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第一章:逆行聖女
第62話:聖女アリシア 15
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「――休憩終わり! さっさと出発するぞ!」
休憩場所にベントナーの声が響き渡ると、護衛騎士たちは一斉に動き始めた。
天幕を片付け、荷物をまとめると、数分後には全員が隊列を組んで出発できる状態になる。
「ここから次の都市までは休憩なしで進むことになる! 全員、気を引き締めていけ!」
「「「「はっ!」」」」
こうして進み始めた馬車は、順調に道程を消化していった。
企みがあるとは知らないアリシアは、ここでも慣れない馬車移動に悩まされながらも今後のことを考えることで時間を潰していた。
しかし、途中で外が騒がしくなっていることに気づき、こっそりと窓から状況を確認した。
「――なんだと? まさか、魔獣なのか?」
「――こんな街道沿いに現れるなんて、あり得るのか?」
「――くそっ! すぐに防御の隊列に変更するんだ!」
アリシアが乗っている場所の周囲では護衛騎士たちの隊列が変更されていき、囲むようにして全方位を警戒している。
当然ながらその間は馬車も足を止め、安全が確保されるまで動けなくなる――そう思っていた。
「何をしている!」
そこへベントナーの声が響いてきた。
「ベントナー様! 魔獣が出ましたので、ひとまず安全の確保をと思いまして――」
「ならん! 貴様ら、大司祭様に夜まで野営をさせるつもりか!」
「で、ですが、このまま進めば大司祭様にも危険が――」
「俺様が守っているのだ、そんなことは決して起こらん! 貴様らは自分たちが怖いからと足を止めた、違うか!」
「そんなことはありません!」
「では進め! もしも野営になったら、貴様らの責任だと覚悟するんだな!」
そう告げたベントナーはさっさとホールトンの馬車へと戻っていき、そのまま進んでいってしまう。
どうするべきか迷っていたアリシアの護衛騎士たちだったが、従うことしかできない彼らは仕方なく元の隊列へ戻して馬車を走らせた。
「……大丈夫なの?」
疑問の声が思わず漏れてしまったが、彼らが悪いわけではないことを承知しているアリシアはそのまま椅子に腰かけた。
前世の時を思い出そうとしたが、今回の出来事は記憶になく、どう対処するべきかわからない。
ならばどうするべきかと考えると、結局は成り行きに任せるしかないという答えに至った。
「まあ、ホールトンやベントナーの考えを理解しろという方が難しいもんね」
アリシアは平民だ。そして馬車の周りにいる護衛騎士たちも平民だ。
しかしホールトンやベントナーは貴族であり、その子弟である。
貴族の思考を平民が理解しようという方が難しく、理解できたとしてもそれを納得できるかはまた別の話でもあった。
「王都までは何事もなく到着するはずだけど……まあ、これだけの護衛騎士を負かすような魔獣が現れるなんてことはないわよね」
そう自分に言い聞かせたアリシアは、夜の料理は何にしようかと考え始めた。
都市に入れば問題ないはずだが、それはホールトンたちだけの話である。
実を言えば都市に入れるのはホールトンたちだけであり、アリシアやゼーアを含む田舎騎士たちは予算の関係上、結局は野営をする羽目になるのだ。
(あの時は散々だったなぁ。やっとゆっくり休めると思った矢先で野営だったもんね。でも今回は大丈夫、心構えはできているもの)
一人で気合いを入れ直したアリシアは、その視線を再び窓の方へと向けた。
(……魔獣かぁ。まさか、シザーベアと同じような魔獣が現れるなんてことは、ないわよね?)
一抹の不安はありながらも、馬車は止まることなく進んでいく。
しかし、魔獣を警戒するあまり移動速度は予定よりも遅くなってしまい、予定していた都市へ到着する前に日が落ちてしまった。
休憩場所にベントナーの声が響き渡ると、護衛騎士たちは一斉に動き始めた。
天幕を片付け、荷物をまとめると、数分後には全員が隊列を組んで出発できる状態になる。
「ここから次の都市までは休憩なしで進むことになる! 全員、気を引き締めていけ!」
「「「「はっ!」」」」
こうして進み始めた馬車は、順調に道程を消化していった。
企みがあるとは知らないアリシアは、ここでも慣れない馬車移動に悩まされながらも今後のことを考えることで時間を潰していた。
しかし、途中で外が騒がしくなっていることに気づき、こっそりと窓から状況を確認した。
「――なんだと? まさか、魔獣なのか?」
「――こんな街道沿いに現れるなんて、あり得るのか?」
「――くそっ! すぐに防御の隊列に変更するんだ!」
アリシアが乗っている場所の周囲では護衛騎士たちの隊列が変更されていき、囲むようにして全方位を警戒している。
当然ながらその間は馬車も足を止め、安全が確保されるまで動けなくなる――そう思っていた。
「何をしている!」
そこへベントナーの声が響いてきた。
「ベントナー様! 魔獣が出ましたので、ひとまず安全の確保をと思いまして――」
「ならん! 貴様ら、大司祭様に夜まで野営をさせるつもりか!」
「で、ですが、このまま進めば大司祭様にも危険が――」
「俺様が守っているのだ、そんなことは決して起こらん! 貴様らは自分たちが怖いからと足を止めた、違うか!」
「そんなことはありません!」
「では進め! もしも野営になったら、貴様らの責任だと覚悟するんだな!」
そう告げたベントナーはさっさとホールトンの馬車へと戻っていき、そのまま進んでいってしまう。
どうするべきか迷っていたアリシアの護衛騎士たちだったが、従うことしかできない彼らは仕方なく元の隊列へ戻して馬車を走らせた。
「……大丈夫なの?」
疑問の声が思わず漏れてしまったが、彼らが悪いわけではないことを承知しているアリシアはそのまま椅子に腰かけた。
前世の時を思い出そうとしたが、今回の出来事は記憶になく、どう対処するべきかわからない。
ならばどうするべきかと考えると、結局は成り行きに任せるしかないという答えに至った。
「まあ、ホールトンやベントナーの考えを理解しろという方が難しいもんね」
アリシアは平民だ。そして馬車の周りにいる護衛騎士たちも平民だ。
しかしホールトンやベントナーは貴族であり、その子弟である。
貴族の思考を平民が理解しようという方が難しく、理解できたとしてもそれを納得できるかはまた別の話でもあった。
「王都までは何事もなく到着するはずだけど……まあ、これだけの護衛騎士を負かすような魔獣が現れるなんてことはないわよね」
そう自分に言い聞かせたアリシアは、夜の料理は何にしようかと考え始めた。
都市に入れば問題ないはずだが、それはホールトンたちだけの話である。
実を言えば都市に入れるのはホールトンたちだけであり、アリシアやゼーアを含む田舎騎士たちは予算の関係上、結局は野営をする羽目になるのだ。
(あの時は散々だったなぁ。やっとゆっくり休めると思った矢先で野営だったもんね。でも今回は大丈夫、心構えはできているもの)
一人で気合いを入れ直したアリシアは、その視線を再び窓の方へと向けた。
(……魔獣かぁ。まさか、シザーベアと同じような魔獣が現れるなんてことは、ないわよね?)
一抹の不安はありながらも、馬車は止まることなく進んでいく。
しかし、魔獣を警戒するあまり移動速度は予定よりも遅くなってしまい、予定していた都市へ到着する前に日が落ちてしまった。
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