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第七章 火曜日はサディスト(裏)
7-1話 不思議なご縁であなたと勝負しなければならないことになりました
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この2日で学んだような気になったのは、強さと居場所と、責任に関することだ、とおれは5冊の本を抱えて思った。責任というか、生きていくことの重さ、かな。
そして、買ってきたごぼうを、木刀みたいな感じで持ってポーズをつけてみた。
おれが高校生になってから利用している(と言っても2日目ですけど)駅から5分ぐらいのところには24時間営業のスーパーがあり、日常使いとしては家から5分ぐらい(自転車だとすぐ)のところにある地元周辺のスーパーのほうが、野菜も肉も安くて質がいいのだけれど、きょうはきんぴらごぼうを作ろう、とふと思ったので寄り道をして買ってきたのだった。
メールで受け取った、今日の妹のご所望は「サバの塩焼き 3人分」とのことなので、それに合わせて和風の献立を考えることにした。しかしなぜ3人分なのか。
その前に、試合の顛末について話しておかないといけない。いろいろとっちらかって困る。
*
念のため、神の力ビームとか使っちゃだめだよ、とおれは言い、流奇奈紘季(るきなひろき)は、手加減はするし神の力は防御シールドだけにしておく、と言った。
田部良紅羅架(たぶらくらか)さんは助走をつけて2メートルぐらいジャンプして、「至誠」の額の下にあるとても長い木刀を取ると、素早く流奇奈に渡した。
流奇奈は「うまく力の加減ができるかなあ」と言いながら、達人っぽい先輩と向き合った。神の目の識別能力を「無」から「微弱」に上げると、流奇奈の周りがうす青い光に包まれているように見え、その色は気合が入るにともない濃く、強くなった。
対する先輩の気の色はうす緑色で、これもヒトとしては実に美しいものだった、が…。
30秒もしないうちに先輩は2、3発叩かれて完敗した。叩いた分のうち1、2発は余計である。
「素晴らしいです! 流奇奈さんは文武両道使いなのです!」と、真部岡恵留(まぶおかえる)さんは素直に感動していた。
部員たちは輪になって集まり、相談をはじめた。輪の中にはなんか小さめの、ハツカネズミっぽい女子の先輩がいて、無理無理、みたいな感じで手のひらをみんなのほうに向けて断っていたけど、部員全員が頭を下げて、お願いします、みたいな感じで頼んだので、先輩は腕組みをして考えて、よーし、って感じで腰に手を当てて考えて、ごく普通の竹刀を手にしてこちらのほうにやってきた。
いちいちモーションがわかりやすい先輩である。
「部長の大石吐夢(おおいしとむ)と申します。不思議なご縁であなたと勝負しなければならないことになりました。だって廃部ってひどいじゃないですか? べ、別に私が一番強いから部長になったわけじゃないんですよ? 勘違いしないでください?」
なぜ疑問形で話すのか。それから、ジェリーじゃないんだな。
確かにこの先輩は全然強そうではない。しかしおれの今までの経験から言うと、部長とかリーダーというのは強い弱いで決まるものではなく、何かを決めるときにその場にいなければならないものとして決まる。会社の社長みたいなもんだな。あるいは国王か。
「では、はじめます?」
おれはふたりの戦いぶりを、再び神の目の微弱モードで観察することにした。
ところが、大石先輩の「気」の具合が実に変なんだよな。最初はうす紫色の髪の毛と同じような色のものが出てたんだけど、しばらく見ているとだんだん透明なものになってくる。それに対して流奇奈のほうは、青い光が強くなるのは前の勝負と同じなんだけど、動きが取れないで額から汗を流している。
あれれ、と神の目が装着されている左目をこすってまばたきすると、右目では先輩が見えるのだが、左目では次第に薄ぼんやりとした、半透明から透明な形に変わっている。
そして、買ってきたごぼうを、木刀みたいな感じで持ってポーズをつけてみた。
おれが高校生になってから利用している(と言っても2日目ですけど)駅から5分ぐらいのところには24時間営業のスーパーがあり、日常使いとしては家から5分ぐらい(自転車だとすぐ)のところにある地元周辺のスーパーのほうが、野菜も肉も安くて質がいいのだけれど、きょうはきんぴらごぼうを作ろう、とふと思ったので寄り道をして買ってきたのだった。
メールで受け取った、今日の妹のご所望は「サバの塩焼き 3人分」とのことなので、それに合わせて和風の献立を考えることにした。しかしなぜ3人分なのか。
その前に、試合の顛末について話しておかないといけない。いろいろとっちらかって困る。
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念のため、神の力ビームとか使っちゃだめだよ、とおれは言い、流奇奈紘季(るきなひろき)は、手加減はするし神の力は防御シールドだけにしておく、と言った。
田部良紅羅架(たぶらくらか)さんは助走をつけて2メートルぐらいジャンプして、「至誠」の額の下にあるとても長い木刀を取ると、素早く流奇奈に渡した。
流奇奈は「うまく力の加減ができるかなあ」と言いながら、達人っぽい先輩と向き合った。神の目の識別能力を「無」から「微弱」に上げると、流奇奈の周りがうす青い光に包まれているように見え、その色は気合が入るにともない濃く、強くなった。
対する先輩の気の色はうす緑色で、これもヒトとしては実に美しいものだった、が…。
30秒もしないうちに先輩は2、3発叩かれて完敗した。叩いた分のうち1、2発は余計である。
「素晴らしいです! 流奇奈さんは文武両道使いなのです!」と、真部岡恵留(まぶおかえる)さんは素直に感動していた。
部員たちは輪になって集まり、相談をはじめた。輪の中にはなんか小さめの、ハツカネズミっぽい女子の先輩がいて、無理無理、みたいな感じで手のひらをみんなのほうに向けて断っていたけど、部員全員が頭を下げて、お願いします、みたいな感じで頼んだので、先輩は腕組みをして考えて、よーし、って感じで腰に手を当てて考えて、ごく普通の竹刀を手にしてこちらのほうにやってきた。
いちいちモーションがわかりやすい先輩である。
「部長の大石吐夢(おおいしとむ)と申します。不思議なご縁であなたと勝負しなければならないことになりました。だって廃部ってひどいじゃないですか? べ、別に私が一番強いから部長になったわけじゃないんですよ? 勘違いしないでください?」
なぜ疑問形で話すのか。それから、ジェリーじゃないんだな。
確かにこの先輩は全然強そうではない。しかしおれの今までの経験から言うと、部長とかリーダーというのは強い弱いで決まるものではなく、何かを決めるときにその場にいなければならないものとして決まる。会社の社長みたいなもんだな。あるいは国王か。
「では、はじめます?」
おれはふたりの戦いぶりを、再び神の目の微弱モードで観察することにした。
ところが、大石先輩の「気」の具合が実に変なんだよな。最初はうす紫色の髪の毛と同じような色のものが出てたんだけど、しばらく見ているとだんだん透明なものになってくる。それに対して流奇奈のほうは、青い光が強くなるのは前の勝負と同じなんだけど、動きが取れないで額から汗を流している。
あれれ、と神の目が装着されている左目をこすってまばたきすると、右目では先輩が見えるのだが、左目では次第に薄ぼんやりとした、半透明から透明な形に変わっている。
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