12 / 52
地味になってしまった容姿
しおりを挟む
走って逃げたため日頃の運動不足も相まってハルカは疲れてしまい、トボトボとしばらく歩き本来乗る予定だったバス停を、通り越してしまったので少し先のバス停まで歩いてから家に帰宅した。
家に着くと「どうだった?あやちゃんとのランチは楽しかった?」と母親は心配そうに聞いてきた。
「うん。そうだね。帰りにみずきにも会ったよ。……。別人って言われちゃった……。お母さん……私……って……もう前の私には戻れないのかな………」と目に涙が滲んできて、
母親の前で久しぶりに泣いてしまった。
本当は泣きたくなどなかった。今日は彩乃とのランチ。楽しいランチになる予定だった。それなのに……
母親はスッと近寄ってきて「抱きしめていい?」「うん」と会話をしてからハルカをギュッと抱きしめた。ハルカの母はハルカの体に触れる時はハルカに了承を取ってから触るようにしてくれる。前に突然、触られた時にハルカがパニックになってしまった経緯をきちんと覚えていてくれている。
”前のハルカに戻れるよ”みたいな無責任な発言をするような母でなくて良かったとハルカは思った。ただ母に抱きしめられて、涙を流すだけ流した。少し落ち着いてきて「コーヒーでも飲む?」と言われて、ハルカは母親の入れたインスタントのコーヒーをリビングで飲んでから、疲れたので部屋に行くと言って自分の部屋に入る。
彩乃とのランチはとても楽しかった。けれどそのあとで偶然、みずきに会い”別人みたい”と言われて、ハルカは心を抉られるような衝撃を受けた。
雑誌を買ったり流行のファッションやコスメの情報をネットで見たりと楽しむことはあっても、それらを取り入れる余力が今のハルカにはなかった。
化粧も最小限しかしてなかったのを、就職のために久しぶりにと思い……ドラッグストアに寄ったことを思い出す。
あの時、買ったのは「眉ペン」だけだった。バッチリと化粧していた昔のハルカなら眉毛だけ書くような女の子ではなかった。眉毛だけじゃなく、ファンデーション、アイシャドウ、チーク、マスカラ、アイライナーなどなどしっかりした美しい顔に仕上げて街を颯爽と歩いていた。
もうそんな自分は今はいない。髪の毛は美容院に行ってないのでカラーが取れ頭の上は地毛の黒色の髪の毛が覆い、耳から下の部分だけは明るいブラウンのアンバラスの髪型で伸びっぱなしの胸まで伸びた髪の毛はとても傷んでいた。
心だけじゃなくて体もなんだかボロボロだな……とハルカは感じる。昔はもう少し自分の手入れをきちんとしていた女性だったと思う。身だしなみを整えたり、お化粧したりするのに少し怖さを感じると共に、そういうことに意識を向ける余裕がないのだった。
でも就活の手前、最低限の身だしなみは必要かな……と少し思い直す。前のようには出来なくても人から見て不快に感じない程度には印象を変える必要があるかもなと思った。なんとか男性の気を引くよう格好だけは避ければいいのだ。と思った矢先…スマホからLINEの着信を告げるメロディがなった。彩乃からだった。
『大丈夫だった?突然、みずきに会ってビックリしちゃったよね?大丈夫?家には無事に帰れた?今日はランチ付き合ってくれてありがとう。また今度、一緒に遊ぼうね』
と返事があり、ハルカは『急に帰ってしまってごめんね。今日はありがとう。それじゃまたね』と返信する。
彩乃はどこまでも優しく、なんて人思いのだろうと思った。それに比べてみずきは……と思ってはいないと分かっていてもついつい彩乃と比べてしまう。
よく言えば素直、悪く言えば無神経でどんどん思ったことを言ってしまうみずきは、高校の時から周囲とのトラブルが多かった。
いや、トラブルが多いというのは語弊があるかもしれない。元気で活発で思ったことを堂々というみずきのことを羨ましいと思う子もきっと多かった。そういう子とみずきは喧嘩になることが多かったので、きっと嫉妬心から喧嘩に発展したのかもしれなかった。
集団の中でのムードメーカー的な存在、それがみずきだった。楽しいことを楽しいと言って、不満があれば不満を漏らす。今日のこともきっとみずきのLINEを既読スルーしていたハルカに対して不満を持ち、ちょっとズケズケと物を言ってしまったのかと思った。
