おれのふたごの妹はひとりだが6人いる

るみえーる

文字の大きさ
上 下
31 / 95
第五章 月曜日はロールキャベツ

5-3話 なんだよその、ひとりごちた、って日本語は

しおりを挟む
 三絡克真 (みつがねかつま)さんは油断しているとどこでも寝てしまうのだけど、起こす気になってちょんちょんとつつくと割とすぐに目が覚めて、え、いま寝てたっけ、みたいな顔をする。

 降りる駅についたころにはだいぶ日も傾いてきていて、駅前で、今日うちでご飯食べてかない? って聞いてみたけど、飼い主が待ってるんで、ってことで別れた。猫神様はご主人って言わないのね。飼い主。それだったらタマネギ入りのロールキャベツを作っても大丈夫だ。

 家の前の道はきれいに、というか雑に雪かきがしてあって、どうせ雑な妹だから周りがやっていたので仕方なくやったのだろう。学校よりもこちらのほうが雪は少なかったようで、明日の朝からはどんどん溶けてしまう風情である。

 雑で普通な今日の妹は、他の妹と比べると少し頭がいいはずなので、成仏する前に少し聞いておきたいことがあった。

 ここでうだうだとロールキャベツのレシピなどを書いても仕方ないので大きく省略するが、そのメニューでいいところは翌朝も残りを食べられるというのと、副菜をあまり考えなくてもいいことで、悪いところは翌朝も食べられるぐらいの量を作らないとうまくできないのと、翌日の昼食の弁当の素材にはならないことだ。

 次の日から普通の授業がはじまるというので、食後は時間割に合わせてがつがつと予習をしたおれは(突然の病気で学校に行けなくなっても大丈夫なように、二週間ぐらいは先に予習しておくのである)、自分の部屋の片隅に置きっぱなしの、神社のご神木である真那木沙振(まなきさぶれ)さんから預かった霊具、というか見た目はほとんど昭和の時代の修学旅行のおみやげ的がらくたに目をやった。

 おれの部屋は壁に1960年代の宇宙へ行く映画のポスター、1970年代のカンフー映画のポスター、1980年代のホラー映画のポスターなどが貼られ、レースのカーテンがかかっているフランス窓(正確にはただの外開きの飾り窓。アニメで屋根裏に住んでいる子の部屋にあるような奴)とか、ピンクに緑の水玉の枕とか、赤べこの胴体にアナログな文字盤が埋め込まれている目覚まし時計などがあり、町田智浩が高校時代に過ごした部屋みたいなので、そういう霊具が置かれていてもそんなに目立たない。オタク系の萌えグッズとか美少女ゲームとかは置いてないことになっている。本棚みたいな棚に並べてあるのも、ほとんどが昔の映画のビデオと、2週間30冊という図書館の貸し出し規則に従って借りてきた、今時の書店では売っていなような本と、学習参考書だ。

「いよいよこの霊具を使うときが来たか」と、おれはひとりごちた。

 ていうか、なんだよその、ひとりごちた、って日本語は。そんなのないだろ。誰よそんな言葉最初に使ったのは。おれが小説書いてる人間なら恥ずかしくて使えないね。はっ、バカじゃねーの。延々と続くひとりごち語り。英語っぽく言えばヒトリゴチックだ。

 頭の少しいいほうの今日の妹は、すでに一学期分の予習をすませていて、風呂から出たあとはダイニングルームでごろごろと、録画してあったロクでもない魔法少女アニメを見ている。妹は6人いても6つ部屋があるわけではないから、そこらへんどう調整しているんだろう。

 えーと何だったっけかな、妹に聞いておきたいことって。ああ、思い出した。

 勉強が一段落して風呂に入って、時計の針が10時を回ったころ、月がきれいなのでちょっと散歩でもしてみない? 聞きたいこととかもあるんで、とおれは妹を誘ってみた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本入れ替えグルメ旅・られた肥後褐牛死体一頭食べ尽し

蓮實長治
ミステリー
「あれ? この死体の様子、遺族が言ってた事と食い違いが有りますよ?」 変死体の検死を行なっていた監察医は不審な点に気付くが……? 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライムばかり食べてた俺は、今日から少し優雅な冒険者生活を始めます。

いけお
ファンタジー
人違いで異世界に飛ばされてしまった佐藤 始(さとう はじめ)は、女神システィナからとりあえず悪い物を食べて死ななければ大丈夫だろうと【丈夫な胃袋】と【共通言語】を与えられ放り出されてしまう。 出身地不明で一銭も持たずに現れた彼を怪しんだ村の住人達は簡単な仕事の紹介すら断る有様で餓死が目の前に迫った時、始は空腹のあまり右手で掴んだ物を思わず口に入れてしまった。 「何だこれ?結構美味いぞ」 知らずに食べていた物は何とスライム、弱って死ぬ寸前だった始を捕食しようと集まっていたのだった。食べられると分かった瞬間スライム達がごちそうに早代わり、始のスライムを食べる生活が始まった。 それから数年後、農作物を荒らすスライムを食べて退治してくれる始をいつの間にか村人達は受け入れていた。しかし、この頃になると始は普通のスライムだけの食生活に飽きてしまい誰も口にしない様な物まで陰でこっそり食べていた・・・。数え切れない程のスライムを胃袋に収めてきたそんなある日の事、彼は食べたスライム達からとんでもない能力を幾つも手に入れていた事に気が付いた。 始はこの力を活かす為に町に移住すると、悪徳領主や商人達が不当に得た金品を奪う冒険者生活を始めるのだった・・・。 仕事中の空いている時間に物語を考えているので、更新は不定期です。また、感想や質問にも出来る限り答えるつもりでいますが回答出来ない場合も有ります。多少の強引な設定や進行も有るかもしれませんが、そこは笑って許してください。 この作品は 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。

処理中です...