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「…っ…ゃ…ん!!たっちゃん!!!」

名前を呼ばれた気がして目を開ける、とてもじゃないけど頭が痛くて耐えられない。

「ねぇ…さん…?」

目の前の姉も頭が痛いのか綺麗な顔をぐじゃぐじゃにして涙を流している。
あれ…そう言えばさっきまで…何してたっけ……?

ジンジン痛む頭を抑えながら少しでも楽になろうと仰向けになる。

「ちょっと!たっちゃん!何寝ようとしてんのよ!!こんな時に!!」
「だって…頭、痛いし……」
「んもぅ!!じゃあそのままでもいいから!たっちゃんもスマホ見て、電波ある?」

スマホ…?電波…?姉のスマホがただ壊れただけじゃないか…
そう思いつつ、隣に落ちているスマホの明かりをパッとつける。

スマホの左上には圏外の文字…あ…本当に電波終わってる……

「もしかしてたっちゃん覚えてない…?」
「…なにが…?」
「地震よ…地震…本当に怖かった…たっちゃんもゆうちゃんも急に倒れるし…」
「……あー…」
「……今はたっちゃんの緩さが救いね…」

そうだった、めちゃくちゃ大きい地震があったんだ…あ…みかん……

「あ~あ…これ食べれないよね…」
「さすがにやめなさい…」

さっきまで机の上に並んでいたみかんは無惨にも床にちりじりになって落ちている…最後の1個で食べたかったのに…
これじゃあゆうまも悲しむな…
あ…そういえば…

「……ゆうまは?」
「…まさか気が付かなかったの…?そこで寝てるじゃない…すっかり眠ったから起こさないでね?」
「…え…?うん…」

俺は起こしたのに弟は起こさないなんて、贔屓だ贔屓…まぁ仕方がないか…ゆうまは最近まで眠れてなかったし…

「…ばぁちゃん大丈夫かな…」
「そこなのよ…」

俺たち三姉弟は父さんが死んで、そこから細々3人暮らしをしていた。
メンバーは、大学生の姉渚と高校生の俺祐、中学になったばかりの弟優馬。

皆そこそこ子供だからどうしようとアワアワしてたんだけど…

そんな時にばぁちゃんだけが助け舟で、元々住んでいた一軒家を俺たちにくれたり、そのくせに自分は施設に入ったり…

「……とりあえず潰されなくて良かったね…」
「ポジティブね…じゃあ私は外見てくるから、ゆうちゃんみててね?」
「あーい…」

こんなに大きい地震だったんだから、外にでてた洗濯物とか植木鉢とか…被害は多そうだな…なんて思ってたら外からつんざくような声でキャー!と姉の悲鳴が聞こえてきた。

「ねぇさん…?どうかしたの?」
「たっちゃん!!たっちゃんどうする!?どこここ!!ねぇ!!」
「なに?…急に……そんなにやばかったの…?」

大袈裟だなぁ…とは思うけど、何があるか分からないから覚悟を持って扉の外を見る。

「……わぁお…どこだろ…ここ…」
「なんでそんなに反応が緩いのよ!!!!もっと騒ぎなさいよ!!!」
「いや…ゆうま起きちゃうし…」

あと…姉が騒いでる分俺が冷静でいられる…

「なんか…西洋っぽいね…オシャレ」
「……たっちゃん」

扉の外はいわゆる住宅地で…西洋風だから、その分和風な家が浮いてる…

隣の家までそこまで遠くないけど…まばらだなぁ…どんな家もちょっと古びた感じがかっこいい…俺1回でもいいからイタリアとか行ってみたかったんだよね…

「…また変な事考えてるわね…?」
「変じゃないよ…普通のこと。」
「……まぁいいわ…私も大分落ち着いてきたし…」
「いわゆるさ…異世界転生ってやつじゃない?」
「異世界転生ね…状況が状況ですもの、ありえなくも無いわ…」

俺が考えついた異世界転生の文字はどうやらあっているらしい…

「でもさ…ここからどうするの?」
「…分からないわよ…」

「……ゆうまになんて言おうね…」
「大丈夫よ、あの子多分喜ぶわ。」

俺たち2人は、とりあえず見なかった事にして扉を閉めた。


===============

七瀬ななせたすく (17)

身長178cm
黒髪黒目の優等生、基本的になんでも出来る天才形だが、なんでも中途半端にする癖がある。傍から見たらダウナー系イケメン。

七瀬ななせなぎさ (20)

身長148cm
黒髪ロングの黒目、どこぞの令嬢みたいな見た目と裏腹に大胆な性格で自分から切り開く強さがある。守りたいとは言わせない。
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