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第十一章 水曜日はキムチチャーハンオムライス
11-2話 黒幕の正体を探ってください、お願いします!
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(黒幕の正体を探ってください、お願いします!)と、ご神木の神様である真那木沙振(まなきさぶれ)さんはおれに心の声でお願いした。
どうもそのお願いに逆らえないのは、真那木さんが小さいときの妹に似ているのと、お願いにはもっともなところがあるからだ。つまり、6人の妹がひとりになることでは問題は解決しない。なぜそうなったのか、その目的は何なのか、誰が、というか何者(何神)がそのようなことをしたのか、という、猫を何匹でも殺せるだけの好奇心があったからだ。
物語部の先輩からもらった箸は黒光りしているふた組の箸で、霊具としての怪しさに満ちていて、今はそのひとつを今日の妹が、もうひとつを真部岡恵留(まぶおかえる)さんが持っている。
晩御飯は別に豚キムチとご飯でもいいのだけど、それだと妹はもらった箸を使うだろうから、スプーンで食べられるメニューにしたのだ。副菜は茹でたブロッコリーとポテトサラダで、キムチチャーハンオムライスと同じ皿に乗せておいたので、やはり箸は必要ない。
天気がいいから、腹ごなしにコンビニまで行かない? とおれは誘ってみた。
今日の妹は、というよりどの妹も、風呂に入ったらすぐに寝てしまうので、少しお待ちください、と言って自分の部屋に戻り、黒っぽい服に白いレースっぽい飾りがついた、魔力が強化されたメイドみたいな格好をして降りてきた(白いところは多分車のライトを反射するんだろう)。小さい白い肩かけバッグからは、黒い箸がはみ出ている。
おれの家から歩いて5分のところにはコンビニがあり、さらにそこから5分歩くと、この春まで通っていた中学校にたどり着く。寄り道しなくて直接行っても、おれの家から中学校までは5分なのだが、割としょっちゅうギリギリになっていたのも、ほんのひと月前までのこととはいえ懐かしい思い出に感じられる。
夜の中学校の裏門は閉ざされていて、街灯で照らされている部分以外の校舎や校庭は真っ暗でこわい。嫌な話をするにはちょうどいい感じの嫌さ加減である。おれはブラックのホットコーヒーを、妹はホットミルクティーを飲み終えて、缶を捨てられそうな自動販売機のゴミ箱を探してみた。
「あのさ…もっと別のところで言えばよかったかもしれないんだけど」と、おれはどきどきしながら話しはじめた。
中学校の表門は人も車もけっこう通る、幅広い通りに面していたが、おれたちがいる裏門は通用門で、裏通りの車がかろうじてすれ違えるぐらいの幅しかない。
「実はおれ…真部岡さんのことが気になって仕方ないんだ。つまり、もっと親しくなりたいっていうか…あの子、ちょっと日本語が変だけど、いい子だよね? 普通レベルで可愛いし、歌もうまくて、人の話を聞くのもうまくて、頭もよさそうだし。それに…」結婚できるほうの妹だし、と続けようと思ったけど、妹の顔の影がどんどん暗くなっているのに気がついてやめた。
「あ…あ、あの女! わたくしは生まれてからずっと、兄さまを慕い、寄り添ってきましたのに!」
いやそこは、祝福してくれなくちゃ困るだろ妹よ。やっと妹病を克服できましたのね、ってな具合で。
何とかしてください真那木さん、とおれは必死に心の声で救いを求めたが、えー、あと3分だけ生き延びてください、と無茶で無慈悲な返答が返ってきた。
闇落ちした妹は、黒い箸をドスのような感じで持っている。確実に仕留められるおれの腹に狙いは定めている。
「兄さまを殺して、エリーを殺して、わたくしもあとから参ります!」
どうもそのお願いに逆らえないのは、真那木さんが小さいときの妹に似ているのと、お願いにはもっともなところがあるからだ。つまり、6人の妹がひとりになることでは問題は解決しない。なぜそうなったのか、その目的は何なのか、誰が、というか何者(何神)がそのようなことをしたのか、という、猫を何匹でも殺せるだけの好奇心があったからだ。
物語部の先輩からもらった箸は黒光りしているふた組の箸で、霊具としての怪しさに満ちていて、今はそのひとつを今日の妹が、もうひとつを真部岡恵留(まぶおかえる)さんが持っている。
晩御飯は別に豚キムチとご飯でもいいのだけど、それだと妹はもらった箸を使うだろうから、スプーンで食べられるメニューにしたのだ。副菜は茹でたブロッコリーとポテトサラダで、キムチチャーハンオムライスと同じ皿に乗せておいたので、やはり箸は必要ない。
天気がいいから、腹ごなしにコンビニまで行かない? とおれは誘ってみた。
今日の妹は、というよりどの妹も、風呂に入ったらすぐに寝てしまうので、少しお待ちください、と言って自分の部屋に戻り、黒っぽい服に白いレースっぽい飾りがついた、魔力が強化されたメイドみたいな格好をして降りてきた(白いところは多分車のライトを反射するんだろう)。小さい白い肩かけバッグからは、黒い箸がはみ出ている。
おれの家から歩いて5分のところにはコンビニがあり、さらにそこから5分歩くと、この春まで通っていた中学校にたどり着く。寄り道しなくて直接行っても、おれの家から中学校までは5分なのだが、割としょっちゅうギリギリになっていたのも、ほんのひと月前までのこととはいえ懐かしい思い出に感じられる。
夜の中学校の裏門は閉ざされていて、街灯で照らされている部分以外の校舎や校庭は真っ暗でこわい。嫌な話をするにはちょうどいい感じの嫌さ加減である。おれはブラックのホットコーヒーを、妹はホットミルクティーを飲み終えて、缶を捨てられそうな自動販売機のゴミ箱を探してみた。
「あのさ…もっと別のところで言えばよかったかもしれないんだけど」と、おれはどきどきしながら話しはじめた。
中学校の表門は人も車もけっこう通る、幅広い通りに面していたが、おれたちがいる裏門は通用門で、裏通りの車がかろうじてすれ違えるぐらいの幅しかない。
「実はおれ…真部岡さんのことが気になって仕方ないんだ。つまり、もっと親しくなりたいっていうか…あの子、ちょっと日本語が変だけど、いい子だよね? 普通レベルで可愛いし、歌もうまくて、人の話を聞くのもうまくて、頭もよさそうだし。それに…」結婚できるほうの妹だし、と続けようと思ったけど、妹の顔の影がどんどん暗くなっているのに気がついてやめた。
「あ…あ、あの女! わたくしは生まれてからずっと、兄さまを慕い、寄り添ってきましたのに!」
いやそこは、祝福してくれなくちゃ困るだろ妹よ。やっと妹病を克服できましたのね、ってな具合で。
何とかしてください真那木さん、とおれは必死に心の声で救いを求めたが、えー、あと3分だけ生き延びてください、と無茶で無慈悲な返答が返ってきた。
闇落ちした妹は、黒い箸をドスのような感じで持っている。確実に仕留められるおれの腹に狙いは定めている。
「兄さまを殺して、エリーを殺して、わたくしもあとから参ります!」
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