【完】ちょっと前まで可愛い後輩だったじゃん!!

福の島

文字の大きさ
上 下
7 / 8

【完】ロク

しおりを挟む
光…闇……王族…巡り人……

あーあ…俺には重いな~…

「ユウマ」
「……エル」

エルドレッドにも…悪いな…俺今までお前に好かれてんだと思って…

でも…

気持ち的には楽なんだよ……今が……

「ユウマこっちを見て…」
「……エル?」

普段から何を考えてるのか分からない、赤いエルドレッドの瞳には、暗い顔をした俺が写っていた。

グイッと引き寄せられるがままエルにもたれ掛かる。

「ユウマ好きです、好きなんです…!貴方が…どうしようも無い程に…!」
「やめろ…まだ城に着いてないだろ。」
「…私の前から消えないで…!」

背中に回る大きい手とか、ピッタリくっ付いた太ももとか。
エルが触れたとこ全部暑くて…ドキドキして……ぐちゃぐちゃで……

「……そんな顔、今までしなかったじゃないですか……っ」

どんな顔だよ、

「……愛おしい…私の…私だけのユウマ。」

あ…でも…分かるかも、俺…お前の傍に居ると幸せなんだ。落ち着くんだ。辛いこと全部忘れられる…。




「………もう…好きにしてくれ……」


「…ユウマ……?」



「…俺の事好きなんだろ……?」

「当たり前ですよ」



その顔…ほんとに勘違いする…俺を…俺だけを…見て欲しいって…思う…

「……なら…抱けよ、もう…めちゃくちゃにしてくれ」

「……ユウマ」

底に溜まった涙は、俺の知らぬ間に流れてて、酷く霞んだ声になった。

「………ごめん……」

……エル……エルドレッド…ごめん…ごめんなさい…好き…好きなんだよ……ずっと前から思ってた…

「……ぅ…うぅ……」
「……ユウマ」

抱きしめられた俺の体を、抵抗してない俺を…エルドレッドは一向に暴こうとしない。

いっつもこうだ…上手くできない…昔のことずっと引きずって…

「ごめん…好き。」
「ユウマ…?」

「すき…だいすき…ごめん…なさい」


「……俺が好きになると…死んじゃうから…!ずっと…エルも…って…怖かった!」

「ユウマ…それ…どういう事…?」

「父さんも…俺を庇って死んだ……母さんは俺を産んで死んだ…ばぁちゃんだって…俺が…俺がガキだったから……大変な思いして…」

本当は、分かってる、全部偶然だって。
でも…怖いもんは怖いんだよ。

父さんが撥ねられたトラックからした鈍い音も…最後の顔も…血も…全部覚えてる。

だから…エルも……って思うと…怖いんだよ……

「ユウマ…私は死なない…それに、自分の身位自分で守れる、それはユウマだってそうだ。」
「……」
「…私は、貴方のために死にません。」
「……エル…」

「それでも、私は自分の為に、貴方を安全な場所に置いておきます。たとえ戦の最中でも。」

「それじゃ…!んぐっ…!ぅあ…っ!」
「…ユウマ」

……エルの顔が…近い…し…これ…キス…してる……

「知ってました?うるさい口はキスで塞ぐんですよ。」
「っぁ…ひぁ!…しらな…い!」

しつこいくらい口を合わせると、嫌でも体がエルを拾う。

「も…!や!!うざい!!」

「…残念です。ふられちゃいましたね…?」

「知って…知ってるんだからな!お前が俺のオーラが好きなのは!!」
「……だけ?それはそれは…そんな事言ったのは誰ですか?分かっていませんね…」

「私はエルドレッド・ロマームとして、七瀬優馬。貴方が好きです。」

いつの間にか…アイツの憎たらしい顔には笑みが戻ってて、俺もなんでだか…嬉しくなって。



「……俺もだよバーカ!!」



王家の…無駄にでかい馬車の中で、外から丸見えのこの馬車で、自分からキスをするという醜態を晒していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

とある冒険者達の話

灯倉日鈴(合歓鈴)
BL
平凡な魔法使いのハーシュと、美形天才剣士のサンフォードは幼馴染。 ある日、ハーシュは冒険者パーティから追放されることになって……。 ほのぼの執着な短いお話です。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...