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第71話:緊急会議

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「戻りました、ミシャさん!」

 リディアルに到着すると、村の入り口ではミシャさんが待っていてくれた。

「ナイルさんの屋敷に集まってるから、行こう!」
「分かりました!」

 そのことを知らせてくれるために待っていてくれたのかと感謝しつつ、俺たちは足を止めずにナイルさんの屋敷へ向かう。
 屋敷の前ではティナさんが待ってくれております、こちらを見つけると声を上げた。

「リドルさん! よかった!」
「遅くなってすみません」
「ううん、無事だったから、いいんだ」

 どうやらティナさんにはだいぶ心配を掛けていたみたいだ。

「心配してくれてありがとう」
「みんな中にいるからね」
「分かりました。グースとゴンコをお願いします」

 俺はティナさんにグースとゴンコを任せて中に入ろうとしたのだが、そこへ再び声を掛けられる。

「あの、リドルさん!」
「どうしましたか?」

 振り返り声を掛けると、ティナさんは涙目になりながら口を開く。

「……村を、リディアルを、よろしくお願いします!」

 俺とそこまで歳も変わらないだろう少女が、リディアルのために頭を下げてくれている。
 ティナさんにとっては故郷であり、何ものにも変えることのできない場所なのだ。
 そんな彼女の気持ちを受け止めた俺は、表情を引き締めて答える。

「もちろんです! 全力を尽くして、絶対にリディアルを守ります!」

 そう答えた俺は、ミシャさんと一緒に屋敷の中へ入っていった。

「お待たせしました!」

 俺の声を聞いて、中にいた人たちが一斉にこちらを向いた。

「待っていたよ、リドル君」

 代表してナイルさんが声を掛けてくれたので、俺は一つ頷いてから開いている席に着いた。

「話はガズンさんから聞いた。何やら、巨大な気配が迫ってきているんだって?」
「はい。先ほどこちらに連れてきたグースとゴンコも何かを感じ取っているようだったので、魔獣にしか分からない気配なのかもしれません」

 そう説明したものの、それが解決につながるわけではない。
 分かったことは、ガルオンの言っていることが間違いなかった、ということだけなのだ。

「俺たちもやれることはやるが、正直なところ、どこまで力になれるかは分からない」
「リディアルの最高戦力は間違いなくレオとルナだし、俺たちは二匹の足元にも及ばないからな」
「むしろ、足手まといになっちゃうかも」

 ガズンさん、オルフェンさん、ミシャさんと意見を口にしてくれる。

「私の魔導具も小型や中型の魔獣には効くと思うけど、大型になってくるとどうかしら」

 続けてアニータさんも自らの魔導具について語ってくれたので、俺の中では簡単な配置は確定した。

「皆さんの言う通り、レオとルナが最高戦力であることは間違いないと俺も思います。ですが、ガズンさんたちも、アニータさんの魔導具も、俺たちには必要です」

 強い言葉でそう前置きを口にしたあと、俺は配置について口にしていく。

「巨大な気配、そいつを大型魔獣だと仮定して、そちらにはレオとルナ、それにガルオンで当たります」
「ガルア!」
「ミイイ!」
「ギルラ!」

 レオ、ルナ、ガルオンが力強く鳴きながら頷いてくれた。

「大型魔獣に気づいた魔の森の魔獣たちが縄張りを飛び出してくる可能性もあります。なので、ガズンさんたちにはリディアルの防衛をお願いしたいです」
「心得た」
「一緒に戦ってやれなくてすまねぇな、リドル」
「うん。本当にごめん」

 ガズンさんは自らの役割をしっかりと理解して頷いてくれたが、オルフェンさんとミシャさんは申し訳なさそうに声を漏らした。

「そんなことありません。皆さんがいてくれるから、俺も後ろを気にせずに前へ行けるんですから」
「そういうことだ。俺たちは俺たちの役割をしっかりと全うしよう」

 俺の言葉に続いて、ガズンさんは両脇に座っていたオルフェンさんとミシャさんの肩をポンと叩いた。

「アニータさんの魔導具もありったけ用意してください。もちろん、費用はこちらが持ちますので」
「ドーンと任せてちょうだい! ……と言いたいところだけど、費用はあまり気にしないでちょうだい」
「え? でも、いいんですか?」

 まさか費用を気にしないでと言われるとは思っておらず、聞き返してしまう。

「実は、ルッツさんが後援者になってくれて、比較的簡単に集められる素材に関しては融通してくれているのよ」
「え! そうだったんですか!!」

 俺は驚きの声を上げながら、視線をルッツさんへ向けた。

「アニータさんの魔導具の腕は一流を超えた、超一流です。ここで後援者に名乗りを上げなければ、商人として二流……いいえ、三流以下になってしまうでしょうね」
「ということは、アグリコさんも?」
「いいえ、私はまだ後援者になれるような力を持ち合わせていないので、仕事のパートナーとして協力できればと思っています」

 思いがけない事実を耳にしながらも、それならば魔導具を使用したリディアルの防衛は問題ないと安堵する。
 あとはレオとルナ、そしてガルオンの三匹だけで大型魔獣を倒すことができるのか、という問題だ。

「ガルオンは大型魔獣がどんな魔獣なのか知っているのか? それに、レオとルナは?」

 気配を感じ取れているということは、どれだけ大きな魔獣なのかも分からないのかと思い、俺は三匹に聞いてみた。
 しかし、その答えを聞く前にことは進み始めてしまう。

『――オオオオオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオォォッ!!』

 建物を震わせるほどに巨大で、恐怖を植え付けるような重低音の大咆哮が、リディアル全域に響き渡ったのだ。
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