上 下
58 / 95
第九章 水曜日は乙女脳でチョロい

9-6話 ここのところ、もう一度見せてもらえませんか

しおりを挟む
 映像音楽部の小林美咲先輩が撮った自撮り映像はまだ続く。

     *
「さあ、それではこの階段を昇って、最上階に行きましょう。外は雪が降り出しました…この、登りきって左側、新校舎の西側にあるのが図書室です。ではまず、先生、よろしくおねがいします」

 と、ぐらぐらしている手ぶれ画面は一旦切れて、場面が変わる。

「この図書室の隣が、伝説によればこの世界のすべてを創造した物語部の部室です。ご覧の通り案内の札には「図書準備室」としか書いてありません」


 案内の札にカメラが近づいて大きくなる。

「今回は特別に、図書室の管理と図書委員の顧問をしております寺山先生の許可をいただきまして、その部屋の鍵を貸していただきました。この鍵です」

 と、小林先輩は鍵を見せる。

「問題の部屋に入る前に、同じ階にある部室を紹介しておきましょう。まず、階段を上がって右、校舎の東側にあるのが「ミステリー&お菓子研究会」です」

 小林先輩は勝手にドアを開けて、自撮りを他撮りモードに切り替える。男女4人が仲良さそうに話しており、その中のリーダーっぽい男子が小林先輩に声かける。机の上にはビスケットとかチョコレートとか、黄色い背表紙の文庫のミステリーっぽい本が置いてあった。

「やあ、どうしたの小林ちゃん。新学期になったらもっと遊びにおいでよ。お菓子だったらいくらでもあげるから。え、何撮ってるの? 新しい映画の企画?」

 女子ふたりは鏡を見たり身づくろいをしたりしはじめる。

「やだなあもう、そういうの先に言ってよ。えー、私たちのクラブは設立してから50年余りを経まして、創立の際には江戸川乱歩先生の自宅にうかがい…」

「その話はまたあとで。じゃ」

 と、小林先輩は部室のドアを閉めて、また自撮りモードで語りはじめた。

「…と、このように、わたしたちの映像音響部と、こちらのミステリー&お菓子研究会とは仲が悪いのです。これはもはや天敵と言ってもいい。ミス菓子研滅すべし」

 別に仲が悪いようには見えないんだけど。小林先輩は話しながらさらに東のほうへ進む。

「この先には、かつて使われていたと言われる部室の、フリースペースがありまして」

 と話してる小林先輩の背後に、階段を昇って図書準備室に入っていくように見えた女の子が写った。

     *

「あ、すみません、ここのところ、もう一度見せてもらえませんか」

 その女の子は緑色のショートカットで、地味で真面目っぽいキャラ立てで、図書準備室の部屋に入るとき、一瞬だけドアが金色に光って、中からもまぶしい光が見えた。

 おれの見間違いではない。写っていた子は、おれの妹の新しい友だち、昨日おれのために本を選んでおいてくれた図書委員の席夜晴香(せきやはるか)さんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...