このままではお互いに話が平行線でしょう?」
「えぇ! ア、アリシアさん!?」
そして、アリシアの提案を聞いたリティが大声をあげ、それにガルアはニヤリと笑った。
「はっ! てめぇ、面白いじゃねえか!」
「それで、どうするの?」
「いいぜ、やってやろうじゃねえか!」
「ガルアさんまで! ゼーアさんとケイナさんも止めてくださいよ!」
アリシアでは話にならないと思ったのか、リティはゼーアとケイナに声を掛けた。しかし――
「……いいねぇ、面白そうだ!」
「……あの人、気持ち悪いです! 絶対に叩き潰します!」
「……え、えぇぇ~?」
二人までもやる気になっており、リティは説得を諦めてしまった。
そして、ガルアたちもやる気満々であり、さらに言えば負けるつもりなど微塵もない。
「ぶっ殺しちまっても知らねぇぞ、ガキがぁ」
「それはこっちのセリフです、先輩」
「……あぁぁ~、もう! 止めませんけど、ここでは止めてくださいよね! 地下の訓練場を提供しますから、そこでお願いします! それと、このことはギルマスにも報告しますからね!」
矢継ぎ早にそう口にしたリティは地下へ降りる階段を指さしたあと、すぐに二階へと駆け出した。
「というわけで、ギルド公認だ。さっさと行こうぜ」
「わかりました。行きましょう、ゼーアさん、ケイナちゃん」
こうしてアリシアたちは、絡んできたガルアたちと勝負をするために地下の訓練場へ足を向けたのだった。
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