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第一章:逆行聖女
第1話:プロローグ
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「――……私らしく、生きたらよかったかなぁ」
死ぬ間際、聖女アリシアからはそんな言葉が零れ落ちた。
田舎の村から聖女として王都にある聖教会に招かれたものの、元々が活発でお転婆な性格をしていたアリシアである。聖女として生きていくには肩身の狭い思いをし続けてきた。
聖女教育としておしとやかな立ち振る舞いを習い、言葉遣いも王侯貴族に通用する様な丁寧なものに矯正していった。
自由などどこにもなく、常に聖教会の神官たちから見張られ、聖女に似つかわしくない行いがあればすぐに注意されて過ごしてきた。
しかし、アリシアはそれにも耐えて聖女として国を支え続けてきた。
それもひとえに大事な家族がこの国で暮らしているからだった。
家族を守るために国を守る。そう考えることで、アリシアは辛い生活を耐えることができていた。
だが、最後の最後になり、彼女は国を守ることができなかった。
魔獣の大氾濫――スタンピードによって国を守る騎士団が崩壊し、冒険者たちも命を落としてしまった。
他国へ避難することもできたアリシアだったが、国を守るためにと王都に留まり傷ついた騎士や冒険者を治療し続けたのだ。
それでも国は滅んでしまった。
魔獣に蹂躙されてしまった。
そしてアリシアは、涎を垂らしながら今にも食らいつかんとする魔獣の群れに取り囲まれていた。
自分を押し殺してまで聖女として生きてきた人生だ。
アリシアは死ぬ間際、来世では自分らしく生きようと心に誓った。
「……悔しいなぁ。みんなのこと、助けたかったなぁ」
思わず零れ落ちた言葉と一緒に、涙が一筋だけ頬を伝い落ちていく。
直後――魔獣の群れがアリシアへと一斉に襲い掛かった。
すでに痛覚すら感じられなくなっていたアリシアは、自分の命が尽きていくのを静かに待ち続けたのだった。
◆◇◆◇
「…………な、なんで?」
死んだと、そう思っていた。
当然だ、魔獣に肉を、骨を、内臓を食われていったのだから。
それにもかかわらず、アリシアは目を覚ました。それも――懐かしい天井を見つめる形で。
「……何が、どうなっているの?」
困惑するアリシアはしばらくの間、そのままの態勢から動くことができなかった。
死ぬ間際、聖女アリシアからはそんな言葉が零れ落ちた。
田舎の村から聖女として王都にある聖教会に招かれたものの、元々が活発でお転婆な性格をしていたアリシアである。聖女として生きていくには肩身の狭い思いをし続けてきた。
聖女教育としておしとやかな立ち振る舞いを習い、言葉遣いも王侯貴族に通用する様な丁寧なものに矯正していった。
自由などどこにもなく、常に聖教会の神官たちから見張られ、聖女に似つかわしくない行いがあればすぐに注意されて過ごしてきた。
しかし、アリシアはそれにも耐えて聖女として国を支え続けてきた。
それもひとえに大事な家族がこの国で暮らしているからだった。
家族を守るために国を守る。そう考えることで、アリシアは辛い生活を耐えることができていた。
だが、最後の最後になり、彼女は国を守ることができなかった。
魔獣の大氾濫――スタンピードによって国を守る騎士団が崩壊し、冒険者たちも命を落としてしまった。
他国へ避難することもできたアリシアだったが、国を守るためにと王都に留まり傷ついた騎士や冒険者を治療し続けたのだ。
それでも国は滅んでしまった。
魔獣に蹂躙されてしまった。
そしてアリシアは、涎を垂らしながら今にも食らいつかんとする魔獣の群れに取り囲まれていた。
自分を押し殺してまで聖女として生きてきた人生だ。
アリシアは死ぬ間際、来世では自分らしく生きようと心に誓った。
「……悔しいなぁ。みんなのこと、助けたかったなぁ」
思わず零れ落ちた言葉と一緒に、涙が一筋だけ頬を伝い落ちていく。
直後――魔獣の群れがアリシアへと一斉に襲い掛かった。
すでに痛覚すら感じられなくなっていたアリシアは、自分の命が尽きていくのを静かに待ち続けたのだった。
◆◇◆◇
「…………な、なんで?」
死んだと、そう思っていた。
当然だ、魔獣に肉を、骨を、内臓を食われていったのだから。
それにもかかわらず、アリシアは目を覚ました。それも――懐かしい天井を見つめる形で。
「……何が、どうなっているの?」
困惑するアリシアはしばらくの間、そのままの態勢から動くことができなかった。
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