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第一章:逆行聖女
第75話:聖女アリシア 28
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「いや、あの、ちょっと! ダメだよ!」
「なんでダメなんだ?」
「そうですよ!」
せっかく自由を手にしたにもかかわらず、どうしてアリシアについてくるというのか、彼女には全く理解できなかった。
「だって私、ただの田舎娘だよ? そんな私についてきたところで、二人にプラスなんて全くないんだよ?」
「だからなんだってんだ?」
「……え?」
「私たちは、アリシア様を守りたいと思ったから一緒に行くんです! 別に、プラスがどうとかマイナスがどうとか、関係ないです!」
「そういうこった」
「で、でも……せっかくの、自由なんですよ?」
できることならみんなが自由に、自分の好きなように生きてほしい。
それにアリシアは今後、国が転覆するかもしれない大騒動に挑むつもりでいる。
そんなところに二人を連れて行きたくないと思うのは、当然かもしれなかった。
「あぁ。自由だからこそ、俺たちはアリシアについていくんだ」
「そ、そうです! 自由なんだから、アリシア様についていくのは私が選択したことなんです!」
「……お前、何も考えていなかっただろう」
「な、なんのことですか! ゼーアさん、面白いですね! あは、あははー!」
呆れたように呟いたゼーアと、視線を逸らしながら乾いた笑いをしているケイナ。
そんな二人を見つめながら、小さく問い掛けた。
「……本当に、いいんですか?」
正直なところ、アリシアは寂しくなっていた。
ディラーナ村を出て、ホールトンを警戒し、ずっと緊張の糸を張り詰めていた。
そこへゼーアとの交流を得て、田舎騎士たちと食事を共にし、ケイナとも出会うことができた。
だからなのか、二人との別れを自覚した時、寂しい気持ちが芽生え始めていたのだ。
ケイナの呟きは心の奥底からの、彼女の本心だった。
「もちろんだ! 俺たちは、アリシアの味方だからな!」
「その通りです! 一生ついていきますからね!」
「あ……うふふ、ありがとう。でも、一生は言い過ぎだよ、ケイナちゃん」
アリシアは、ようやく笑えた。
二人の言葉を、決意を聞いて、アリシアはようやく決心した。
ディラーナ村を出た頃は、ずっと一人で運命に抗おうと考えていた。そうすることしかできないと思っていた。
だが、人生とは不思議なもので、未来を知っていたとしても自分の行動で他人がどうなるのかなんて、当然ながらわからない。
自分のたった一つの行動が、決断が、他人の未来を変えることになるのだと、アリシアは今更ながら気づくことができた。
ならば、自分とかかわりあった者の、友の運命なら、可能な限り守りたいという思いに変わっていた。
「それで、これからどうするつもりなんだ?」
「ここから一番近い都市は王都ですけど、そこはダメですもんね。となると……」
「えっと、向かう場所は決めているんだ」
アリシアはすでにどこへ向かうのかを決めていた。
それはホールトンに謀られた時点で、今回の危機を乗り越えられたら向かおうと早い段階から。
「王都は南。北に向かえばディラーナ村へ戻ることになるけど……私の目的地は西よ」
「西だと? ってことは……」
「魔導都市ラクドナイトですね」
魔導都市ラクドナイト。
その名の通り、魔導の研究で発展し続け、今では王都に勝るとも劣らない規模の大都市に至っている。
しかし、魔導都市ラクドナイトはここから二年後――地図上から消えることとなる。
(でも、これはあくまでも前世での話だわ。きっと、未来は変えられる。いいえ、変えないといけないんだわ!)
自ら大騒動へと飛び込んでいこうとするアリシア。
彼女の運命は、すでに大きく変わり始めていた。
第一章 終わり
「なんでダメなんだ?」
「そうですよ!」
せっかく自由を手にしたにもかかわらず、どうしてアリシアについてくるというのか、彼女には全く理解できなかった。
「だって私、ただの田舎娘だよ? そんな私についてきたところで、二人にプラスなんて全くないんだよ?」
「だからなんだってんだ?」
「……え?」
「私たちは、アリシア様を守りたいと思ったから一緒に行くんです! 別に、プラスがどうとかマイナスがどうとか、関係ないです!」
「そういうこった」
「で、でも……せっかくの、自由なんですよ?」
できることならみんなが自由に、自分の好きなように生きてほしい。
それにアリシアは今後、国が転覆するかもしれない大騒動に挑むつもりでいる。
そんなところに二人を連れて行きたくないと思うのは、当然かもしれなかった。
「あぁ。自由だからこそ、俺たちはアリシアについていくんだ」
「そ、そうです! 自由なんだから、アリシア様についていくのは私が選択したことなんです!」
「……お前、何も考えていなかっただろう」
「な、なんのことですか! ゼーアさん、面白いですね! あは、あははー!」
呆れたように呟いたゼーアと、視線を逸らしながら乾いた笑いをしているケイナ。
そんな二人を見つめながら、小さく問い掛けた。
「……本当に、いいんですか?」
正直なところ、アリシアは寂しくなっていた。
ディラーナ村を出て、ホールトンを警戒し、ずっと緊張の糸を張り詰めていた。
そこへゼーアとの交流を得て、田舎騎士たちと食事を共にし、ケイナとも出会うことができた。
だからなのか、二人との別れを自覚した時、寂しい気持ちが芽生え始めていたのだ。
ケイナの呟きは心の奥底からの、彼女の本心だった。
「もちろんだ! 俺たちは、アリシアの味方だからな!」
「その通りです! 一生ついていきますからね!」
「あ……うふふ、ありがとう。でも、一生は言い過ぎだよ、ケイナちゃん」
アリシアは、ようやく笑えた。
二人の言葉を、決意を聞いて、アリシアはようやく決心した。
ディラーナ村を出た頃は、ずっと一人で運命に抗おうと考えていた。そうすることしかできないと思っていた。
だが、人生とは不思議なもので、未来を知っていたとしても自分の行動で他人がどうなるのかなんて、当然ながらわからない。
自分のたった一つの行動が、決断が、他人の未来を変えることになるのだと、アリシアは今更ながら気づくことができた。
ならば、自分とかかわりあった者の、友の運命なら、可能な限り守りたいという思いに変わっていた。
「それで、これからどうするつもりなんだ?」
「ここから一番近い都市は王都ですけど、そこはダメですもんね。となると……」
「えっと、向かう場所は決めているんだ」
アリシアはすでにどこへ向かうのかを決めていた。
それはホールトンに謀られた時点で、今回の危機を乗り越えられたら向かおうと早い段階から。
「王都は南。北に向かえばディラーナ村へ戻ることになるけど……私の目的地は西よ」
「西だと? ってことは……」
「魔導都市ラクドナイトですね」
魔導都市ラクドナイト。
その名の通り、魔導の研究で発展し続け、今では王都に勝るとも劣らない規模の大都市に至っている。
しかし、魔導都市ラクドナイトはここから二年後――地図上から消えることとなる。
(でも、これはあくまでも前世での話だわ。きっと、未来は変えられる。いいえ、変えないといけないんだわ!)
自ら大騒動へと飛び込んでいこうとするアリシア。
彼女の運命は、すでに大きく変わり始めていた。
第一章 終わり
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