上 下
6 / 9

5

しおりを挟む
「まぁ!勇者様が夜会にご参加とは…!勇者様~私と1曲どうですか?」
「…誰?ヤダ他当たって」
「え…?」

シュンが他の人にこんな失礼な態度取ってても今の俺には関係がない。
それ以外のことで頭埋まってるから。

「リヴィア…?大丈夫疲れた?」
「…ん…大丈夫だけど…ぉ…お前…」
「…なぁに?可愛いね…」
「お前…楽しんでんだろ…?!俺の反応見て……!」
「…違うよホラ」

手を引かれてシュンの胸元に手を当てる。

「…好きな人エスコートしてるんだから、俺だってドキドキしてるよ」
「…ぁ…ぉバカ!…」
「……可愛い~…俺死んじゃうかも…」

シュンにエスコートされながら飲み物をとってテラスへ行くと少しだけ肌寒い風が吹いていて俺の熱すぎる頬を冷ましてくれた。

「…今日さ…本当はあんまり乗り気じゃなかったんだけど、隣に…リヴィアがいたから俺人生で1番楽しかったかも…」
「……シュン…お…俺も楽しかったし…お前の事…」

「リヴィア…?」

「…リュカ……?」
「…誰?…この人…」

熱で浮かれていた俺の心がヒュっと音を立てて冷たくなる。
今1番会いたくなかったのに……そうだ…リュカが居るから夜会は嫌だったんだ。

「……なんでここに…お前は…ルイの近くに居てやれよ……」
「リヴィア…すまなかった!お前に何も言わないままで!話を聞いてくれ!」
「…今更…話すことなんて無いだろ…お前は…俺みたいな奴を弄ぶクズだ…!」

もう終わったんだ…リュカとは…終わったはずだろ…

「……お前を…リヴィアを騙すつもりじゃなかったんだ。」
「ねぇアンタさっきからなんなの?…コレ見てからもの言ってよ。」

そう言いながらシュンが触ったのはシュンがくれた黒のブローチ。

「…リヴィア…なぁリヴィア…最後に一言教えてくれ…リヴィアは俺を愛してくれていたのか…?」
「……愛していたから…団長にまでなったんだろ…」
「……ありがとう…本当に…ごめん…」

このままでは…俺が本当に惨めだ…ダメだなぁ…もう吹っ切れたハズなのに…俺…ダサすぎる…

「…リヴィア…さっきの…元彼?…」
「……そう…じゃなかったのかもな…」
「何それ…」

リュカは俺の最初の護衛対象だった伯爵家の次男で、俺をよく気にかけてくれていた男だった。
まだまだウブだった俺は、気に入られて、恋に落ちて、デートして…付き合って。
でも俺は平民で、認められはしないだろう?だから頑張って団長にまでなったんだ。

その時まだ20歳、その時3年前に召喚された気の弱い勇者がいたんだ。
名前はルイ。俺より小さくて164cm位の可愛い男の子だった。

病弱で、健気で、国の為に頑張った。
こんな気の強い俺とは真逆のルイは、3年前からリュカの本命だった。

元々、リュカはその時荒れていたんだ他にも人は沢山居たハズで…それを見抜けなかった俺が悪い。

それを知った俺はキレたし、リュカに、当たった。
それを知ったルイは俺に謝ったんだ。
「ごめんなさい」その言葉が当時の俺からしたら煽りにしかならなくて、泣いて泣いて、やっと吹っ切れて。

でもリュカは違った、俺に会おうとしたし、ルイも同様。
平民でもあくまで騎士団長、伯爵家以上の地位があるし、そこら辺ビビったのかは知らないけどさ

「リヴィア…俺じゃダメ?」
「シュン…?」

正面にたっていたシュンが俺を優しく抱き寄せて言った。

「歳下だし、わがままも言うし、なんなら異世界から来た人間だけどさ…俺リヴィアが好きだよ、俺はリヴィアしか愛せない、だからさ…俺を貰ってよ……俺ならそんな顔させない…」
「…シュン…俺さ…27歳こんなナリでも、1人は嫌だし、隠し事も嫌だ、思ってるよりもずっと重いんだ…こんな俺でもお前は許してくれる?」
「……許すも何も…俺はずっと一緒に居るよ。好きも愛してるも、言葉だけじゃなく行動で示してみせる。」
「…そうかよ…いいぜ貰ってやる。」

思わず溢れた涙をシュンが拭ってくれる。
慣れない色恋沙汰も、シュンが教えてくれるなら良いのかなって心から思ったんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

突然現れたアイドルを家に匿うことになりました

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。 凪沢優貴(20)人気アイドル。 日向影虎(20)平凡。工場作業員。 高埜(21)日向の同僚。 久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

処理中です...