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第四章 月曜日は普通じゃない(裏)

4-1話 ここは北京であなたは北京原人

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 先輩と思われる、なんかアルパカっぽい女子は、単に焦げ淡黄褐色の大きめのセーターを着た淡黄褐色の髪の色の人で、和机の上に頭を置いて居眠りをしているだけだった。よだれを垂らしながら「はぁ、もう食べられないですぅ…」と、何か幸せそうな夢を見ていたようである。

 おれは茶室の奥にあったガスコンロの火を消し、その女子を起こすことにした。残りの3神は勝手に冷蔵庫を開けたり(猫神様)、大きいほうの和机に置いてあるビーカーの液体の匂いを嗅いだり(狐神様)、飲んだりしていた(龍神様)。

 茶室というより部室は10畳ほどもある畳敷きで、その3分の1ぐらいを大きめの和机が占めていて、その上の大半には理科の実験用具と思われるガラスのごちゃごちゃした器具や、いろいろな色の液体が入った容器が置かれていた。部屋の奥右側には小さなキッチンと冷蔵庫があり、床の間には宮本武蔵による枯木鳴鵙図の模写掛け軸と、かなり大きめの金魚鉢があった。金魚鉢には数匹の赤と黒とブチの金魚が泳いでいた。

 室内には何やらアロマセラピー系のいい匂いと、柑橘系のすっぱい匂いと、ダニ系の非衛生的な匂いがしていた。

「ああ、この香りはラベンダーかな」と、おれは言った。

「ラベンダーっぽい合成香料だね。その他、嗅ぎ分けられる限りでも十数種類の植物系・合成系の匂いがする」と、狐神の田部良紅羅架(たぶらくらか)さんは言った。

「リーダー、冷蔵庫からはプリンその他、犯行時に使われていたと思われる凶器は発見されませんでした」と、猫神の三絡克真 (みつがねかつま)さんはリーダーである龍神の流奇奈紘季(るきなひろき)に報告した。

 流奇奈はいく種類かの液体を飲んだあげく、とても青い色をしたものが気に入ったようである。

 おれは一生懸命女子を揺すっていた。

「ふぁ…はっ! ここはどこ? あたしは誰?」と、彼女は目覚めた。

「ここは北京であなたは北京原人」

「ええっ!? …だったらもうあと百万年ぐらい寝てます…」と、おれのボケに対して彼女は適切なリアクションをした。

 それからさらに何分間か起こし続けたあと(「ぼくには君が必要なんだ! 君のいない世界では生きてはいけない!」と過剰な嘘設定のセリフを続けたあと)、ようやくその子は周りのことに気がついた。

「ごめんなさい、いくらなんでもこんな日にあたしたちの部室に来る人がいるとは思わなかったんですが、一応その準備だけはしておこうと思って。お茶もお菓子も用意してあります」

「調査官、干菓子を何種類か発見いたしました。煎餅、チョコフレーク、甘納豆、かりんとう、いかくん、サブレその他であります。毒味をしてもよろしいでしょうか」と、田部良さんの報告があった。

「いかくんだけはやめておいたほうがいいんじゃないかな。あと甘納豆、全部ひとりで食べないで」と、おれは言った。

「自己紹介が遅くなったけど、あたしがここの部長の時尾と言います」

「……ひょっとして名前はカケルさんですか?」

「やっだなあもう、そんなベタな名前あるわけないじゃないですか!」

 そう言って時尾さんはおれの背中をどついた。

 割とフレンドリーな人らしい。あと多分関西人ではないだろう。
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