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第8話:問題解決に向けて

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 再び森にやってきた俺は、地面の土を触ってみる。

「……確かに、村の中の地面よりも粘り気があるな」

 農業については詳しくないものの、乾燥した土地では作物が育ちにくいというのは、なんとなく分かる。
 乾燥地帯でも育つ作物があれば話は別だが、そうでなければ土の改善から始めなければならないだろう。

「土の改善に役立ちそうな小型魔獣かぁ……とりあえず、奥に進みながら探してみよう、レオ、ルナ」
「ガウガウ!」
「ミーミー!」

 ナイルさんたちとの話し合いの最中、二匹はとてもおとなしくしてくれていた。
 だからだろうか、森に入ってからは俺の足元に留まることなく、あちらこちらを駆け回っている。
 元気なのは何よりだが、いきなり魔獣が飛び出してくるなんてこともあるかもしれないので、気をつけてもらいたいところではあるけど。

「うーん、俺だと魔獣の気配とかさっぱりなんだよな。なあ、レオ、ルナ。近くに魔獣の気配とかあったりするのか?」
「ガウー?」
「ミー?」

 走り回っている二匹の声を掛けると、同時に首を傾げながら返事をしてきた。

「まあ、それもそうか。分からないよ――」
「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「って、おーい!」

 分からないだろうと思っていた矢先、二匹が突然同じ方向へ走り出した。
 そこに魔獣がいるのかもしれないけど……待て待て、俺の護衛はどうするんだよ!

「お前たちがいなかったら俺、殺されちゃうってばぁー!」

 大慌てで二匹を追い掛けていくと、進んだ先で驚きの光景を目の当たりにした。

「……え? なんだ、ここ?」

 そこは魔の森と言われている場所には似つかわしくない、色とりどりの花が咲いている場所だった。

「ガウ! ガウガウ!」
「ミー! ミミー!」
「……ここに小型魔獣がいるって?」

 この花畑を縄張りにしているということは、土の改善にも役立つ魔獣かもしれない。
 ただし問題は、そいつが小型なのか否かである。
 小型魔獣でなければ俺はテイムすることができないわけで、さらに言えばこの花畑を作った魔獣を狩ることになるかもしれない。
 ……さて、いったいどんな魔獣が出てくるのか。

「ガルルゥゥ!」
「ミイイィィ!」

 すると急にレオとルナが唸り声をあげた。
 どうやら魔獣が現れたようで、俺は二匹が向いている方へ視線を向ける。

 ――ぼこん。

「……ん?」
「……モグ?」

 …………あれはー……モグラ、だよな?

「モグ!? モ、モグモグ~!!」
「あぁ! ちょっと待ってくれ!」

 俺たちの姿を見たモグラの魔獣が、慌てて出てきた穴へ戻ろうとしたのを見て、俺も同じように慌てて声を掛けた。

「……モ、モグ~?」
「俺たちはお前を倒しに来たんじゃないんだ。この花たちは、お前が育てたのか?」
「……モグ」

 どうやら俺の言葉が通じたみたいで、モグラの魔獣は小さく首を縦に振った。

「実は今、土の改善に役立つ魔獣を探しているんだ。どうだろう、力を貸してくれないか?」
「モグ~? モグモグー!」
「大丈夫、ここはそのままにするからさ」

 こんなにも奇麗な花畑を壊すようなことはしたくない。
 村からも比較的近い場所だし、いずれは村の規模をここまで広げてもいいくらいだ。

「頼む! お前の力が必要なんだ!」
「モグ~……」

 可愛らしい小さな腕を組み、悩んでいるモグラの魔獣。
 俺が黙って見つめていると、考えがまとまったのかモグラの魔獣がこちらを見た。

「……モグ!」

 モグラの魔獣は縦に大きく首を振ってくれた。

「ほ、本当か!」
「モグモグ!」
「ありがとう! それじゃあ、テイムしてもいいかな?」
「モグー!」

 組んでいた右腕を上げ、今度は何度も頷いてくれた。
 俺はモグラの魔獣へと近づき、上げてくれた右手に自分の右手を重ねる。
 すると、触れている場所から白い光が現れ、お互いを包み込んでいく。
 最後には光がお互いの体の中へ消えていき、テイムが完了した。

「よし、テイム完了だ。これからよろしくな!」
「モグー!」

 テイムが完了すると、モグラの魔獣が嬉しそうに声をあげた。

「ガウー!」
「ミーミー!」
「モグモグ!」

 そこへレオとルナが近づいていき、新しい仲間へ挨拶をしていた。

「さて、まずは名前を考えないとだな。まずは種族だけど……ふむふむ、グラスモグラか」

 グラスって、メガネ的な? サングラス的な?
 まあ、目の周りが黒くなっているし、どちらかというとサングラス的な感じなのかもしれないな。

「レオにルナだし……うん、お前の名前はグースだ!」
「モグー!」
「よろしくな、グース!」
「モグモグ!」

 グースの名前も決まったことだし、確認しなければならないことがある。

「なあ、グース。ここの花畑の土だけど、これはお前が作ったのか?」

 モグラなだけに、土を耕すことはできそうだが、土の改善ができるかどうかは正直分からない。
 なので俺は直接グースに聞いた方が早いと思ったのだが、果たして。

「モグー? ……モググ」
「え? 違うのか?」
「モグ」

 グースが頷いたのを見て、俺は頭を抱えてしまう。
 花畑の土をグースが作っていたのなら、すぐにでも村に戻って土の改善をナイルさんに提案したかったんだが……無理のようだ。

「モグモグー! モッググー!」
「それ、本当か!」
「モグモグー!」

 そうか、冷静に考えればその通りだよな。
 花畑の土が栄養豊富なのは間違いない。何せこれだけ奇麗に花が育っているんだから。
 そして、この土を作った魔獣のことを、花畑を縄張りにしているグースが知らないはずがないんだ!

「紹介してくれ、グース! 栄養豊富な土を作ってくれた、その魔獣を!」
「モーグー!」

 元気よく返事をしてくれたグースに感謝しながら、俺は自然と拳をグッと握りしめていた。
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