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17・サカミチ
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だけどキカイが表情・感情を複雑に持つ、ということは珍しいことである。
この先の橋なんだけど、今は補強工事中で通れないんだよ、と、キカイは説明した。
ということはつまり、舗装の工事もそうなんだけど、キカイが新道を使って、それなりの重量のあるものを運んだり、持ってきたりしているんだろうか。
ヒトではないキカイが水や食料は必要だとは思えない。
でも、電気や情報データをやりとりするための回線とかは、しょっちゅうメンテナンスしないといけないだろうし、ヒト以外のトリとか小動物などは生き延びて繁殖している。
工事が終わるのは8月末くらいかな。
えーっと、とミユキは言った。
丘の上の町まで続いてる、私たちが通れそうな道ってありますか。
そうだね、あそこの交差点まで戻って、左に曲がるとあるよ。
遠回りだし、ここほど整備はされていないけど、ほかのキカイもみんな今は迂回してあの町に行き来してるから、君たちも通れないほどではないはずなんだ、と、キカイはさらに説明した。
地図で確認してみると、その道をいくとすると、目的地までは30分から1時間くらいの遠回りになりそうだ。
気になるのはむしろあれだな、と、アキラは西のほうに首を回した。
そちらには入道雲が大きく黒く広がっていて、入道雲の下には灰色の雨柱が立っているように見えた。
*
アキラの自転車、リカンベントは、平らな道はすいすい進めるんだけど、坂道をのぼるにはぜんぜん向いていな
い。
旅のはじめから先頭を、いつも軽々と走っていたあきらも、迂回路の坂道の途中でひいひい言って、ほかの3人に抜かれてしまったけれども、まだ頑張ってペダルを漕いでいた。
普通の自転車とはちがって、傾斜がきつい坂を立ち乗り、足とペダルに体重を乗せて力を加えることがしにくいのだ。
へへへっ、楽勝だよ、みたいな感じで、ナツミはそれでもよろよろと3人を追い越した。
コハルの自転車は電動アシスト自転車だから、やろうと思えばナツミと競争をして勝てるくらいの性能はあったんだけど、コハルとミユキはロープでアキラの自転車をつないで、のぼり坂のサポートをした。
携帯端末上のマップは、のぼり・くだりの坂が確認しにくい。
確認できることはできるんだけど、どうもその道を人力でのぼる、みたいなヒトのことは想定していないのか、地図上の高低と体感は、ずいぶん違ったものになっていた。
ナツミが先頭を進み、後ろのコハルたちを見たとたん、ぷしゅう、という音がして、ナツミの自転車は、がたがたがた、と坂道の途中で動かなくなった。
パンクするなんて聞いてねえよと、ナツミは言った。
何か月前から使われていた迂回路は、道路の状況も悪く、折れた枝や、資材を運ぶトラックが落としていった金属類やガラス、大小の小石がちらばっていた。
だから先頭のものはもっと用心しなければいけなかったのである。
簡単な穴ならふさげる程度の、修理用セットは持っていたけど、アキラはナツミの自転車のタイヤを確認すると、首を横にふった。
ちゃんとした自転車屋じゃないと難しいかも。
どうしようという風に思っているうちに、空の色はどんどん変わって、大きな雨粒があっという間にザバザバと降り始めて、周りに水柱が立つほどの勢いになった。
これも確かに聞いていないなとコハルは思った。
コハルが準備しておいた4人ぶんの、ほぼ使い捨て程度のレインコートを出すのを手伝いながら、ミユキは、ふっ、とコハルに顔を向けて、うすい微笑を浮かべた。
なんか、楽しそうだよね、コハル。
やっと冒険っぽくなったな、って表情してるよ。
この先の橋なんだけど、今は補強工事中で通れないんだよ、と、キカイは説明した。
ということはつまり、舗装の工事もそうなんだけど、キカイが新道を使って、それなりの重量のあるものを運んだり、持ってきたりしているんだろうか。
ヒトではないキカイが水や食料は必要だとは思えない。
でも、電気や情報データをやりとりするための回線とかは、しょっちゅうメンテナンスしないといけないだろうし、ヒト以外のトリとか小動物などは生き延びて繁殖している。
工事が終わるのは8月末くらいかな。
えーっと、とミユキは言った。
丘の上の町まで続いてる、私たちが通れそうな道ってありますか。
そうだね、あそこの交差点まで戻って、左に曲がるとあるよ。
遠回りだし、ここほど整備はされていないけど、ほかのキカイもみんな今は迂回してあの町に行き来してるから、君たちも通れないほどではないはずなんだ、と、キカイはさらに説明した。
地図で確認してみると、その道をいくとすると、目的地までは30分から1時間くらいの遠回りになりそうだ。
気になるのはむしろあれだな、と、アキラは西のほうに首を回した。
そちらには入道雲が大きく黒く広がっていて、入道雲の下には灰色の雨柱が立っているように見えた。
*
アキラの自転車、リカンベントは、平らな道はすいすい進めるんだけど、坂道をのぼるにはぜんぜん向いていな
い。
旅のはじめから先頭を、いつも軽々と走っていたあきらも、迂回路の坂道の途中でひいひい言って、ほかの3人に抜かれてしまったけれども、まだ頑張ってペダルを漕いでいた。
普通の自転車とはちがって、傾斜がきつい坂を立ち乗り、足とペダルに体重を乗せて力を加えることがしにくいのだ。
へへへっ、楽勝だよ、みたいな感じで、ナツミはそれでもよろよろと3人を追い越した。
コハルの自転車は電動アシスト自転車だから、やろうと思えばナツミと競争をして勝てるくらいの性能はあったんだけど、コハルとミユキはロープでアキラの自転車をつないで、のぼり坂のサポートをした。
携帯端末上のマップは、のぼり・くだりの坂が確認しにくい。
確認できることはできるんだけど、どうもその道を人力でのぼる、みたいなヒトのことは想定していないのか、地図上の高低と体感は、ずいぶん違ったものになっていた。
ナツミが先頭を進み、後ろのコハルたちを見たとたん、ぷしゅう、という音がして、ナツミの自転車は、がたがたがた、と坂道の途中で動かなくなった。
パンクするなんて聞いてねえよと、ナツミは言った。
何か月前から使われていた迂回路は、道路の状況も悪く、折れた枝や、資材を運ぶトラックが落としていった金属類やガラス、大小の小石がちらばっていた。
だから先頭のものはもっと用心しなければいけなかったのである。
簡単な穴ならふさげる程度の、修理用セットは持っていたけど、アキラはナツミの自転車のタイヤを確認すると、首を横にふった。
ちゃんとした自転車屋じゃないと難しいかも。
どうしようという風に思っているうちに、空の色はどんどん変わって、大きな雨粒があっという間にザバザバと降り始めて、周りに水柱が立つほどの勢いになった。
これも確かに聞いていないなとコハルは思った。
コハルが準備しておいた4人ぶんの、ほぼ使い捨て程度のレインコートを出すのを手伝いながら、ミユキは、ふっ、とコハルに顔を向けて、うすい微笑を浮かべた。
なんか、楽しそうだよね、コハル。
やっと冒険っぽくなったな、って表情してるよ。
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