箱庭の番人

福の島

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王の家族計画

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昨日は楽しかった。
ルビーがいて、メデロスがいて、アイクがいる……。

「ふふ…」

俺は変わった…と思う…最近は笑えるし、人の心もわかってきた。

嬉しい…楽しい…『好き』…

『好き』は種類が多くて…まだ曖昧だけど…アイクは俺に『大好き』をくれた…。

教会の真ん中で人々が願った気持ちを精霊界へ送る。

一通り終わったので俺は久しぶりにピアノを触ってみた。

ポーン…

前と変わらずの優しい音で鳴り響くピアノは楽しい。
今の俺にぴったりな楽しくて優しい曲を弾く。

……♪~…
…~♪…
…♪~。


「…………エリア…」

…誰だ…?つり上がった海のような青い目に……ブロンズの…髪……。

「…兄上…」

「第4王子…?」

……っていう事はこの人が…

「…現王にして、貴方の父親…ヤシル・ベネットです。」

俺の父………。

「ゥ…うぅ~…!!!!!!!!!ルーカスゥ~!!!!!!」

ガバァァァッ!!!とピアノの椅子に座る俺を抱きしめてきたのは泣き叫ぶように俺を呼ぶ王様だ。
寝ていないのか目の下にはクマがあるし頬に少し残った髭が痛い…

「やっと…!!!やっと終わったんだぁぁ!!!!これでぇ……これでぇ家族みんなで暮らせるぅ~!!!!」
「…痛い…みんなって…何…?」
「父上!!兄上が痛がっています!離してください!!」
「おぉ…すまん…12年ぶりに息子にあったもんだから…」

なんなんだ……?この陽気な王様……。
あ…俺の父親か……。

「エリアと…私と…お前の兄…双子のネグリとティウス、そしてルーカスとルノワール…」
「待ってくれ…母は…母は死んでいないのか…??」
「エリアは生きてる…お前には私達の知らない所で苦労をかけた…元々人間と精霊の異種間結婚は禁句では無いんだ。」

俺の中で出来上がっていた常識がボロボロと崩れ落ちていく。

「な…なんで…もっと早くに…」
「それは…それは私が王だったから…と、ルーカス…お前が精霊に近すぎたからだ。」

母は…生きていて…俺は…精霊…?俺…俺…

「お前が精霊に近すぎて、精霊界へ渡れると知った時、お前の母、エリアは精霊ではなく、人間界へと堕ちた後だった、王の私と共に生きる為…精霊界を捨てたエリアは精霊界での居場所がない。」
「王とは国を統べるもの、そこへ精霊直々の力があってはならない…だから王との結婚だけは難しい事案だったのだ。そこで…私が王を降りるこのタイミングでルーカスを迎えに来た。」

分からない…訳じゃない……でも…でも母は生きていて…でも…じゃあ精霊界では…なぜ俺は1人だったんだ…?

「お前はエリアと似ていてとても美しい…そんなお前に気安く声をかけれる者など居ないじゃろ?」
「精霊王様!!??」

「ヤシル…儂らは待った、ルーカスの背負ってきた12年は重い。そこはしっかり責任を持て。」
「そうですわよヤシル…私は…もう一度あの子に会いたい…今度はエリアも呼んで頂戴…」


「……私ヤシル・ベネット…しかと承りました…」

「「よろしい」」

急に現れた2人の精霊王は俺の頭を撫でるとすぐさま精霊界へ帰ってしまった。
俺が…美しい…?人の美醜など気にした事もなかった…

俺の知ってる人は殆ど美しい人達ばかりだから…

「ルーカス…本当に今までの12年…すまなかった…これから…ルノワールが王となったら正式に迎えに来る…だから…私達と来てくれないか…?」
「兄上…私からも…お願いします…」

「ぉ…俺…」

「ルーカスッッ!!!!誰だ貴様ら!!!」

アイクだ…もうそんな時間か…
アイクはドカンッ!と教会の大きな扉を開いてダッシュで駆け寄り俺を抱きしめ俺を王様達から離した。

「お貴族様がルーカスになんの用だ…手ぇ出したら殺すッ!!」

アイクは貴族が嫌いなんだ…
口は悪いけど…回された右腕が優しくて嬉しい…

「アイク…俺は大丈夫…安心して…?」
「…ルーカス…!…お前が幸せならそれでいい…でも…精霊だかなんだか俺的にはどうだって良いんだ…!行くなッ!!頼むッ…!俺と居てくれ…!」

回された右腕にぎゅ…っと力が増し強く俺を抱きしめる。
アイクが『苦しそう』に俺を呼ぶ声がする……ぽたぽたと…涙?…
アイク…それはどういう『感情』?どういう意味?

「アイク…アイク泣かないでくれ…」

懸命に落ちてくる涙を舐めとってみる。

「……ルー…カス?……ルーカス…好きだ…好きなんだ…愛してるんだ…!」
「……愛…?」

『愛』は『好き』とは違う…?同じ…?
『苦しく』て…『好き』で…『涙』が出るのが『愛』…?

「そうだ…愛…俺は君に恋してる…」

『恋』…母が言ってた…『恋』は『好き』から始まって『愛』になる特別な『感情』…ドキドキしたり…会うと嬉しくなって…離れると寂しい…

そんなのって…

「俺…!俺…も…アイクが好き…アイクに…恋…したかも……いや違う…した…」
「………………ルーカス…ルーカス本当?それ夢…じゃない?」
「アイク…アイク泣かないで…」

必死に舐めとっていた俺をアイクが止めて俺の頬を優しく包み込んだと思ったら…顔が近くなる。

俺の唇がアイクの唇に触れそうになった瞬間、教会に声が響いた。

「嫌だァァァァァァァーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「…兄上…父上…」

振り向くとそこに涙と鼻水で顔をデロデロにした王様と呆れ顔で王様を見る第4王子がいた。

「ルーカスにまだパパとすら呼ばれてないのにぃぃぃぃーーーー!!!!!!もうお嫁に行くなんて!!!!!!耐えられないぃぃぃぃーー!!!!」
「父上…お気持ちは分かりますが…教会ですよ…」

「ァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「ル…ルーカス?この人達…」
「俺の…父と弟…?多分…」

「多分じゃなくて本物だよぉぉぉ…!!」

その日は一晩中教会に王様の泣き叫ぶ声が響いたと言う。
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