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第54話:魔の森の魔獣
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◆◇◆◇
『――……懐かしい気配だのぅ』
魔の森の奥、そこを縄張りとしている巨大な魔獣が、人語を介してそう呟いた。
誰も聞いてはいない、ただの独り言だ。
しかし、その声音はどこか懐かしむような、そんなニュアンスを含んでいる。
『ん? ……すぐに、消えた? ふむ、よく分からんが、消えてしもうたか』
懐かしい気配は魔獣が感じ取ってから数分で消えてしまい、何が起きたのか、すぐには理解できなかった。
『……くくくく、これほど興味を刺激されたのは、数一〇〇年ぶりではないか!』
巨大な魔獣はそう声を上げると、地面に寝かせていた長い首をゆっくりと持ち上げる。
そのまま吹き抜けとなっている洞窟の天井へ視線を向けると、そこには雲一つない青空が浮かんでいた。
『……行ってみるか』
巨大な魔獣は、呟くと同時にニヤリと笑った。
――バサッ! バサッ!
そして、背中に生えた逞しく、大きな翼が、数一〇〇年ぶりに羽ばたきを開始した。
猛烈な突風が洞窟内を駆け巡り、場所によっては崩落を余儀なくされる。
ここは魔獣のねぐらなのだろうが、そんなことなどお構いなしに、羽ばたきが繰り返された。
そして――巨大な魔獣の体がフワリと浮いた。
『ふむ、外に出るのもこれまた数一〇〇年ぶりだ。せっかくだ、道中のならず者共を蹴散らしながら向かうとするか』
興味を刺激されたが、どうせそれを見たら興味をなくすだろうとも考えていた。
だからこそ巨大な魔獣は、今回の外出を楽しもうと決めた。
また戻ってきたら、数一〇〇年は退屈し、身動き一つ取らずに眠りにつくことになるだろうことが分かっているからだ。
『さて、行くかのう!』
数一〇〇年ぶりの外出は、巨大な魔獣の心を思いのほか高ぶらせていた。
天井の吹き抜けから巨大な魔獣が飛び出すと、その猛烈な勢いによって、ねぐらにしていた洞窟は完全に崩落し、使い物にならなくなってしまった。
『なんと! ……まあ、ねぐらはまた探せばいいか。我くらいになれば、すぐに見つけられるだろうからな! それに、見つからなければ奪えばいい! では改めて……行くかのう! がはははは!』
崩落した洞窟を見下ろしながらそんなことを呟いた巨大な魔獣は、すぐに気持ちを切り替えて飛んでいく。
魔の森のさらに奥――ではなく、森が途切れるか途切れないかの境へ向かう。
その先に何があるのか、懐かしい気配の正体はなんなのか。
巨大な魔獣は楽しそうな笑い声を響かせながら、空を突き進んでいく。
◆◇◆◇
『――……懐かしい気配だのぅ』
魔の森の奥、そこを縄張りとしている巨大な魔獣が、人語を介してそう呟いた。
誰も聞いてはいない、ただの独り言だ。
しかし、その声音はどこか懐かしむような、そんなニュアンスを含んでいる。
『ん? ……すぐに、消えた? ふむ、よく分からんが、消えてしもうたか』
懐かしい気配は魔獣が感じ取ってから数分で消えてしまい、何が起きたのか、すぐには理解できなかった。
『……くくくく、これほど興味を刺激されたのは、数一〇〇年ぶりではないか!』
巨大な魔獣はそう声を上げると、地面に寝かせていた長い首をゆっくりと持ち上げる。
そのまま吹き抜けとなっている洞窟の天井へ視線を向けると、そこには雲一つない青空が浮かんでいた。
『……行ってみるか』
巨大な魔獣は、呟くと同時にニヤリと笑った。
――バサッ! バサッ!
そして、背中に生えた逞しく、大きな翼が、数一〇〇年ぶりに羽ばたきを開始した。
猛烈な突風が洞窟内を駆け巡り、場所によっては崩落を余儀なくされる。
ここは魔獣のねぐらなのだろうが、そんなことなどお構いなしに、羽ばたきが繰り返された。
そして――巨大な魔獣の体がフワリと浮いた。
『ふむ、外に出るのもこれまた数一〇〇年ぶりだ。せっかくだ、道中のならず者共を蹴散らしながら向かうとするか』
興味を刺激されたが、どうせそれを見たら興味をなくすだろうとも考えていた。
だからこそ巨大な魔獣は、今回の外出を楽しもうと決めた。
また戻ってきたら、数一〇〇年は退屈し、身動き一つ取らずに眠りにつくことになるだろうことが分かっているからだ。
『さて、行くかのう!』
数一〇〇年ぶりの外出は、巨大な魔獣の心を思いのほか高ぶらせていた。
天井の吹き抜けから巨大な魔獣が飛び出すと、その猛烈な勢いによって、ねぐらにしていた洞窟は完全に崩落し、使い物にならなくなってしまった。
『なんと! ……まあ、ねぐらはまた探せばいいか。我くらいになれば、すぐに見つけられるだろうからな! それに、見つからなければ奪えばいい! では改めて……行くかのう! がはははは!』
崩落した洞窟を見下ろしながらそんなことを呟いた巨大な魔獣は、すぐに気持ちを切り替えて飛んでいく。
魔の森のさらに奥――ではなく、森が途切れるか途切れないかの境へ向かう。
その先に何があるのか、懐かしい気配の正体はなんなのか。
巨大な魔獣は楽しそうな笑い声を響かせながら、空を突き進んでいく。
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