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第十三章 金曜日の妹はいない
13-5話 ああ貫一さん、どうしてあなたは貫一さんなの
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兄上の芸は、一人芝居で「ひとりロミオ貫一とジュリエットお宮」というものだった。
真ん中に松が一本あって、空には月がかかっている。
でもって、兄上のメイクは、右を向くとジュリエットお宮で、左を向くとロミオ貫一。
「ヴェローナの町を散歩する、ロミオとジュリエットの二人連れ♪」ぎやぎや、とバイオリンを弾くのは、狐神のくらさん。
*
ジュリエットお宮「ああ貫一さん、どうしてあなたは貫一さんなの。どうかその名を捨てて」
ロミオ貫一「伯爵夫人の名に目がくらみ、明日パリス伯爵と結婚するとは。よ、よくも僕を裏切ってくれたな」
ジュリエットお宮「お許しください貫一さん」
ロミオ貫一「えい離せ」
ジュリエットお宮「貫一さん」
ロミオ貫一「えい離せ」
と、これをひとりでやる。松の木をはさんで、右と左でやってるんだけど、そのうちどっちがどっちかわからなくなって、
ロミオ貫一「貫一さん」
ジュリエットお宮「えい離せ」
みたいな感じになる。これはネタですね。
ロミオ貫一「来年の今月今夜のこの月を、僕の涙で曇らせてみせる」
ジュリエットお宮「不実な月などに誓うのはやめて」
ロミオ貫一「月は晴れても心は暗闇だ」
ジュリエットお宮「別れろ切れろはバージンのときに言う言葉。今の私には、いっそ死ねと…言ってください」
と、泣き伏せるジュリエットお宮。
ロミオ貫一「止めて下さるなお宮殿。落ちぶれ果てても貫一は武士じゃ、男の散りぎわだけは知って居り申す。行かねばならぬそこをどいて下され、行かねばならぬのだ」
ジュリエットお宮「離しませぬ」
ロミオ貫一「えい離せ」
とかやってるうちに松の木が倒れて、向かって右から左(窓側から廊下側)に退場しようとするロミオ貫一だけど、途中で向きを替えてジュリエットお宮になって、後ろ向きでムーンウォーク(前に進んでいるように見えながら後ろに進む例のあれ)で引っ込む。
*
実にくだらない芸である。
みんなには受けまくりました。
なぜって、兄上の格好とメイクは、ロミオ貫一(観客から見て右側)が白い学生服の喧嘩番長みたいなうちの生徒会長を、ジュリエットお宮(観客から見て左側)が赤い女王服のゲストの白美神高校生徒会長・松平定子(まつだいらさだこ)さんを模したものだったから。
番長は不機嫌なときの麻生太郎議員みたいな顔で見ていて、女王様は身を乗り出して、相撲の大一番を天覧していたときの昭和天皇みたいな顔で見ていた。
まさかこれがそれから起こることの伏線になろうとは。
とりあえずその後、ちゃんと樋裏聖(ひうらせい)先輩と藤堂明音(とうどうあかね)先輩は「スカボロー・フェア」を歌って、松平さんにハーブの花束じゃないな、葉束? を、名前を間違えずに渡した。
真ん中に松が一本あって、空には月がかかっている。
でもって、兄上のメイクは、右を向くとジュリエットお宮で、左を向くとロミオ貫一。
「ヴェローナの町を散歩する、ロミオとジュリエットの二人連れ♪」ぎやぎや、とバイオリンを弾くのは、狐神のくらさん。
*
ジュリエットお宮「ああ貫一さん、どうしてあなたは貫一さんなの。どうかその名を捨てて」
ロミオ貫一「伯爵夫人の名に目がくらみ、明日パリス伯爵と結婚するとは。よ、よくも僕を裏切ってくれたな」
ジュリエットお宮「お許しください貫一さん」
ロミオ貫一「えい離せ」
ジュリエットお宮「貫一さん」
ロミオ貫一「えい離せ」
と、これをひとりでやる。松の木をはさんで、右と左でやってるんだけど、そのうちどっちがどっちかわからなくなって、
ロミオ貫一「貫一さん」
ジュリエットお宮「えい離せ」
みたいな感じになる。これはネタですね。
ロミオ貫一「来年の今月今夜のこの月を、僕の涙で曇らせてみせる」
ジュリエットお宮「不実な月などに誓うのはやめて」
ロミオ貫一「月は晴れても心は暗闇だ」
ジュリエットお宮「別れろ切れろはバージンのときに言う言葉。今の私には、いっそ死ねと…言ってください」
と、泣き伏せるジュリエットお宮。
ロミオ貫一「止めて下さるなお宮殿。落ちぶれ果てても貫一は武士じゃ、男の散りぎわだけは知って居り申す。行かねばならぬそこをどいて下され、行かねばならぬのだ」
ジュリエットお宮「離しませぬ」
ロミオ貫一「えい離せ」
とかやってるうちに松の木が倒れて、向かって右から左(窓側から廊下側)に退場しようとするロミオ貫一だけど、途中で向きを替えてジュリエットお宮になって、後ろ向きでムーンウォーク(前に進んでいるように見えながら後ろに進む例のあれ)で引っ込む。
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実にくだらない芸である。
みんなには受けまくりました。
なぜって、兄上の格好とメイクは、ロミオ貫一(観客から見て右側)が白い学生服の喧嘩番長みたいなうちの生徒会長を、ジュリエットお宮(観客から見て左側)が赤い女王服のゲストの白美神高校生徒会長・松平定子(まつだいらさだこ)さんを模したものだったから。
番長は不機嫌なときの麻生太郎議員みたいな顔で見ていて、女王様は身を乗り出して、相撲の大一番を天覧していたときの昭和天皇みたいな顔で見ていた。
まさかこれがそれから起こることの伏線になろうとは。
とりあえずその後、ちゃんと樋裏聖(ひうらせい)先輩と藤堂明音(とうどうあかね)先輩は「スカボロー・フェア」を歌って、松平さんにハーブの花束じゃないな、葉束? を、名前を間違えずに渡した。
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