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第二章 月曜日は普通(裏)

2-4話 6人の妹なんて、そんなのはライトノベルかネット小説の中にしかいるわけがない

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 初登校、というか入学式の日の電車の中で、みーちゃん、つまり三絡克真(みつがねかつま)さんがいるのに気がついたので、わたしはスマホのチャットアプリを終了した。

 正確には擬似チャットアプリで、これはわたしが「物語ひとりで考えるの面倒くさいなあ。みんなで考えられるアプリとかないの?」と田部良紅羅架(たぶらくらか)さんに聞いたら、田部良さんは笑って「そんなのあるわけないじゃん」と言ったあとに真顔で、「似たようなのならあるけど」ということでもらったアプリだ。

 これは現実に存在するものと似たような画面設定で、20人まで架空の人物を設定できて、架空のチャットを一人で楽しむことができる。わたしは素人なので6人のキャラ設定をするだけで精一杯だ。

 6人の妹なんて、そんなのはライトノベルかネット小説の中にしかいるわけがない。あ、ちょっと待って。ここ、わたしのいる世界、もしかしたらライトノベルかネット小説の中かもしれないよね? 髪の色が3色になってて、もふって抱きしめたくなるぐらいかわいい猫神さんとか、なんでも技術的に作れるすごいお姉さんキャラの狐神さんとか、かしこくてかっこいいけどライトノベル読みすぎ感のある龍神さんとか、リアルにはいるわけないよね。

 田部良さんは、「でも直(なお)ちゃんは真面目に受験勉強しないとだめだよ。トシくんと比べると頭が残念なんだから」と失礼なことを言って、試験が終わるまでそのアプリはもらったけど使えない仕組みになっていた。

 トシくんというのは、兄のことだ。

 兄はほっておくと嘘ばかり言うので困る。

 わたしの兄である曽根地敏行が少しおかしくなったのは3年前の夏、神社のご神木に落ちた雷の近くにいて気を失ってからだった、というのが本当。それ以来、兄は6人の妹がいる架空世界をさまようことになった。

 世界がおかしいと思うより、兄がおかしいと思うのが普通だと思いませんか。

 わたしと兄はいろいろあって、中学生になる年の春にこの、微妙に田舎だけど東京周辺にはよくある地方都市に、母親と引っ越して来たんだっけかな。そこらへんの事情に関してはそのうち話すことになるんだろう。

 わたしの学業成績にムラがあるのは本当で、中学の定期試験ではトップに近かったときも、下から数えたほうが早いときもあった。母はわたしをやればできる子と思って、兄はわたしの中にできる子とできない子がいると思った。

 妹から見る兄は、例外もあるんだろうけど、一般的には世間よりも過大評価か過小評価をしているはずで、だからわたしが思っているほど兄の頭はよくもおかしくもないかもしれない。

 それはともかく、兄は予備校の冬季特別講習で知り合って、高校の願書提出時に仲良くなったと3人の神様について嘘を言っていたけど、なんでそうすぐバレるような嘘をつくのかなあ。

 わたしたちの高校は、直線距離で駅から歩いて5分ぐらいのところにあって、15分ぐらいあれば満開の桜の土手を歩いて入学式に行くこともできたのだけど、なぜかその日は春にもかかわらず空には黒い雲がじわじわと広がっていて寒く、時間的にも精神的にもあまりそんなゆとりはなかったのだった。

 帰りにコンビニでお弁当と鶏のから揚げとエナジードリンク買って、土手のベンチでみんなで花見とかしようかな。

 田部良さんがいると、いつもほかほかと暖かいので、そこらへんは問題ないはず。
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