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第26話:魔導具師の女性
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ティナさんの案内で森の外周を進んでいくと、一軒の小屋がポツンと建っているのを見つけた。
場所的には街道からも離れており、あえて足を運ばなければ見つけられないようなところに位置している。
「こんなところに小屋を建てただなんて、物好きな人だな」
そんなことを口にしながら、俺たちは小屋の前までやってきた。
「いったいどんな人なんだろう」
ものすごく偏屈な人だったらどうしようかな。
最悪、引っ越しを断固拒否! みたいな人だったら、ティナさんには悪いけど諦めてもらうしかないかも。
「アニータさーん! 大丈夫ー!」
するとティナが扉をノックしながら、そう声を掛けた。
最初の声掛けが『大丈夫』というのは、すでに大丈夫ではない気がするのだが、俺だけだろうか。
そんなことを考えていると、中からバタバタと足音が聞こえてきた。そして――
――バンッ!
「ティ、ティナちゃ~ん! 待ってたよ~!」
…………えっと、偏屈でもなければ、魔導具師として研究に従事している研究者という感じでもない。
いうなれば、普通の一般女性、といった感じだ。
「どうしたの?」
「お腹が、お腹が~! ……って、えぇっ!? だ、誰ですか、あなたは!!」
ようやく俺の存在に気づいたようで、アニータと呼ばれた女性は驚きの声をあげながら、小屋の中へ後退っていく。
「この人は新しい領主様だよ、アニータさん!」
「へ? ……りょ、りょりょりょりょ! 領主様ですってええええぇぇ~!?」
「えっと、はい。この地の新領主になりました、リドル・ブリードです」
この人、いったい何回驚けば気が済むのだろうか。
まあ、いきなり現れて新領主ですと言われたら、それは驚くだろうけど。
「……う、嘘ね!」
「「……へ?」」
「あなたは嘘をついている! 可愛くて愛らしいティナちゃんは騙せても、私は騙されないわよ!」
……この人、マジで言っているのだろうか?
「ガルルルル!」
「ミイイィィ!」
「ひいいいいっ!?」
おっと、落ち着きなさい、レオにルナ。
どうやらアニータさんが俺に敵意を抱いたことで、威嚇をしたようだ。
「この人は悪い人じゃないんだよー。ただ勘違いしているだけなんだよー」
「……ガウ?」
「ミー?」
「うんうん、そうなんだ。だから気にしないでいいんだよ」
とっても可哀そうな人なんだよ、とは言わないでおこう。
「もう! そんなこと言ってたら、助けてあげないよ、アニータさん!」
「ガーン!」
……ガーンを実際に口に出す人、前世から思い返しても初めて見たかも。
「あの、俺は本当に新領主で、ブリード家の人間です。まあ、ほとんど追放されたような感じなんですけど」
「……きっ!」
いや、睨む時の効果音まで口に出すのか。ここまで来るとむしろ面白いな、この人。
とはいえ、このままでは話がまったく進まないので、少しばかり強引に話を進めることにする。
「一応、俺はティナさんにお願いされて、アニータさんが村へ引っ越ししてくれるよう、説得しに来ました」
「行かないわよ!」
「えぇ、それでも構いません」
「……えぇっ!?」
いや、なんであなたが驚くんですか、アニータさん?
「ティナさんには悪いけど、ここまで拒否されてしまうと、俺にはどうすることもできないよ」
厳しいようだが、これは事実だ。
決めるのはアニータさんだし、説得すらできないのであれば、諦めてもらうしかない。
「……うん、そうだよね」
するとティナさんも仕方がないと思ったのか、俯きながらも納得してくれた。
「え? えぇ?」
いや、だからなんであなたが狼狽えているんですか、アニータさん?
……もしかしてこの人、本当は引っ越したいんじゃないのか? それで、一度ここに小屋まで造っちゃったから、引っ込みがつかなくなっているとか?
「……あ、あのー、ティナちゃーん? もう少し説得してくれてもいいんだよー?」
「ううん、大丈夫。アニータさんが心配でリドルさんに声を掛けたけど、無理は良くないもんね」
「うんうん、そうだね。無理は良くないよ、本当に」
というわけで、俺たちは踵を返してアニータさんの小屋を去ろうとする。
「ちょっと待ってええええっ!」
……うん、そう言うと思ってましたよ。
「どうしましたか?」
「えっと、その……せ、せっかく来たんだし、中でお茶でも飲まない?」
「いいえ。領主として忙しいので、失礼しますね」
「ごめんね、アニータさん」
「ぐはっ!?」
何気にティナさんの一言一言が、アニータさんの心に突き刺さっているみたいだ。
「……ぅぅ~……ぅぅぅぅ~~……! ご、ごべんなざああああい!」
どうやら耐えきれなくなったようだ。
アニータさんは呻き声のあと、いきなり泣き出しながら謝罪を口にした。
場所的には街道からも離れており、あえて足を運ばなければ見つけられないようなところに位置している。
「こんなところに小屋を建てただなんて、物好きな人だな」
そんなことを口にしながら、俺たちは小屋の前までやってきた。
「いったいどんな人なんだろう」
ものすごく偏屈な人だったらどうしようかな。
最悪、引っ越しを断固拒否! みたいな人だったら、ティナさんには悪いけど諦めてもらうしかないかも。
「アニータさーん! 大丈夫ー!」
するとティナが扉をノックしながら、そう声を掛けた。
最初の声掛けが『大丈夫』というのは、すでに大丈夫ではない気がするのだが、俺だけだろうか。
そんなことを考えていると、中からバタバタと足音が聞こえてきた。そして――
――バンッ!
