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友人との再会
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11月上旬、ハルカは精神科の主治医に、そろそろ働きたいという趣旨の相談をした。主治医の女医の先生は決して無理はしないこと、出来れば初めは短期間、もしくはすぐやめられるアルバイトにすること、仕事に慣れても一人暮らしはまだ心配ということと、2週に1回の診察はこれまで通り守ることをルールとして就労への許可がおりた。
秋も深まりそろそろ冬が訪れる時期になると、日がおちるのがとても早い。それでも毎日、自己流のリハビリを繰り返し、比較的穏やかな生活を送っていた。
ハルカには今でも死にたいという気持ちが、たまに襲ってくることがある。心も体もめちゃくちゃにされて、殺されてしまうのではないかという恐怖も味わった。
いや、むしろ複数の男から中出しされ顔にもたくさん精液をかけられ、髪の毛を鷲掴みにされながらイマラチオをされ殴られたり蹴られたりと、ボロ雑巾のように酷く扱われたハルカは、あのまま殺されていれば良かったと何百回も思った。
それでも今、生きてる。
不思議な話だが、あんな目にあっても生きようとしてることがハルカ自身、1番信じられない。
一度、自殺未遂をしたが失敗した。母親にバレて両親2人も自分の娘が性被害にあってしまうという悲劇に落とされた。親のため?そうなのかは分からない。分からないが、ハルカはなんとか死なずに生きなくてはいけないなと漠然と思っている。
今でも夜の人気がない道が怖い。車に乗るのが怖い。男性はとても怖い。複数の男性に囲まれたらきっと恐怖で気絶してしまうだろうと思う。それでも生きる。生きるしかないんだと自分に数千回言い聞かせている。
そんなことをぼんやりと考えながら通院の帰り道、仕事を探すならと久しぶりにお化粧をした方がいいか?と思い、バス停近くのドラッグストアに寄った時のこと、
「……ハルカ?」とドラッグストアの店内でふいに声をかけられた。友達の彩乃だった。都会に就職して1年と数ヶ月、田舎に戻ってきてそろそろ3ヶ月。久しぶりの友人との再会にハルカは体がゾワゾワとなった。
彩乃とは高校時代の友人だった。ハルカが都会へ行っても頻繁に連絡を取り合って、近況報告をしていた仲だった。来年のお正月には帰省するから、その時に遊ぼうと約束をしていた。
その約束した来年のお正月はあと2ヶ月足らずでやってくるが、ハルカは帰省するどころか都会で最悪な目にあい、のこのこと田舎に帰ってきたのだ。どんな話をすればいいのか?何度も彩乃からLINEが来ていたがその全てを既読スルーしてしまっていた。今更、気まずい。
会えて嬉しいというよりかは”今の自分を見られたくない”という気持ちがどうしても上回った。なんと言えばいい?なんと答えればいい?と頭が真っ白になってしまったハルカだが……
彩乃はとても落ち着いた優しい目で、ハルカに少し近づいて「おかえりハルカ。おかえり…おかえりだよ?」と温かく声をかけられ、ハルカは「あっ……」と声を漏らすと、ポタポタと頬から涙を流していることに気がついた。
ポロポロと涙が溢れてきて止まらなかった。都会への憧れを抑えきれず田舎を捨てるように離れたハルカ。そして傷ついて田舎に戻って日常生活もままらなくて、情けなくて、精神科の薬だって処方されていて、こんな自分が惨めで惨めで死にたい気持ちに今でもときどになるハルカに対して、目の前の友人からの『おかえり』はハルカの心に響いた。
「彩乃……ごめん……何度も何度もLINEくれてたのに返信……してなくて………」と涙をぬぐいながら彩乃に告げると「いいんだよ。そんなことは気にしないで。それよりもまたハルカと会えてよかったよ」と彩乃の目にも涙が溜まっているように見えた。
ハルカは両親のために生きようと思っていた。もう自分に残されているもの、心の支えになっているものは両親しかいないと思っていた。でもそれだけじゃなかった。
ハルカにはまだ友達がいたのだ。まだ会いたくないと思っていた友達。、どんな顔をしてあえばいいのか分からなかった友達。
そんな風に思っていた友達なのにこうして何も言わずにただただ「おかえり」と言ってくれる彩乃という存在にハルカは心から感謝した。
ドラッグストアを出てお茶でもする?と彩乃から提案させるハルカだったがその日はもう帰ることにした。通院でさえ外出すると体力と気力を使う。こんな状態で仕事など出来るのかと臆病風邪に吹かれるが……今日はお茶をする気分にはなれなかった。
何してたの?何でLINEの返事しないの?都会で何があったの?と怒涛の質問攻めではなく、“おかえり”と言ってくれた彩乃にハルカの気持ちは救われたが、喫茶店に入ってお茶をするほどの時間をさいて、一緒にいるのはハルカのメンタルが持たなそうだった。
ハルカは今日は帰ることを告げ、LINEの返信は今度からきちんとすると言ってその場をあとにした。家に帰るとさっそく彩乃からLINEが来ていて「今日、会えて嬉しかったよ!また今度、ランチでも行こうね!連絡するから!」と連絡が来ていた。