みずきにこちらから謝った方がいいのだろうか?とハルカは思った。人の変わり果てた容姿に対して別人だの老けたのだのそんなことは普通は言ってはいけない言葉ではあるが………みずきは悪いことはしてない。私が変わってしまったのは事実なのだ。
でも謝る?謝るって何を?と思うとハルカは気持ちの整理が途端に難しくなった。だってハルカも何一つ悪いことをしてないのだから。
とその日は結局、ハルカはみずきに謝ることはせずに久しぶりに全速力で走って疲れたので早めのお風呂に入り、いつもより早めに夕飯を済ませるといつもより早めに就寝したのだった。
疲れてて睡眠薬がなくても寝れるかもと思うが夜中に途中で起きてしまうのが怖くてハルカは睡眠薬を必ず飲んで、深い眠りの中での夜が明けるのを待つ。
そして次の日の朝日が登り世界が周り始めるとハルカも起きてきて、いつも決められたルーチンをこなす日常が訪れる……と思っていたが……
朝ご飯を食べて食器を洗っているとピンポーンと来客を告げるインターホンが鳴った。母親がバタバタと廊下を走って来客の対応をするのかと思いきや、母親はキッチンのハルカのところに来て、「みずきちゃんが来たよ。どうする?」とハルカに声をかける。
ハルカは慌てて玄関に行き、玄関で立っているみずきにおはようと挨拶するとみずきは………
「昨日はごめん!
うんで今日は一緒に美容院行くってどうよ?」
とハルカに向かって声をかけるのだった。
家に着くと「どうだった?あやちゃんとのランチは楽しかった?」と母親は心配そうに聞いてきた。
「うん。そうだね。帰りにみずきにも会ったよ。……。別人って言われちゃった……。お母さん……私……って……もう前の私には戻れないのかな………」と目に涙が滲んできて、
母親の前で久しぶりに泣いてしまった。
本当は泣きたくなどなかった。今日は彩乃とのランチ。楽しいランチになる予定だった。それなのに……
母親はスッと近寄ってきて「抱きしめていい?」「うん」と会話をしてからハルカをギュッと抱きしめた。ハルカの母はハルカの体に触れる時はハルカに了承を取ってから触るようにしてくれる。前に突然、触られた時にハルカがパニックになってしまった経緯をきちんと覚えていてくれている。
”前のハルカに戻れるよ”みたいな無責任な発言をするような母でなくて良かったとハルカは思った。ただ母に抱きしめられて、涙を流すだけ流した。少し落ち着いてきて「コーヒーでも飲む?」と言われて、ハルカは母親の入れたインスタントのコーヒーをリビングで飲んでから、疲れたので部屋に行くと言って自分の部屋に入る。
彩乃とのランチはとても楽しかった。けれどそのあとで偶然、みずきに会い”別人みたい”と言われて、ハルカは心を抉られるような衝撃を受けた。
雑誌を買ったり流行のファッションやコスメの情報をネットで見たりと楽しむことはあっても、それらを取り入れる余力が今のハルカにはなかった。
化粧も最小限しかしてなかったのを、就職のために久しぶりにと思い……ドラッグストアに寄ったことを思い出す。
あの時、買ったのは「眉ペン」だけだった。バッチリと化粧していた昔のハルカなら眉毛だけ書くような女の子ではなかった。眉毛だけじゃなく、ファンデーション、アイシャドウ、チーク、マスカラ、アイライナーなどなどしっかりした美しい顔に仕上げて街を颯爽と歩いていた。
もうそんな自分は今はいない。髪の毛は美容院に行ってないのでカラーが取れ頭の上は地毛の黒色の髪の毛が覆い、耳から下の部分だけは明るいブラウンのアンバラスの髪型で伸びっぱなしの胸まで伸びた髪の毛はとても傷んでいた。
心だけじゃなくて体もなんだかボロボロだな……とハルカは感じる。昔はもう少し自分の手入れをきちんとしていた女性だったと思う。身だしなみを整えたり、お化粧したりするのに少し怖さを感じると共に、そういうことに意識を向ける余裕がないのだった。
でも就活の手前、最低限の身だしなみは必要かな……と少し思い直す。前のようには出来なくても人から見て不快に感じない程度には印象を変える必要があるかもなと思った。なんとか男性の気を引くよう格好だけは避ければいいのだ。と思った矢先…スマホからLINEの着信を告げるメロディがなった。彩乃からだった。