「ティ、ティナちゃ~ん! 待ってたよ~!」
…………えっと、偏屈でもなければ、魔導具師として研究に従事している研究者という感じでもない。
いうなれば、普通の一般女性、といった感じだ。
「どうしたの?」
「お腹が、お腹が~! ……って、えぇっ!? だ、誰ですか、あなたは!!」
ようやく俺の存在に気づいたようで、アニータと呼ばれた女性は驚きの声をあげながら、小屋の中へ後退っていく。
「この人は新しい領主様だよ、アニータさん!」
「へ? ……りょ、りょりょりょりょ! 領主様ですってええええぇぇ~!?」
「えっと、はい。この地の新領主になりました、リドル・ブリードです」
この人、いったい何回驚けば気が済むのだろうか。
まあ、いきなり現れて新領主ですと言われたら、それは驚くだろうけど。
「……う、嘘ね!」
「「……へ?」」
「あなたは嘘をついている! 可愛くて愛らしいティナちゃんは騙せても、私は騙されないわよ!」
……この人、マジで言っているのだろうか?
「ガルルルル!」
「ミイイィィ!」
「ひいいいいっ!?」
おっと、落ち着きなさい、レオにルナ。
どうやらアニータさんが俺に敵意を抱いたことで、威嚇をしたようだ。
「この人は悪い人じゃないんだよー。ただ勘違いしているだけなんだよー」
「……ガウ?」
「ミー?」
「うんうん、そうなんだ。だから気にしないでいいんだよ」
とっても可哀そうな人なんだよ、とは言わないでおこう。
「もう! そんなこと言ってたら、助けてあげないよ、アニータさん!」
「ガーン!」
……ガーンを実際に口に出す人、前世から思い返しても初めて見たかも。
「あの、俺は本当に新領主で、ブリード家の人間です。まあ、ほとんど追放されたような感じなんですけど」
「……きっ!」
いや、睨む時の効果音まで口に出すのか。ここまで来るとむしろ面白いな、この人。
とはいえ、このままでは話がまったく進まないので、少しばかり強引に話を進めることにする。
「一応、俺はティナさんにお願いされて、アニータさんが村へ引っ越ししてくれるよう、説得しに来ました」
「行かないわよ!」
「えぇ、それでも構いません」
「……えぇっ!?」
いや、なんであなたが驚くんですか、アニータさん?
「ティナさんには悪いけど、ここまで拒否されてしまうと、俺にはどうすることもできないよ」
厳しいようだが、これは事実だ。
決めるのはアニータさんだし、説得すらできないのであれば、諦めてもらうしかない。
「……うん、そうだよね」
するとティナさんも仕方がないと思ったのか、俯きながらも納得してくれた。
「え? えぇ?」
いや、だからなんであなたが狼狽えているんですか、アニータさん?
……もしかしてこの人、本当は引っ越したいんじゃないのか? それで、一度ここに小屋まで造っちゃったから、引っ込みがつかなくなっているとか?
「……あ、あのー、ティナちゃーん? もう少し説得してくれてもいいんだよー?」
「ううん、大丈夫。アニータさんが心配でリドルさんに声を掛けたけど、無理は良くないもんね」
「うんうん、そうだね。無理は良くないよ、本当に」
というわけで、俺たちは踵を返してアニータさんの小屋を去ろうとする。
「ちょっと待ってええええっ!」
……うん、そう言うと思ってましたよ。
「どうしましたか?」
「えっと、その……せ、せっかく来たんだし、中でお茶でも飲まない?」
「いいえ。領主として忙しいので、失礼しますね」
「ごめんね、アニータさん」
「ぐはっ!?」
何気にティナさんの一言一言が、アニータさんの心に突き刺さっているみたいだ。
「……ぅぅ~……ぅぅぅぅ~~……! ご、ごべんなざああああい!」
どうやら耐えきれなくなったようだ。
アニータさんは呻き声のあと、いきなり泣き出しながら謝罪を口にした。
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