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第十一章 水曜日はキムチチャーハンオムライス
11-4話 よお、昔のおれ
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「あ、あの…気持ちはすごくうれしいんだけど」と、冴野美登里(さやみどり)はもじもじして、おれと視線を合わせないで言った。
「敏行とは、ずっと友だちだったらいいな、って」
視線を合わせない女子がいかにも言いそうなことである。
ところで、美登里は車でここまで来ていて、その車は美登里のうしろにあって、そこから外車の輸入販売をやっていたときのトム・クルーズみたいにチャラい男が降りてきた。サングラスとあごひげで、アメリカのハリウッド俳優みたいな格好である。
「よお、昔のおれ」と、その男は言った。
「ひょっとして…未来のおれ?」
その男は、サングラスを外して、年収2000万ドルぐらいありそうな笑顔でおれに近づき、ハグした。
「なつかしいなあ。なんとか間に合ってよかった」
車の後部座席からは、神様チームの3神が、三ばか大将みたいな感じでずっこけながら降りてきた。
「未来のおれさんは、外車のディーラーですか?」
「何言ってんだよ、おれの車だよ。ビュイック・ロードマスターの最新型で、今の、じゃなくて未来のおれはベストセラー作家だ。おれが原作のハリウッド映画も何本も作られた、というか、作られることになっている」
「ちょっと待ってくださいよ。未来の自分が車で過去に行って、過去を改変するハリウッド映画ってありましたよね」
「いいんだよそんなの。これ、ガルウィングじゃねえし。気にするな」
「あと、校門の前で刺されて殺されそうになった主人公を、未来の主人公が助ける話も」
「そんなアニメは知らんな」
アニメとは言ってないのだが。
だいたい、今のおれが知ってることを未来のおれが知らないわけがない。
「まず、えりちんをコスプレさせて連れてくる。次に、美登里に電話して家まで迎えに行き、途中で3バカを拾う。この順番を忘れないようにな。車は後部座席のある奴を、ちゃんと買っておくんだ」
未来のおれは真部岡恵留(まぶおかえる)さんや神様チームをひどい言い方で呼んだ。
神様チームのうち、狐神でエンジニアの田部良紅羅架(たぶらくらか)さんは、まだ霊力が残っていると思われる二組の箸を、ゴム手袋で受け取って、慎重に何やらバッテリーみたいなものに繋いでいた。
「遅れちゃってごめん。敏行の家の周りにコンビニいくつもあるの知らなくて。あと狐の抜け穴は、一度行ったところにしか作れないのだ」と、三絡克真 (みつがねかつま)さんは頭を下げて説明した。
そうこうするうちに、三絡さんと同じような髪の毛と目の色の、少しふっくらしててゴージャスな人、というか多分猫神様が、息を切らしてやってきた。
「やあ…昔の…私」
「ひょっとして…未来の私?」と、今の三絡さんは驚きながら言った。
「美登里を助手席に乗せる前に、いったん助手席から三絡には降りてもらったんだ。心配するな、三絡は未来もおれのいい相棒だ。話の展開に詰まったときには相談相手になってくれるし、調子に乗って書いてるとその邪魔をする。それにしても…昔のお前は…」
確かに、未来の三絡さんは少しではないレベルでふっくらしていた。いいもん食わせてもらってたんだろうな。
「敏行とは、ずっと友だちだったらいいな、って」
視線を合わせない女子がいかにも言いそうなことである。
ところで、美登里は車でここまで来ていて、その車は美登里のうしろにあって、そこから外車の輸入販売をやっていたときのトム・クルーズみたいにチャラい男が降りてきた。サングラスとあごひげで、アメリカのハリウッド俳優みたいな格好である。
「よお、昔のおれ」と、その男は言った。
「ひょっとして…未来のおれ?」
その男は、サングラスを外して、年収2000万ドルぐらいありそうな笑顔でおれに近づき、ハグした。
「なつかしいなあ。なんとか間に合ってよかった」
車の後部座席からは、神様チームの3神が、三ばか大将みたいな感じでずっこけながら降りてきた。
「未来のおれさんは、外車のディーラーですか?」
「何言ってんだよ、おれの車だよ。ビュイック・ロードマスターの最新型で、今の、じゃなくて未来のおれはベストセラー作家だ。おれが原作のハリウッド映画も何本も作られた、というか、作られることになっている」
「ちょっと待ってくださいよ。未来の自分が車で過去に行って、過去を改変するハリウッド映画ってありましたよね」
「いいんだよそんなの。これ、ガルウィングじゃねえし。気にするな」
「あと、校門の前で刺されて殺されそうになった主人公を、未来の主人公が助ける話も」
「そんなアニメは知らんな」
アニメとは言ってないのだが。
だいたい、今のおれが知ってることを未来のおれが知らないわけがない。
「まず、えりちんをコスプレさせて連れてくる。次に、美登里に電話して家まで迎えに行き、途中で3バカを拾う。この順番を忘れないようにな。車は後部座席のある奴を、ちゃんと買っておくんだ」
未来のおれは真部岡恵留(まぶおかえる)さんや神様チームをひどい言い方で呼んだ。
神様チームのうち、狐神でエンジニアの田部良紅羅架(たぶらくらか)さんは、まだ霊力が残っていると思われる二組の箸を、ゴム手袋で受け取って、慎重に何やらバッテリーみたいなものに繋いでいた。
「遅れちゃってごめん。敏行の家の周りにコンビニいくつもあるの知らなくて。あと狐の抜け穴は、一度行ったところにしか作れないのだ」と、三絡克真 (みつがねかつま)さんは頭を下げて説明した。
そうこうするうちに、三絡さんと同じような髪の毛と目の色の、少しふっくらしててゴージャスな人、というか多分猫神様が、息を切らしてやってきた。
「やあ…昔の…私」
「ひょっとして…未来の私?」と、今の三絡さんは驚きながら言った。
「美登里を助手席に乗せる前に、いったん助手席から三絡には降りてもらったんだ。心配するな、三絡は未来もおれのいい相棒だ。話の展開に詰まったときには相談相手になってくれるし、調子に乗って書いてるとその邪魔をする。それにしても…昔のお前は…」
確かに、未来の三絡さんは少しではないレベルでふっくらしていた。いいもん食わせてもらってたんだろうな。
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