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第十一章 水曜日はキムチチャーハンオムライス
11-3話 ここはワタシに委(まか)せて!
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一度は見たい妹の闇落ちだが、ちょっと相手をするのはつらい。せめて昨日のごぼうでもあればよかったんだけど、おれのほうの武器は、通常は封印されている左手の退魔呪印だけで、これは防具にはなっても基本的には攻撃力はない。それでも霊力を持った妹の黒い箸を左手の甲で受けるたびに、少しずつ相手の力は削がれていくらしい。
真那木沙振(まなきさぶれ)さんは、あっ右、今度は左から、とかいろいろ心の声で指令を出すが、全然役に立たない。もうだめか、と思ったとき、校門の柱の上から声がした。
「ジャスタモメン! 天知る地知る我が知る! この世の悪を封緘(ふうかん)し、天の裁きを補闕(ほけつ)する、あ、ストレンジラブ・マスクたあ俺のことだ!」
わけのわからない決め台詞でそこに立っていたのは、仮面舞踏会みたいなマスクをして、白と金を基調にしたおしゃれなドレスの、多分いいほうの魔法少女で、絶対これは真部岡恵留(まぶおかえる)さんだ。左の胸にはピンクのハートマークの中に金色で「L」って書いてあるエンブレムをつけているし、左手にはおれが渡した黒い箸を持っている。何より正しいアメリカ英語と、変な日本語が真部岡さんである。
「ここはワタシに委(まか)せて!」と、ストレンジラブ・マスクは言って、ポーズを取ると、黒い箸はきらきらと光りながら金色の箸になった。
「面白いな、こいつは面白い。てめぇとは一度、本気で戦ってみたいと思ってたんだよ!」と、すっかり悪役っぽくなった妹が、黒の箸で攻撃するのを、真部岡さん(仮)は金の箸で受ける。
「こ、これは…」
おれが見ている位置では、真部岡さん(仮)が左側で、妹が右側。でもって、右手の妹の箸攻撃を、真部岡さん(仮)が左手の箸で受ける。正統派魔法少女同士の戦いで、実に絵として美しい。もしこの話に作者がいるのなら、真部岡さんを左手設定にしておいて、しめたと思っているだろう。
数十合にわたる叩き合いをしたあげく、真部岡さん(仮)はひょいっと、正しい箸の持ち方をして、妹の箸をつまんだので、妹の手からその箸は離れて、くるくると回って地面に突き刺さった。
「く…わたくしの負けだ」と、妹は膝をついて、パンツが見えそうな勢いであぐらをかいた。
「さあもう、どうにでもしやがれ」
真部岡さん(仮)は、そんな妹の手を取った。
「もう、つまらない争いはやめにしましょう。ナオちゃんはいつまでもワタシの大切な友だちでお姉様。そして曽根地敏行(そねじとしゆき)さんはお兄様ですが、ワタシの恋するおかたです」
「ちょ、ちょっと待った!」
人の心を試すようなことをしてはいけない、と、つくづくおれは思った。
というか、早く神様チーム来て何とかしてください。だいたいなんで真部岡さんが、どうやって神様チームより早くここに来れたのか。
とりあえず、おれはごまかすことにした。
「実はおれ、前から好きな子がいて、お前らも知ってるだろ、冴野美登里(さやみどり)な。バカだけどまっすぐで、男らしくて純情で、ああもっと早く言っておけばよかったなあ」
「ふーん」と、もうマスクを取った真部岡さんは言った。
「おーい、バカだけどまっすぐなの、ちょっとこっち来て!」
美登里はちゃんと少し遠くにいて、もじもじしている。
落語「三枚起請」の逆バージョンをやられるとは思わなかったよ!
真那木沙振(まなきさぶれ)さんは、あっ右、今度は左から、とかいろいろ心の声で指令を出すが、全然役に立たない。もうだめか、と思ったとき、校門の柱の上から声がした。
「ジャスタモメン! 天知る地知る我が知る! この世の悪を封緘(ふうかん)し、天の裁きを補闕(ほけつ)する、あ、ストレンジラブ・マスクたあ俺のことだ!」
わけのわからない決め台詞でそこに立っていたのは、仮面舞踏会みたいなマスクをして、白と金を基調にしたおしゃれなドレスの、多分いいほうの魔法少女で、絶対これは真部岡恵留(まぶおかえる)さんだ。左の胸にはピンクのハートマークの中に金色で「L」って書いてあるエンブレムをつけているし、左手にはおれが渡した黒い箸を持っている。何より正しいアメリカ英語と、変な日本語が真部岡さんである。
「ここはワタシに委(まか)せて!」と、ストレンジラブ・マスクは言って、ポーズを取ると、黒い箸はきらきらと光りながら金色の箸になった。
「面白いな、こいつは面白い。てめぇとは一度、本気で戦ってみたいと思ってたんだよ!」と、すっかり悪役っぽくなった妹が、黒の箸で攻撃するのを、真部岡さん(仮)は金の箸で受ける。
「こ、これは…」
おれが見ている位置では、真部岡さん(仮)が左側で、妹が右側。でもって、右手の妹の箸攻撃を、真部岡さん(仮)が左手の箸で受ける。正統派魔法少女同士の戦いで、実に絵として美しい。もしこの話に作者がいるのなら、真部岡さんを左手設定にしておいて、しめたと思っているだろう。
数十合にわたる叩き合いをしたあげく、真部岡さん(仮)はひょいっと、正しい箸の持ち方をして、妹の箸をつまんだので、妹の手からその箸は離れて、くるくると回って地面に突き刺さった。
「く…わたくしの負けだ」と、妹は膝をついて、パンツが見えそうな勢いであぐらをかいた。
「さあもう、どうにでもしやがれ」
真部岡さん(仮)は、そんな妹の手を取った。
「もう、つまらない争いはやめにしましょう。ナオちゃんはいつまでもワタシの大切な友だちでお姉様。そして曽根地敏行(そねじとしゆき)さんはお兄様ですが、ワタシの恋するおかたです」
「ちょ、ちょっと待った!」
人の心を試すようなことをしてはいけない、と、つくづくおれは思った。
というか、早く神様チーム来て何とかしてください。だいたいなんで真部岡さんが、どうやって神様チームより早くここに来れたのか。
とりあえず、おれはごまかすことにした。
「実はおれ、前から好きな子がいて、お前らも知ってるだろ、冴野美登里(さやみどり)な。バカだけどまっすぐで、男らしくて純情で、ああもっと早く言っておけばよかったなあ」
「ふーん」と、もうマスクを取った真部岡さんは言った。
「おーい、バカだけどまっすぐなの、ちょっとこっち来て!」
美登里はちゃんと少し遠くにいて、もじもじしている。
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