23 / 95
第四章 月曜日は普通じゃない(裏)
4-2話 このクラブはもうおしめえだ
しおりを挟む
「あたしの名前はマコトで、摩殊って書きます」と、アルパカっぽい茶道部部長の時尾先輩は丸っこい字をスマホのメモに書いて教えてくれた。
「友だちとかは、まとっち、とか、まとちゃん、とか呼んでるんだけど、君たちは友だちでも敵でも下僕でもないから、時尾先輩でいいよ」
その名前もベタっぽいんだが、細かいことはどうでもいい。
時尾先輩は部屋の窓とその外の簾を上げながら説明しはじめた。
「この部室の南側は弓道部の練習場、その先が体育館で、天気の日には弓の音やバスケの練習の音が聞こえます。でもって、北側はテニスコートで、テニスボールの音や、グラウンドを走る運動部の声が聞こえます。西側は床の間の向かって左のところに窓があって、そこからは竹林が見えていて、天気の日にはスズメが来ていてうるさいです。特に朝がうるさいらしいんだけど、あたしたちは滅多に朝練とかしないので知らない」
三方向からぐるぐる回った吹雪の風が吹き込んできて、その寒いのなんの。狐神の田部良紅羅架(たぶらくらか)さんが起こす火というのはリアルの火なので、室内を温めるにはあまり向いていない。
時尾先輩は、音を立てて窓を締めながら言った。
「要するに…このクラブはもうおしめえだ。こんなところにいるとロクなことにゃなんねえ」
そこでおれはわかった。
「この部室は気に入った。腰を据えるぞ」
「えーっ…すごいじゃん、黒澤明『用心棒』見てんの? 「うるせぇぞ、こんちくしょう」ってのもやりたかったんだけど、今日はあんまり他の部活、うるさくないのよね」
「それはともかく、生徒会のほうから預かってきたものがあります。パセリとセージとローズマリーとタイム」
「うわあ、どうもありがとう。パセリとタイムとローズマリーとセージだ。生徒会のほうの藤堂さんの差し金だね」
時尾先輩は薬草の名前は間違えなかったが、「差し金」の使いかたは間違っている。「差し入れ」かな。
あと、藤堂明音(とうどうあかね)先輩はみんな藤堂さんって呼ぶんだ。
「そう言えば! なんで時尾先輩が、まことちゃん、とか、まこちゃん、って呼ばれてないかわかりました」
「????」
「まと・ときお、で、魔都・TOKIOだからでしょう」
おれも自分の携帯端末のメモ画面に字を書いてみた。
「言われてみれば! 全然気がつかなかったよ!」
「わたしたちはおまえと勝負しに来た」と、リーダーの流奇奈紘季(るきなひろき)が話に割り込んできた。
「わたしたちに負ければここは廃部というのが生徒会の考えである」
そんなこと誰も言ってないと思うのだが、面白いのでしばらくこの方向で話を進めてみたい。
妹からは「今日の晩ごはんはロールキャベツがいいです。材料買っておきます」というわがままなメールが来ていた。
今回の妹の出番はこれだけである。
「友だちとかは、まとっち、とか、まとちゃん、とか呼んでるんだけど、君たちは友だちでも敵でも下僕でもないから、時尾先輩でいいよ」
その名前もベタっぽいんだが、細かいことはどうでもいい。
時尾先輩は部屋の窓とその外の簾を上げながら説明しはじめた。
「この部室の南側は弓道部の練習場、その先が体育館で、天気の日には弓の音やバスケの練習の音が聞こえます。でもって、北側はテニスコートで、テニスボールの音や、グラウンドを走る運動部の声が聞こえます。西側は床の間の向かって左のところに窓があって、そこからは竹林が見えていて、天気の日にはスズメが来ていてうるさいです。特に朝がうるさいらしいんだけど、あたしたちは滅多に朝練とかしないので知らない」
三方向からぐるぐる回った吹雪の風が吹き込んできて、その寒いのなんの。狐神の田部良紅羅架(たぶらくらか)さんが起こす火というのはリアルの火なので、室内を温めるにはあまり向いていない。
時尾先輩は、音を立てて窓を締めながら言った。
「要するに…このクラブはもうおしめえだ。こんなところにいるとロクなことにゃなんねえ」
そこでおれはわかった。
「この部室は気に入った。腰を据えるぞ」
「えーっ…すごいじゃん、黒澤明『用心棒』見てんの? 「うるせぇぞ、こんちくしょう」ってのもやりたかったんだけど、今日はあんまり他の部活、うるさくないのよね」
「それはともかく、生徒会のほうから預かってきたものがあります。パセリとセージとローズマリーとタイム」
「うわあ、どうもありがとう。パセリとタイムとローズマリーとセージだ。生徒会のほうの藤堂さんの差し金だね」
時尾先輩は薬草の名前は間違えなかったが、「差し金」の使いかたは間違っている。「差し入れ」かな。
あと、藤堂明音(とうどうあかね)先輩はみんな藤堂さんって呼ぶんだ。
「そう言えば! なんで時尾先輩が、まことちゃん、とか、まこちゃん、って呼ばれてないかわかりました」
「????」
「まと・ときお、で、魔都・TOKIOだからでしょう」
おれも自分の携帯端末のメモ画面に字を書いてみた。
「言われてみれば! 全然気がつかなかったよ!」
「わたしたちはおまえと勝負しに来た」と、リーダーの流奇奈紘季(るきなひろき)が話に割り込んできた。
「わたしたちに負ければここは廃部というのが生徒会の考えである」
そんなこと誰も言ってないと思うのだが、面白いのでしばらくこの方向で話を進めてみたい。
妹からは「今日の晩ごはんはロールキャベツがいいです。材料買っておきます」というわがままなメールが来ていた。
今回の妹の出番はこれだけである。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
もうダメだ。俺の人生詰んでいる。
静馬⭐︎GTR
SF
『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。
(アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる