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第十一章 水曜日はキムチチャーハンオムライス
11-1話 先輩が去年、修学旅行で買ってきてくれたんだ
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SF映画ミステリー&お菓子研究会でみんながつまんでいた流奇奈紘季(るきなひろき)の残りである青いツブツブをおれは少しもらって、物語部の先輩のふたりにあげた。
ふたりは、お、何これ、珍味だねえ、と言いながら食べて、お礼にダンボール箱の中から夫婦箸のセットを出しておれにくれた。
「先輩が去年、修学旅行で買ってきてくれたんだ。今のところ使いみちはないんだけど、どの部もなんかお礼をあげてるってことなので、おまえらにこれをあげよう」と、太刀花蘇苗(たちばなそなえ)先輩は言った。
(まぎれもなく、これはただの修学旅行の土産物ではなくて、スピリチュアル・グッズですね)と、ご神木の真那木沙振(まなきさぶれ)さんは心の声でおれに言った。要するに霊具か。
「まあその、珍味と、それから物語部を信じてくれたお礼かな」と、依知川大悟(いちかわだいご)先輩は言ってにっこり笑った。
*
帰り道はおれと今日の妹、それに真部岡恵留(まぶおかえる)さんと席夜晴香(せきやはるか)さんが一緒で、真部岡さんは1964年東京オリンピック行進曲をおれに鼻歌で歌わせながら開会式での日本選手団の入場を伝えるアナウンサーの物真似をしていた。
「信じられません、まったく信じられません。しかしその、信じられないことがまさに今、私たちの目の前で起こっているのであります」
少し違うけど。
おれたちは歩きながら右手を胸に当ててから右上方に広げる、昔ながらの行進をしたので、すれ違った自転車のおじいちゃんはよそ見をして田んぼに落ちそうになってた。
なぜ右手を使うかというと、軍隊は見てるえらい人から見て、左側から来て右側に向かうからなんですね。なぜそうするかというと、えらい人が右手で帽子とか持って降るのに都合がいいから。これが競馬の場合だと、右手を上げてから左下に下げて、「行っっっけーっ!」って感じになるので、時計の針と同じ方向回り(正面から見て、右から左にゴールする形)になりやすい(というのは嘘です。本当のことが知りたいなら検索すればいい)。
*
駅のホームで席夜さんとは反対側方面の電車なので別れて、真部岡さんとはひとつ手前の駅で別れて、おれと今日の妹は、駅の近くのスーパーでキムチと卵と豚肉とニラを買った。これから家でキムチチャーハンを元にしたオムライスを作るのである。
妹はオムライスの上にケチャップでハートマークを描いてくれたけど、どうもチャーハンの味にはうまく合わない。
ふたりは、お、何これ、珍味だねえ、と言いながら食べて、お礼にダンボール箱の中から夫婦箸のセットを出しておれにくれた。
「先輩が去年、修学旅行で買ってきてくれたんだ。今のところ使いみちはないんだけど、どの部もなんかお礼をあげてるってことなので、おまえらにこれをあげよう」と、太刀花蘇苗(たちばなそなえ)先輩は言った。
(まぎれもなく、これはただの修学旅行の土産物ではなくて、スピリチュアル・グッズですね)と、ご神木の真那木沙振(まなきさぶれ)さんは心の声でおれに言った。要するに霊具か。
「まあその、珍味と、それから物語部を信じてくれたお礼かな」と、依知川大悟(いちかわだいご)先輩は言ってにっこり笑った。
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帰り道はおれと今日の妹、それに真部岡恵留(まぶおかえる)さんと席夜晴香(せきやはるか)さんが一緒で、真部岡さんは1964年東京オリンピック行進曲をおれに鼻歌で歌わせながら開会式での日本選手団の入場を伝えるアナウンサーの物真似をしていた。
「信じられません、まったく信じられません。しかしその、信じられないことがまさに今、私たちの目の前で起こっているのであります」
少し違うけど。
おれたちは歩きながら右手を胸に当ててから右上方に広げる、昔ながらの行進をしたので、すれ違った自転車のおじいちゃんはよそ見をして田んぼに落ちそうになってた。
なぜ右手を使うかというと、軍隊は見てるえらい人から見て、左側から来て右側に向かうからなんですね。なぜそうするかというと、えらい人が右手で帽子とか持って降るのに都合がいいから。これが競馬の場合だと、右手を上げてから左下に下げて、「行っっっけーっ!」って感じになるので、時計の針と同じ方向回り(正面から見て、右から左にゴールする形)になりやすい(というのは嘘です。本当のことが知りたいなら検索すればいい)。
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駅のホームで席夜さんとは反対側方面の電車なので別れて、真部岡さんとはひとつ手前の駅で別れて、おれと今日の妹は、駅の近くのスーパーでキムチと卵と豚肉とニラを買った。これから家でキムチチャーハンを元にしたオムライスを作るのである。
妹はオムライスの上にケチャップでハートマークを描いてくれたけど、どうもチャーハンの味にはうまく合わない。
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