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第六章 火曜日はサディスト
6-5話 モブにまぎれてて今まで気がつかなかったよ
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5点を神様チームが入れたところで、相手チームはメンバーが入れ替わって、六本木真澄(ろっぽんぎますみ)先輩の代わりにリーダーと思われる青山茂(あおやましげる)先輩が出て、直後に問題が起きた。
ボールの取り合いで青山先輩が、へろへろ気味になっている三絡克真 (みつがねかつま)さんと揉めて、三絡さんがちょっと突き飛ばされるような感じで後ろに倒れた。
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ」と、これが悪役だったら口先で笑いながら言うところだが、青山先輩は目つきが悪いだけで本気で心配していた。
「試合中断して保健室行こうか?」
「大丈夫、こういうのは仕方ないんじゃないかな」と、三絡さんは答えた。
「わたしの一の子分をひどい目に会わせるとはけしからん」と、流奇奈紘季(るきなひろき)が割り込んできた。
別に三絡さんは流奇奈の子分でも何でもないんだが(チームメンバーではありますが)。
ふんぬ、と気張った流奇奈からうす青い衝撃波みたいなものが出て、ボールを持っていた青山先輩は3メートルぐらいぶっ飛んだ。正直言って青山先輩が受けたダメージのほうが大きかったと思う。
「な…な…」何しやがるこの野郎、と、これがチンピラ系の悪役だったら言うところだが、青山先輩は普通にいい人だった。
「…なるほど、そちらも選手交替だな。試合を続けよう。おれたちはまだ負けたりも、あきらめたりもしていない」
おれは流奇奈の手を引っ張って止めた。
「だめだよ、これ以上やっちゃ。ストリートバスケじゃなくなっちゃう」
「しかしだな…」
「真那木沙振(まなきさぶれ)さんも見てて怒ってるよ」と、おれが小声でつけ加えると、流奇奈は困った顔をした。
真那木さんは神社のご神木で、影のリーダーなのだ。
「あと、校内世論っぽいのもおれたちの味方ではない」
確かに、観客の多くは最初から先輩チームを応援していて、今ではおれたちが完全に悪役である。
「もっ、元はと言えば、屋上で見ていて勘違いしたお前が悪い」と、流奇奈は観客の中に紛れている冴野美登里(さやみどり)を指差した。
「この男女の先輩たちは別に仲良しだし、このコートは先輩たちが作った居場所じゃないのか?」
美登里は、てへ、と舌を出した。それから、昨日に引き続きしていた眼帯を外して目をこすると目と口を大きくして言った。
「あーっ、バスケ女子のひとりって奉仕部の山城出海(やましろいずみ)先輩じゃん! モブにまぎれてて今まで気がつかなかったよ。きのうは遊歩道のゴミ拾い、一緒にやりましたよね?」
奉仕部というのは別名ヒーロー部で、地味に地域を支えている奉仕活動コミュニティである。もしこの話がアニメになったとしたら、きのうの美登里の説明シーンで、さり気なく山城先輩が出ているはずだ。
「ワタシも先刻から悉知(しっち)しておりましたが、やはりそうでしたか」と、美登里たちと一緒に見ていた真部岡恵留(まぶおかえる)さんも言った。
この人の日本語はなんか変なんだけど、外国で長い間暮らしていたらしいかららしい。
数十人にふくれ上がった観客の後ろのほうから、何やら拍手の音がする。一同が道を開けると、生徒会副会長の樋裏聖(ひうらせい)先輩が自分で手を叩きながらおれたちのほうにやってきた。
そろそろ誰かが、話をまとめにかかっているようだ。
ボールの取り合いで青山先輩が、へろへろ気味になっている三絡克真 (みつがねかつま)さんと揉めて、三絡さんがちょっと突き飛ばされるような感じで後ろに倒れた。
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ」と、これが悪役だったら口先で笑いながら言うところだが、青山先輩は目つきが悪いだけで本気で心配していた。
「試合中断して保健室行こうか?」
「大丈夫、こういうのは仕方ないんじゃないかな」と、三絡さんは答えた。
「わたしの一の子分をひどい目に会わせるとはけしからん」と、流奇奈紘季(るきなひろき)が割り込んできた。
別に三絡さんは流奇奈の子分でも何でもないんだが(チームメンバーではありますが)。
ふんぬ、と気張った流奇奈からうす青い衝撃波みたいなものが出て、ボールを持っていた青山先輩は3メートルぐらいぶっ飛んだ。正直言って青山先輩が受けたダメージのほうが大きかったと思う。
「な…な…」何しやがるこの野郎、と、これがチンピラ系の悪役だったら言うところだが、青山先輩は普通にいい人だった。
「…なるほど、そちらも選手交替だな。試合を続けよう。おれたちはまだ負けたりも、あきらめたりもしていない」
おれは流奇奈の手を引っ張って止めた。
「だめだよ、これ以上やっちゃ。ストリートバスケじゃなくなっちゃう」
「しかしだな…」
「真那木沙振(まなきさぶれ)さんも見てて怒ってるよ」と、おれが小声でつけ加えると、流奇奈は困った顔をした。
真那木さんは神社のご神木で、影のリーダーなのだ。
「あと、校内世論っぽいのもおれたちの味方ではない」
確かに、観客の多くは最初から先輩チームを応援していて、今ではおれたちが完全に悪役である。
「もっ、元はと言えば、屋上で見ていて勘違いしたお前が悪い」と、流奇奈は観客の中に紛れている冴野美登里(さやみどり)を指差した。
「この男女の先輩たちは別に仲良しだし、このコートは先輩たちが作った居場所じゃないのか?」
美登里は、てへ、と舌を出した。それから、昨日に引き続きしていた眼帯を外して目をこすると目と口を大きくして言った。
「あーっ、バスケ女子のひとりって奉仕部の山城出海(やましろいずみ)先輩じゃん! モブにまぎれてて今まで気がつかなかったよ。きのうは遊歩道のゴミ拾い、一緒にやりましたよね?」
奉仕部というのは別名ヒーロー部で、地味に地域を支えている奉仕活動コミュニティである。もしこの話がアニメになったとしたら、きのうの美登里の説明シーンで、さり気なく山城先輩が出ているはずだ。
「ワタシも先刻から悉知(しっち)しておりましたが、やはりそうでしたか」と、美登里たちと一緒に見ていた真部岡恵留(まぶおかえる)さんも言った。
この人の日本語はなんか変なんだけど、外国で長い間暮らしていたらしいかららしい。
数十人にふくれ上がった観客の後ろのほうから、何やら拍手の音がする。一同が道を開けると、生徒会副会長の樋裏聖(ひうらせい)先輩が自分で手を叩きながらおれたちのほうにやってきた。
そろそろ誰かが、話をまとめにかかっているようだ。
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