ハルカは「ありがとう」とだけ返事をする。少しだけ少しだけだけど……ハルカの心に満たされる何かを感じた気がした。
秋も深まりそろそろ冬が訪れる時期になると、日がおちるのがとても早い。それでも毎日、自己流のリハビリを繰り返し、比較的穏やかな生活を送っていた。
ハルカには今でも死にたいという気持ちが、たまに襲ってくることがある。心も体もめちゃくちゃにされて、殺されてしまうのではないかという恐怖も味わった。
いや、むしろ複数の男から中出しされ顔にもたくさん精液をかけられ、髪の毛を鷲掴みにされながらイマラチオをされ殴られたり蹴られたりと、ボロ雑巾のように酷く扱われたハルカは、あのまま殺されていれば良かったと何百回も思った。
それでも今、生きてる。
不思議な話だが、あんな目にあっても生きようとしてることがハルカ自身、1番信じられない。
一度、自殺未遂をしたが失敗した。母親にバレて両親2人も自分の娘が性被害にあってしまうという悲劇に落とされた。親のため?そうなのかは分からない。分からないが、ハルカはなんとか死なずに生きなくてはいけないなと漠然と思っている。
今でも夜の人気がない道が怖い。車に乗るのが怖い。男性はとても怖い。複数の男性に囲まれたらきっと恐怖で気絶してしまうだろうと思う。それでも生きる。生きるしかないんだと自分に数千回言い聞かせている。
そんなことをぼんやりと考えながら通院の帰り道、仕事を探すならと久しぶりにお化粧をした方がいいか?と思い、バス停近くのドラッグストアに寄った時のこと、
「……ハルカ?」とドラッグストアの店内でふいに声をかけられた。友達の彩乃だった。都会に就職して1年と数ヶ月、田舎に戻ってきてそろそろ3ヶ月。久しぶりの友人との再会にハルカは体がゾワゾワとなった。
彩乃とは高校時代の友人だった。ハルカが都会へ行っても頻繁に連絡を取り合って、近況報告をしていた仲だった。来年のお正月には帰省するから、その時に遊ぼうと約束をしていた。
その約束した来年のお正月はあと2ヶ月足らずでやってくるが、ハルカは帰省するどころか都会で最悪な目にあい、のこのこと田舎に帰ってきたのだ。どんな話をすればいいのか?何度も彩乃からLINEが来ていたがその全てを既読スルーしてしまっていた。今更、気まずい。
会えて嬉しいというよりかは”今の自分を見られたくない”という気持ちがどうしても上回った。なんと言えばいい?なんと答えればいい?と頭が真っ白になってしまったハルカだが……
彩乃はとても落ち着いた優しい目で、ハルカに少し近づいて「おかえりハルカ。おかえり…おかえりだよ?」と温かく声をかけられ、ハルカは「あっ……」と声を漏らすと、ポタポタと頬から涙を流していることに気がついた。
ポロポロと涙が溢れてきて止まらなかった。都会への憧れを抑えきれず田舎を捨てるように離れたハルカ。そして傷ついて田舎に戻って日常生活もままらなくて、情けなくて、精神科の薬だって処方されていて、こんな自分が惨めで惨めで死にたい気持ちに今でもときどになるハルカに対して、目の前の友人からの『おかえり』はハルカの心に響いた。
「彩乃……ごめん……何度も何度もLINEくれてたのに返信……してなくて………」と涙をぬぐいながら彩乃に告げると「いいんだよ。そんなことは気にしないで。それよりもまたハルカと会えてよかったよ」と彩乃の目にも涙が溜まっているように見えた。
ハルカは両親のために生きようと思っていた。もう自分に残されているもの、心の支えになっているものは両親しかいないと思っていた。でもそれだけじゃなかった。
ハルカにはまだ友達がいたのだ。まだ会いたくないと思っていた友達。、どんな顔をしてあえばいいのか分からなかった友達。
そんな風に思っていた友達なのにこうして何も言わずにただただ「おかえり」と言ってくれる彩乃という存在にハルカは心から感謝した。
ドラッグストアを出てお茶でもする?と彩乃から提案させるハルカだったがその日はもう帰ることにした。通院でさえ外出すると体力と気力を使う。こんな状態で仕事など出来るのかと臆病風邪に吹かれるが……今日はお茶をする気分にはなれなかった。
何してたの?何でLINEの返事しないの?都会で何があったの?と怒涛の質問攻めではなく、“おかえり”と言ってくれた彩乃にハルカの気持ちは救われたが、喫茶店に入ってお茶をするほどの時間をさいて、一緒にいるのはハルカのメンタルが持たなそうだった。
ハルカは今日は帰ることを告げ、LINEの返信は今度からきちんとすると言ってその場をあとにした。家に帰るとさっそく彩乃からLINEが来ていて「今日、会えて嬉しかったよ!また今度、ランチでも行こうね!連絡するから!」と連絡が来ていた。
ハルカは「ありがとう」とだけ返事をする。少しだけ少しだけだけど……ハルカの心に満たされる何かを感じた気がした。
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