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19・セントウフク
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アキラが乗っていたリカンベントにコハルが乗ってみると、地面と顔・体との距離が思った以上に近く、スピード感があった。
実際にスピードは出るんだけど、下り坂では、コハルの自転車に乗ったミユキ、ミユキの自転車に乗ったアキラに大差をつけるほどではない。
ほぼ並んで走る、レインコートのフードを深く降ろしたミユキは、顔にざばざば水がかかるけど、気持ちいい、と、スロートマイクでふたりに言った。
平地の、市街地のはずれまで来ると、ここからが本番だ、と、アキラは言ったけれども、目的地につくまでにふたりには20メートルぐらい引き離されてしまった。
アキラの自転車はホロがついていて、それを目いっぱいおろすと、雨音がぱらぱら、とは当たるけど、コハルの上半身はほとんど濡れなかった。
なんか、気づかいされてばかりで悪いな、と、コハルは思った。
体は4人の中では小さいほうではないけれど、いちばん疲れやすいのは実はコハルで、しょっちゅう熱を出したり、ヒト用の医者に見てもらったりしているのだった。
*
3人の最初の目的地は、作業用の服や靴などを売っている衣料系洋品店で、おせぇよお前ら、と、先についていて中で待っていたらしいナツミに怒られた。
自転車屋はその店から3軒ほど離れたところだったので、ずいぶん早くからこの店で待っていたらしい。
しずくがぽたぽた垂れるレインコートを、店の入口、ナツミがすでにかけていたハンガーに、コハルとミユキも並べてかけ、自転車屋に立ち寄ったアキラは、それよりやや遅れて店内に入った。
ヒト型のキカイはたしかにそれなりにいて、そのほとんどはさまざまな服を着ている。
むき出しの体だと、塗装や料理その他で汚れた場合、ヒトのように簡単に落とすわけにはいかず、ヒトも裸で作業をすることがあったりすると、たぶん面倒なことになるんだけど、それはともかく、衣類は暑さ寒さよけではなく、傷や汚れが直接キカイの体につかないようにするために必要なんだろう。
*
ヒト型キカイは大小さまざまな大きさなので、コハルたちのような子どもでも、お子様用とは書いてないけど、ちゃんとおとな用と同じぐらいの品揃えだったので、ミユキは、なにこれなにこれ、すごい、と、感心していた。
リアルにこんな、今まで見たこともない服が置いてあるの見たの、はじめてだよ。
ミユキが身につけるものは、だいたい通販で、スポーツ系のものを除くと実用性よりもおしゃれ性を重視したものばかりだったな、と、コハルは思った。
あまりそういうのに興味がないアキラは、防寒・耐熱に威力がある服は、ヒトにはすこし重そうかな、とかぶつぶつ言ったあと、工具類が置いてあるコーナーに行ってしまった。
おもしろそうな工具があって、あんまり高くもかさばりもしないようだったら、この店で買っていくつもりなんだろう。
ミユキはさまざまな、あまりおしゃれではないかもしれないけれど、労働・作業にも使える、すこしおしゃれな服を手にとって、え、これ、私が買ってる服の3分の1か4分の1ぐらいの値段じゃん、4着ぐらい買おう、とはりきっている。
ここじゃなくても、ネットにこの店の通販サイトがあるから、そこを利用しような、と、ナツミはミユキの肩を叩いてアドバイスした。
戦士や魔法使いが着るような、ファンタジー世界の武器屋・道具屋が扱っている商品は、もちろんここにはない。
アキラはそれでも、50センチほどの長さのバールのようなもの、ではなくて、バールを手にとって振り回し、なぜかうなずきながら両手持ちをした。
実際にスピードは出るんだけど、下り坂では、コハルの自転車に乗ったミユキ、ミユキの自転車に乗ったアキラに大差をつけるほどではない。
ほぼ並んで走る、レインコートのフードを深く降ろしたミユキは、顔にざばざば水がかかるけど、気持ちいい、と、スロートマイクでふたりに言った。
平地の、市街地のはずれまで来ると、ここからが本番だ、と、アキラは言ったけれども、目的地につくまでにふたりには20メートルぐらい引き離されてしまった。
アキラの自転車はホロがついていて、それを目いっぱいおろすと、雨音がぱらぱら、とは当たるけど、コハルの上半身はほとんど濡れなかった。
なんか、気づかいされてばかりで悪いな、と、コハルは思った。
体は4人の中では小さいほうではないけれど、いちばん疲れやすいのは実はコハルで、しょっちゅう熱を出したり、ヒト用の医者に見てもらったりしているのだった。
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3人の最初の目的地は、作業用の服や靴などを売っている衣料系洋品店で、おせぇよお前ら、と、先についていて中で待っていたらしいナツミに怒られた。
自転車屋はその店から3軒ほど離れたところだったので、ずいぶん早くからこの店で待っていたらしい。
しずくがぽたぽた垂れるレインコートを、店の入口、ナツミがすでにかけていたハンガーに、コハルとミユキも並べてかけ、自転車屋に立ち寄ったアキラは、それよりやや遅れて店内に入った。
ヒト型のキカイはたしかにそれなりにいて、そのほとんどはさまざまな服を着ている。
むき出しの体だと、塗装や料理その他で汚れた場合、ヒトのように簡単に落とすわけにはいかず、ヒトも裸で作業をすることがあったりすると、たぶん面倒なことになるんだけど、それはともかく、衣類は暑さ寒さよけではなく、傷や汚れが直接キカイの体につかないようにするために必要なんだろう。
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ヒト型キカイは大小さまざまな大きさなので、コハルたちのような子どもでも、お子様用とは書いてないけど、ちゃんとおとな用と同じぐらいの品揃えだったので、ミユキは、なにこれなにこれ、すごい、と、感心していた。
リアルにこんな、今まで見たこともない服が置いてあるの見たの、はじめてだよ。
ミユキが身につけるものは、だいたい通販で、スポーツ系のものを除くと実用性よりもおしゃれ性を重視したものばかりだったな、と、コハルは思った。
あまりそういうのに興味がないアキラは、防寒・耐熱に威力がある服は、ヒトにはすこし重そうかな、とかぶつぶつ言ったあと、工具類が置いてあるコーナーに行ってしまった。
おもしろそうな工具があって、あんまり高くもかさばりもしないようだったら、この店で買っていくつもりなんだろう。
ミユキはさまざまな、あまりおしゃれではないかもしれないけれど、労働・作業にも使える、すこしおしゃれな服を手にとって、え、これ、私が買ってる服の3分の1か4分の1ぐらいの値段じゃん、4着ぐらい買おう、とはりきっている。
ここじゃなくても、ネットにこの店の通販サイトがあるから、そこを利用しような、と、ナツミはミユキの肩を叩いてアドバイスした。
戦士や魔法使いが着るような、ファンタジー世界の武器屋・道具屋が扱っている商品は、もちろんここにはない。
アキラはそれでも、50センチほどの長さのバールのようなもの、ではなくて、バールを手にとって振り回し、なぜかうなずきながら両手持ちをした。
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