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第九章 水曜日は乙女脳でチョロい
9-6話 ここのところ、もう一度見せてもらえませんか
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映像音楽部の小林美咲先輩が撮った自撮り映像はまだ続く。
*
「さあ、それではこの階段を昇って、最上階に行きましょう。外は雪が降り出しました…この、登りきって左側、新校舎の西側にあるのが図書室です。ではまず、先生、よろしくおねがいします」
と、ぐらぐらしている手ぶれ画面は一旦切れて、場面が変わる。
「この図書室の隣が、伝説によればこの世界のすべてを創造した物語部の部室です。ご覧の通り案内の札には「図書準備室」としか書いてありません」
案内の札にカメラが近づいて大きくなる。
「今回は特別に、図書室の管理と図書委員の顧問をしております寺山先生の許可をいただきまして、その部屋の鍵を貸していただきました。この鍵です」
と、小林先輩は鍵を見せる。
「問題の部屋に入る前に、同じ階にある部室を紹介しておきましょう。まず、階段を上がって右、校舎の東側にあるのが「ミステリー&お菓子研究会」です」
小林先輩は勝手にドアを開けて、自撮りを他撮りモードに切り替える。男女4人が仲良さそうに話しており、その中のリーダーっぽい男子が小林先輩に声かける。机の上にはビスケットとかチョコレートとか、黄色い背表紙の文庫のミステリーっぽい本が置いてあった。
「やあ、どうしたの小林ちゃん。新学期になったらもっと遊びにおいでよ。お菓子だったらいくらでもあげるから。え、何撮ってるの? 新しい映画の企画?」
女子ふたりは鏡を見たり身づくろいをしたりしはじめる。
「やだなあもう、そういうの先に言ってよ。えー、私たちのクラブは設立してから50年余りを経まして、創立の際には江戸川乱歩先生の自宅にうかがい…」
「その話はまたあとで。じゃ」
と、小林先輩は部室のドアを閉めて、また自撮りモードで語りはじめた。
「…と、このように、わたしたちの映像音響部と、こちらのミステリー&お菓子研究会とは仲が悪いのです。これはもはや天敵と言ってもいい。ミス菓子研滅すべし」
別に仲が悪いようには見えないんだけど。小林先輩は話しながらさらに東のほうへ進む。
「この先には、かつて使われていたと言われる部室の、フリースペースがありまして」
と話してる小林先輩の背後に、階段を昇って図書準備室に入っていくように見えた女の子が写った。
*
「あ、すみません、ここのところ、もう一度見せてもらえませんか」
その女の子は緑色のショートカットで、地味で真面目っぽいキャラ立てで、図書準備室の部屋に入るとき、一瞬だけドアが金色に光って、中からもまぶしい光が見えた。
おれの見間違いではない。写っていた子は、おれの妹の新しい友だち、昨日おれのために本を選んでおいてくれた図書委員の席夜晴香(せきやはるか)さんだ。
*
「さあ、それではこの階段を昇って、最上階に行きましょう。外は雪が降り出しました…この、登りきって左側、新校舎の西側にあるのが図書室です。ではまず、先生、よろしくおねがいします」
と、ぐらぐらしている手ぶれ画面は一旦切れて、場面が変わる。
「この図書室の隣が、伝説によればこの世界のすべてを創造した物語部の部室です。ご覧の通り案内の札には「図書準備室」としか書いてありません」
案内の札にカメラが近づいて大きくなる。
「今回は特別に、図書室の管理と図書委員の顧問をしております寺山先生の許可をいただきまして、その部屋の鍵を貸していただきました。この鍵です」
と、小林先輩は鍵を見せる。
「問題の部屋に入る前に、同じ階にある部室を紹介しておきましょう。まず、階段を上がって右、校舎の東側にあるのが「ミステリー&お菓子研究会」です」
小林先輩は勝手にドアを開けて、自撮りを他撮りモードに切り替える。男女4人が仲良さそうに話しており、その中のリーダーっぽい男子が小林先輩に声かける。机の上にはビスケットとかチョコレートとか、黄色い背表紙の文庫のミステリーっぽい本が置いてあった。
「やあ、どうしたの小林ちゃん。新学期になったらもっと遊びにおいでよ。お菓子だったらいくらでもあげるから。え、何撮ってるの? 新しい映画の企画?」
女子ふたりは鏡を見たり身づくろいをしたりしはじめる。
「やだなあもう、そういうの先に言ってよ。えー、私たちのクラブは設立してから50年余りを経まして、創立の際には江戸川乱歩先生の自宅にうかがい…」
「その話はまたあとで。じゃ」
と、小林先輩は部室のドアを閉めて、また自撮りモードで語りはじめた。
「…と、このように、わたしたちの映像音響部と、こちらのミステリー&お菓子研究会とは仲が悪いのです。これはもはや天敵と言ってもいい。ミス菓子研滅すべし」
別に仲が悪いようには見えないんだけど。小林先輩は話しながらさらに東のほうへ進む。
「この先には、かつて使われていたと言われる部室の、フリースペースがありまして」
と話してる小林先輩の背後に、階段を昇って図書準備室に入っていくように見えた女の子が写った。
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「あ、すみません、ここのところ、もう一度見せてもらえませんか」
その女の子は緑色のショートカットで、地味で真面目っぽいキャラ立てで、図書準備室の部屋に入るとき、一瞬だけドアが金色に光って、中からもまぶしい光が見えた。
おれの見間違いではない。写っていた子は、おれの妹の新しい友だち、昨日おれのために本を選んでおいてくれた図書委員の席夜晴香(せきやはるか)さんだ。
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