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第13話:作物の収穫

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 はっきり言うけど、これは完全に予想外です。
 しかも、早くて三日と言っていた作物だけではなく、五日と言っていた作物まで育っているのだ。

「ど、どどどど、どういうことですか、ナイルさん!」
「それは私が聞きたいよ、リドルさん!」
「いやはや、これは驚きましたね」

 興奮しっぱなしの俺とナイルさんとは違い、ルッツさんは冷静に畑の様子を眺めている。
 そこへ遅れてやってきたルミナさんとティナさんの声が聞こえてくる。

「あなた、どうしたの……え?」
「うわー! お父さん、すごいね! もう育ったの?」

 畑の状況を見て唖然としてしまったルミナさんとは違い、ティナさんは嬉しそうに声をあげながらも、どうして育っているのかという疑問を口にした。

「……いや、私にもさっぱりだ」
「もしかして、ゴンコが作ってくれた土が、ものすごく栄養豊富な土だったってことかも?」
「いやいやいやいや! だからといって一日で発芽を通り越して、食べられるまで育つなんて、あり得ませんから!」

 ……だよなー。俺も自分で言ってみて、おかしいなって思うもんなー。
 だけど、目の前には実際に育った作物があるんだから、疑いようがないんだよね。

「……と、とりあえず、食べてみますか?」
「……う、うむ、そうだね。育っているからといって、食べられなければ意味がないからね」

 俺が提案すると、ナイルさんもドキドキしているのか、ゆっくりと畑の方へ歩いていき、野菜を一本抜いてみた。
 パッと見ではカブのように見える白い作物だ。

「あなた、お水です」
「あぁ、ありがとう」

 すぐにルミナさんが桶に水を入れて運んでくれ、その水で土を洗い落としていく。

「……では、一口」

 しばらくカブを見つめていたナイルさんだったが、意を決してそのままかぶりついた。

 ――シャキ。

 こちらまで聞こえてきたカブをかじる音に、俺たちはゴクリと唾を飲み込んでしまう。

「……な、なんだこれは!」
「どうしたんですか、あなた!」

 突然大声を上げたナイルさんに、ルミナさんが慌てて声を掛けた。

「う、美味い! 美味すぎる!!」
「「「「……え?」」」」

 まさかの美味い発言に、俺たちはポカンとしながら声を漏らしてしまった。
 その後、ナイルさんは勢いよくカブを食べ進めていき、あっという間に一本を食べ終わってしまった。

「……はっ! す、すまない! あまりに美味しすぎて、食べる勢いを抑えることができなかった!」
「わ、私たちもいただきましょう、ティナ!」
「わーい! リドルさんもルッツさんも、一緒に食べましょう!」

 早く食べたかったのだろう、ルミナさんは大急ぎで四本のカブを畑から抜くと、桶に突っ込んで土を洗い落としていく。
 そしてティナさんや俺たちに手渡すと、四人同時にかぶりついた。

「……マジか!」
「……これは!」
「……なんてことなの!」
「……ん~! 美味しいね~!!」

 思わず声が出てしまうくらいに、ものすごく美味しいカブだった。
 ブリード家にいた時にも食べたことがないくらいみずみずしく、そして深い味わいのカブに、自然と笑みがこぼれてしまう。

「カブがこれだけ美味しいんだ、他の野菜もきっと美味しいぞ!」
「あなた、味見しましょうよ!」
「私もー! ねえ、私もしたいー!」

 それから俺たちは、早朝から育った作物の試食会を行うことにした。
 今回種を植えていたのはカブ、トマト、ニンジン、レタスの四種類。
 カブは最初に食べていたので、残る三種類の作物を人数分だけ収穫する。

「それじゃあ、全員にいきわたったわね?」
「「「「はーい!」」」」

 ルミナさんの確認に、全員が返事をした。

「それでは皆さん、ご一緒に!」
「「「「「いただきまーす!」」」」」

 …………う……うう……うめええええぇぇっ!!
 なんだよ、このトマト! さっきのカブもみずみずしかったけど、その比じゃないくらいに水分量が多くて、とにかく甘い!
 こんなにも甘くて、ジューシーなトマトは、前世でも食べたことがないぞ!

「これは、素晴らしすぎますね! 王都でも食べたことがない味わいです!」
「まさか、この土地でこんなにも美味しい野菜が食べられるとは……」
「うふふ~。黄金コロガシ……いいえ、ゴンコとグースのおかげね~」
「こんなに美味しいお野菜初めて! ありがとう! ゴンコ、グース!」
「ギギ~」
「モグ~」

 ルミナさんとティナさんからの褒め言葉に、ゴンコとグースはまんざらでもなさそうだ。
 ……いいな、この感じ。やっぱり小型従魔にだって、できることはたくさんあるんだ。
 というか、今回のこの美味しい野菜たちは、小型従魔じゃないと作れなかっただろう。

「……嬉しいな、こういうのって」
「ガウ~」
「ミ~」

 するとここで、レオとルナが羨ましそうにこちらを見てきた。

「……そうだよな。お前たちも食べたいよな!」
「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「ナイルさん! 従魔たちにも食べさせてあげていいですか?」
「もちろんだよ、リドルさん!」

 ナイルさんからも許可を得られたので、俺は四匹分の野菜を収穫し、きれいに洗ってから差し出した。

「お前たちがいなかったら、作れなかった野菜だよ。ほら、食べてみて」
「ガウガーウ!」
「ミーミミー!」
「モグモーグ!」
「ギーギギー!」

 四匹がそれぞれ、野菜を食べ始める。
 すると、一口食べてからは目を輝かせ、夢中になって食べ始めた。
 人間だけではなく、従魔にとっても、ここの野菜はとても美味しいものだったようだ。

「うおっ!? どうなってんだ、こりゃ?」
「いったい何があったんですか、村長!」
「すごーい! ねえ、ティナちゃん! 私たちも食べてみたいよー!」

 しばらくすると、村人たちもナイルさんの畑の変化に気づき、ぞろぞろと集まってきた。

「説明はあとだ! まずはみんな、これを食べてみてくれ! 美味いぞ!」
「これも全部、リドルさんと、その従魔たちのおかげなの!」
「強くて! 可愛くて! お野菜を作るのも上手なんだよ!」

 そからしばらくの間は、育った野菜を村人へ分け与え、みんなが美味いと口にしながら食べていた。
 今はまだナイルさんの畑だけだったけど、村の畑を全て改善できるように頑張らないとな。
 ……それとね、ティナちゃん。強いのはついでで、俺の従魔は可愛いが一番だからね!
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