おれのふたごの妹はひとりだが6人いる

るみえーる

文字の大きさ
上 下
40 / 95
第七章 火曜日はサディスト(裏)

7-1話 不思議なご縁であなたと勝負しなければならないことになりました

しおりを挟む
 この2日で学んだような気になったのは、強さと居場所と、責任に関することだ、とおれは5冊の本を抱えて思った。責任というか、生きていくことの重さ、かな。

 そして、買ってきたごぼうを、木刀みたいな感じで持ってポーズをつけてみた。

 おれが高校生になってから利用している(と言っても2日目ですけど)駅から5分ぐらいのところには24時間営業のスーパーがあり、日常使いとしては家から5分ぐらい(自転車だとすぐ)のところにある地元周辺のスーパーのほうが、野菜も肉も安くて質がいいのだけれど、きょうはきんぴらごぼうを作ろう、とふと思ったので寄り道をして買ってきたのだった。

 メールで受け取った、今日の妹のご所望は「サバの塩焼き 3人分」とのことなので、それに合わせて和風の献立を考えることにした。しかしなぜ3人分なのか。

 その前に、試合の顛末について話しておかないといけない。いろいろとっちらかって困る。

     *

 念のため、神の力ビームとか使っちゃだめだよ、とおれは言い、流奇奈紘季(るきなひろき)は、手加減はするし神の力は防御シールドだけにしておく、と言った。

 田部良紅羅架(たぶらくらか)さんは助走をつけて2メートルぐらいジャンプして、「至誠」の額の下にあるとても長い木刀を取ると、素早く流奇奈に渡した。

 流奇奈は「うまく力の加減ができるかなあ」と言いながら、達人っぽい先輩と向き合った。神の目の識別能力を「無」から「微弱」に上げると、流奇奈の周りがうす青い光に包まれているように見え、その色は気合が入るにともない濃く、強くなった。

 対する先輩の気の色はうす緑色で、これもヒトとしては実に美しいものだった、が…。

 30秒もしないうちに先輩は2、3発叩かれて完敗した。叩いた分のうち1、2発は余計である。

「素晴らしいです! 流奇奈さんは文武両道使いなのです!」と、真部岡恵留(まぶおかえる)さんは素直に感動していた。

 部員たちは輪になって集まり、相談をはじめた。輪の中にはなんか小さめの、ハツカネズミっぽい女子の先輩がいて、無理無理、みたいな感じで手のひらをみんなのほうに向けて断っていたけど、部員全員が頭を下げて、お願いします、みたいな感じで頼んだので、先輩は腕組みをして考えて、よーし、って感じで腰に手を当てて考えて、ごく普通の竹刀を手にしてこちらのほうにやってきた。

 いちいちモーションがわかりやすい先輩である。

「部長の大石吐夢(おおいしとむ)と申します。不思議なご縁であなたと勝負しなければならないことになりました。だって廃部ってひどいじゃないですか? べ、別に私が一番強いから部長になったわけじゃないんですよ? 勘違いしないでください?」

 なぜ疑問形で話すのか。それから、ジェリーじゃないんだな。

 確かにこの先輩は全然強そうではない。しかしおれの今までの経験から言うと、部長とかリーダーというのは強い弱いで決まるものではなく、何かを決めるときにその場にいなければならないものとして決まる。会社の社長みたいなもんだな。あるいは国王か。

「では、はじめます?」

 おれはふたりの戦いぶりを、再び神の目の微弱モードで観察することにした。
 ところが、大石先輩の「気」の具合が実に変なんだよな。最初はうす紫色の髪の毛と同じような色のものが出てたんだけど、しばらく見ているとだんだん透明なものになってくる。それに対して流奇奈のほうは、青い光が強くなるのは前の勝負と同じなんだけど、動きが取れないで額から汗を流している。

 あれれ、と神の目が装着されている左目をこすってまばたきすると、右目では先輩が見えるのだが、左目では次第に薄ぼんやりとした、半透明から透明な形に変わっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本入れ替えグルメ旅・られた肥後褐牛死体一頭食べ尽し

蓮實長治
ミステリー
「あれ? この死体の様子、遺族が言ってた事と食い違いが有りますよ?」 変死体の検死を行なっていた監察医は不審な点に気付くが……? 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...