『大丈夫だった?突然、みずきに会ってビックリしちゃったよね?大丈夫?家には無事に帰れた?今日はランチ付き合ってくれてありがとう。また今度、一緒に遊ぼうね』
と返事があり、ハルカは『急に帰ってしまってごめんね。今日はありがとう。それじゃまたね』と返信する。
彩乃はどこまでも優しく、なんて人思いのだろうと思った。それに比べてみずきは……と思ってはいないと分かっていてもついつい彩乃と比べてしまう。
よく言えば素直、悪く言えば無神経でどんどん思ったことを言ってしまうみずきは、高校の時から周囲とのトラブルが多かった。
いや、トラブルが多いというのは語弊があるかもしれない。元気で活発で思ったことを堂々というみずきのことを羨ましいと思う子もきっと多かった。そういう子とみずきは喧嘩になることが多かったので、きっと嫉妬心から喧嘩に発展したのかもしれなかった。
集団の中でのムードメーカー的な存在、それがみずきだった。楽しいことを楽しいと言って、不満があれば不満を漏らす。今日のこともきっとみずきのLINEを既読スルーしていたハルカに対して不満を持ち、ちょっとズケズケと物を言ってしまったのかと思った。
みずきにこちらから謝った方がいいのだろうか?とハルカは思った。人の変わり果てた容姿に対して別人だの老けたのだのそんなことは普通は言ってはいけない言葉ではあるが………みずきは悪いことはしてない。私が変わってしまったのは事実なのだ。
でも謝る?謝るって何を?と思うとハルカは気持ちの整理が途端に難しくなった。だってハルカも何一つ悪いことをしてないのだから。
とその日は結局、ハルカはみずきに謝ることはせずに久しぶりに全速力で走って疲れたので早めのお風呂に入り、いつもより早めに夕飯を済ませるといつもより早めに就寝したのだった。
疲れてて睡眠薬がなくても寝れるかもと思うが夜中に途中で起きてしまうのが怖くてハルカは睡眠薬を必ず飲んで、深い眠りの中での夜が明けるのを待つ。
そして次の日の朝日が登り世界が周り始めるとハルカも起きてきて、いつも決められたルーチンをこなす日常が訪れる……と思っていたが……
朝ご飯を食べて食器を洗っているとピンポーンと来客を告げるインターホンが鳴った。母親がバタバタと廊下を走って来客の対応をするのかと思いきや、母親はキッチンのハルカのところに来て、「みずきちゃんが来たよ。どうする?」とハルカに声をかける。
ハルカは慌てて玄関に行き、玄関で立っているみずきにおはようと挨拶するとみずきは………
「昨日はごめん!
うんで今日は一緒に美容院行くってどうよ?」
とハルカに向かって声をかけるのだった。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
やさしい幼馴染は豹変する。
春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。
そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。
なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。
けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー
▼全6話
▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
敵になった好きな男【R18】
日下奈緒
恋愛
ある日、城の中でクーデターが起こった。
犯人は、騎士団長のラファエル。
あっという間に、皇帝である父と皇妃である母は、殺された。
兄妹達も捕まり、牢屋に入れられた。
私一人だけが、ラファエルの元に連れ出された。
下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話
神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。
つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。
歪んだ愛と実らぬ恋の衝突
ノクターンノベルズにもある
☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる