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25・シンシャ
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早いとこそこらへんの世界、ちゃんと復活してくれないかなぁ。
ドラコの話によれば、コハルにとっての世界は、コハルたちの住んでいるところを中心にして約20キロくらいの円の中だけしかきちんとできていないらしい。
世界の広さを地球の広さ、さらにヒトが住んでいたところの広さと考えると、1万分の一以下、ということになる。
ただそういったコロニーは世界中にあるみたいなので、たとえばコハルが携帯端末でやり取りしているヒトたちのうち、10人に1人はリアルと言っていいのかもしれない、くらいの存在、でしょう、と、ドラコは言った。
つまり10分の9は本物ではない、ヒトと会話ができるキカイだということかと思った。
*
庁舎の中は十分に空調が効いていたんだろう。
コハルは、外に出ると、暑っつ、と思った。
雨が降ったあとで、大気のしめり気は多くなったけれど、それほど暑さが和らいだという感じはせず、コハルの体は戦闘服? 作業服の下で、べとべとするくらいに濡れた。
修理されたナツミの自転車は、タイヤがゴムではなくて、平たいワイヤーが複雑に組み合わされたものになっていて、店主の話では、これだったら月面でもパンクしないから、ということだった。
重さも見かけほどではないらしく、乗り心地は前のよりいいくらいだ、と、ナツミは言うけれど、問題はがしゃがしゃ、という走行時の音がややうるさいことだった。
月面には空気がないから、パンクするようなタイヤはそもそも使えないし、音がうるさい、ということもないからなんだろう。
改造されたアキラの自転車は、電動アシストつきリカルベント、という、やはり複雑な機能のもので、店主によると、このサイズのものに調整するのには、思ったより時間がかかってしまった、とのことだった。
ふたりは庁舎の前の、駐車場として使われている空き地をぐるぐると、コハルたちに走るところを見せ、ナツミはさらに、ぶお、ぶお、ぶおーん、と、口でバイクの音を真似したので、よけいにうるさかった。
子どもたちが自転車を乗り回すには遅い時間だったけれど、あとすこしだからがんばってみようか、と、アキラは地図を示しながら言った。
あとどのくらいあるのかは地図で確認できる限りではすぐのはずなんだけど、今までの経験だとあちこちで道路封鎖や工事などでまわり道をしなければいけなくなっているかもしれない。
それに自分はこの道の事前確認に関しては、キカイ経由で古い情報しか手に入れておらず、実際に走って確認してはいないんだ、と、アキラは申し訳なさそうに言った。
*
雨が降り始める前に使った道は、ナツミ以外の自転車は、落ちているものでパンクする可能性があるからやめよう。
トラックとか工事用の車なら、もっとタイヤが丈夫にできてるから、普通に走れるんだろうけど。
だとすると、庁舎からいちばん近い道か、すこし離れた道のどちらか、が安全だろう。
ドラコにも、なにか情報は持っていないか聞いてみたけど、ネット上の古い地図以上のものは知らないようだった。
コハルたちは、近い道を選んでみた。
そこを通れば20分ぐらいで、センセイが住む丘にたどり着けるはずだった。
ドラコは当然のように、コハルの後部の、トランクにもなるチャイルドシートの中に収まった。
本当はいくつなのかは知らないんだけれども、そして多分6歳以上であることは間違いないんだけれど、そういうのが問題になるほどには多分また世界は完全復活していないんだろうと、コハルは思った。
ドラコの話によれば、コハルにとっての世界は、コハルたちの住んでいるところを中心にして約20キロくらいの円の中だけしかきちんとできていないらしい。
世界の広さを地球の広さ、さらにヒトが住んでいたところの広さと考えると、1万分の一以下、ということになる。
ただそういったコロニーは世界中にあるみたいなので、たとえばコハルが携帯端末でやり取りしているヒトたちのうち、10人に1人はリアルと言っていいのかもしれない、くらいの存在、でしょう、と、ドラコは言った。
つまり10分の9は本物ではない、ヒトと会話ができるキカイだということかと思った。
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庁舎の中は十分に空調が効いていたんだろう。
コハルは、外に出ると、暑っつ、と思った。
雨が降ったあとで、大気のしめり気は多くなったけれど、それほど暑さが和らいだという感じはせず、コハルの体は戦闘服? 作業服の下で、べとべとするくらいに濡れた。
修理されたナツミの自転車は、タイヤがゴムではなくて、平たいワイヤーが複雑に組み合わされたものになっていて、店主の話では、これだったら月面でもパンクしないから、ということだった。
重さも見かけほどではないらしく、乗り心地は前のよりいいくらいだ、と、ナツミは言うけれど、問題はがしゃがしゃ、という走行時の音がややうるさいことだった。
月面には空気がないから、パンクするようなタイヤはそもそも使えないし、音がうるさい、ということもないからなんだろう。
改造されたアキラの自転車は、電動アシストつきリカルベント、という、やはり複雑な機能のもので、店主によると、このサイズのものに調整するのには、思ったより時間がかかってしまった、とのことだった。
ふたりは庁舎の前の、駐車場として使われている空き地をぐるぐると、コハルたちに走るところを見せ、ナツミはさらに、ぶお、ぶお、ぶおーん、と、口でバイクの音を真似したので、よけいにうるさかった。
子どもたちが自転車を乗り回すには遅い時間だったけれど、あとすこしだからがんばってみようか、と、アキラは地図を示しながら言った。
あとどのくらいあるのかは地図で確認できる限りではすぐのはずなんだけど、今までの経験だとあちこちで道路封鎖や工事などでまわり道をしなければいけなくなっているかもしれない。
それに自分はこの道の事前確認に関しては、キカイ経由で古い情報しか手に入れておらず、実際に走って確認してはいないんだ、と、アキラは申し訳なさそうに言った。
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雨が降り始める前に使った道は、ナツミ以外の自転車は、落ちているものでパンクする可能性があるからやめよう。
トラックとか工事用の車なら、もっとタイヤが丈夫にできてるから、普通に走れるんだろうけど。
だとすると、庁舎からいちばん近い道か、すこし離れた道のどちらか、が安全だろう。
ドラコにも、なにか情報は持っていないか聞いてみたけど、ネット上の古い地図以上のものは知らないようだった。
コハルたちは、近い道を選んでみた。
そこを通れば20分ぐらいで、センセイが住む丘にたどり着けるはずだった。
ドラコは当然のように、コハルの後部の、トランクにもなるチャイルドシートの中に収まった。
本当はいくつなのかは知らないんだけれども、そして多分6歳以上であることは間違いないんだけれど、そういうのが問題になるほどには多分また世界は完全復活していないんだろうと、コハルは思った。
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