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第五章 月曜日はロールキャベツ
5-3話 なんだよその、ひとりごちた、って日本語は
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三絡克真 (みつがねかつま)さんは油断しているとどこでも寝てしまうのだけど、起こす気になってちょんちょんとつつくと割とすぐに目が覚めて、え、いま寝てたっけ、みたいな顔をする。
降りる駅についたころにはだいぶ日も傾いてきていて、駅前で、今日うちでご飯食べてかない? って聞いてみたけど、飼い主が待ってるんで、ってことで別れた。猫神様はご主人って言わないのね。飼い主。それだったらタマネギ入りのロールキャベツを作っても大丈夫だ。
家の前の道はきれいに、というか雑に雪かきがしてあって、どうせ雑な妹だから周りがやっていたので仕方なくやったのだろう。学校よりもこちらのほうが雪は少なかったようで、明日の朝からはどんどん溶けてしまう風情である。
雑で普通な今日の妹は、他の妹と比べると少し頭がいいはずなので、成仏する前に少し聞いておきたいことがあった。
ここでうだうだとロールキャベツのレシピなどを書いても仕方ないので大きく省略するが、そのメニューでいいところは翌朝も残りを食べられるというのと、副菜をあまり考えなくてもいいことで、悪いところは翌朝も食べられるぐらいの量を作らないとうまくできないのと、翌日の昼食の弁当の素材にはならないことだ。
次の日から普通の授業がはじまるというので、食後は時間割に合わせてがつがつと予習をしたおれは(突然の病気で学校に行けなくなっても大丈夫なように、二週間ぐらいは先に予習しておくのである)、自分の部屋の片隅に置きっぱなしの、神社のご神木である真那木沙振(まなきさぶれ)さんから預かった霊具、というか見た目はほとんど昭和の時代の修学旅行のおみやげ的がらくたに目をやった。
おれの部屋は壁に1960年代の宇宙へ行く映画のポスター、1970年代のカンフー映画のポスター、1980年代のホラー映画のポスターなどが貼られ、レースのカーテンがかかっているフランス窓(正確にはただの外開きの飾り窓。アニメで屋根裏に住んでいる子の部屋にあるような奴)とか、ピンクに緑の水玉の枕とか、赤べこの胴体にアナログな文字盤が埋め込まれている目覚まし時計などがあり、町田智浩が高校時代に過ごした部屋みたいなので、そういう霊具が置かれていてもそんなに目立たない。オタク系の萌えグッズとか美少女ゲームとかは置いてないことになっている。本棚みたいな棚に並べてあるのも、ほとんどが昔の映画のビデオと、2週間30冊という図書館の貸し出し規則に従って借りてきた、今時の書店では売っていなような本と、学習参考書だ。
「いよいよこの霊具を使うときが来たか」と、おれはひとりごちた。
ていうか、なんだよその、ひとりごちた、って日本語は。そんなのないだろ。誰よそんな言葉最初に使ったのは。おれが小説書いてる人間なら恥ずかしくて使えないね。はっ、バカじゃねーの。延々と続くひとりごち語り。英語っぽく言えばヒトリゴチックだ。
頭の少しいいほうの今日の妹は、すでに一学期分の予習をすませていて、風呂から出たあとはダイニングルームでごろごろと、録画してあったロクでもない魔法少女アニメを見ている。妹は6人いても6つ部屋があるわけではないから、そこらへんどう調整しているんだろう。
えーと何だったっけかな、妹に聞いておきたいことって。ああ、思い出した。
勉強が一段落して風呂に入って、時計の針が10時を回ったころ、月がきれいなのでちょっと散歩でもしてみない? 聞きたいこととかもあるんで、とおれは妹を誘ってみた。
降りる駅についたころにはだいぶ日も傾いてきていて、駅前で、今日うちでご飯食べてかない? って聞いてみたけど、飼い主が待ってるんで、ってことで別れた。猫神様はご主人って言わないのね。飼い主。それだったらタマネギ入りのロールキャベツを作っても大丈夫だ。
家の前の道はきれいに、というか雑に雪かきがしてあって、どうせ雑な妹だから周りがやっていたので仕方なくやったのだろう。学校よりもこちらのほうが雪は少なかったようで、明日の朝からはどんどん溶けてしまう風情である。
雑で普通な今日の妹は、他の妹と比べると少し頭がいいはずなので、成仏する前に少し聞いておきたいことがあった。
ここでうだうだとロールキャベツのレシピなどを書いても仕方ないので大きく省略するが、そのメニューでいいところは翌朝も残りを食べられるというのと、副菜をあまり考えなくてもいいことで、悪いところは翌朝も食べられるぐらいの量を作らないとうまくできないのと、翌日の昼食の弁当の素材にはならないことだ。
次の日から普通の授業がはじまるというので、食後は時間割に合わせてがつがつと予習をしたおれは(突然の病気で学校に行けなくなっても大丈夫なように、二週間ぐらいは先に予習しておくのである)、自分の部屋の片隅に置きっぱなしの、神社のご神木である真那木沙振(まなきさぶれ)さんから預かった霊具、というか見た目はほとんど昭和の時代の修学旅行のおみやげ的がらくたに目をやった。
おれの部屋は壁に1960年代の宇宙へ行く映画のポスター、1970年代のカンフー映画のポスター、1980年代のホラー映画のポスターなどが貼られ、レースのカーテンがかかっているフランス窓(正確にはただの外開きの飾り窓。アニメで屋根裏に住んでいる子の部屋にあるような奴)とか、ピンクに緑の水玉の枕とか、赤べこの胴体にアナログな文字盤が埋め込まれている目覚まし時計などがあり、町田智浩が高校時代に過ごした部屋みたいなので、そういう霊具が置かれていてもそんなに目立たない。オタク系の萌えグッズとか美少女ゲームとかは置いてないことになっている。本棚みたいな棚に並べてあるのも、ほとんどが昔の映画のビデオと、2週間30冊という図書館の貸し出し規則に従って借りてきた、今時の書店では売っていなような本と、学習参考書だ。
「いよいよこの霊具を使うときが来たか」と、おれはひとりごちた。
ていうか、なんだよその、ひとりごちた、って日本語は。そんなのないだろ。誰よそんな言葉最初に使ったのは。おれが小説書いてる人間なら恥ずかしくて使えないね。はっ、バカじゃねーの。延々と続くひとりごち語り。英語っぽく言えばヒトリゴチックだ。
頭の少しいいほうの今日の妹は、すでに一学期分の予習をすませていて、風呂から出たあとはダイニングルームでごろごろと、録画してあったロクでもない魔法少女アニメを見ている。妹は6人いても6つ部屋があるわけではないから、そこらへんどう調整しているんだろう。
えーと何だったっけかな、妹に聞いておきたいことって。ああ、思い出した。
勉強が一段落して風呂に入って、時計の針が10時を回ったころ、月がきれいなのでちょっと散歩でもしてみない? 聞きたいこととかもあるんで、とおれは妹を誘ってみた。
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